11. ハワイ最後の日。
本当はすぐにでも可奈のもとへ飛んで行きたかったけど、シートの関係でフライトは翌々日になってしまった。
私の愛したハワイ。
ハワイ最後の日は友人のエリカとジェニーが車を出してくれて、ヒロから車で1時間ほどのキラウエア火山へ連れて行った。
ヒロはハワイ島のメインタウンのわりには田舎で、空気がキレイだけど、キラウエアに向かうほどに空気はさらに澄んだ。標高が高いので、少し肌寒い。寒くなるほどに思考がクリアになっていく。私は、ここにいる。
ハンドルを握るエリカの顔が険しい。私に気を遣っているのか、二人はあまり笑わなかった。
キラウエア火山に住むといわれるハワイ神話の女神、ペレになぜか惹かれる私は、ペレに会いに、キラウエアには何度も来ている。その度にここは独特な場所だと感じる。空気が神聖だ。
創造と破壊を司ると言われるペレ神は、ヒンドゥー教でいうことろのシヴァ神に近く、皆に畏れられる存在だ。ペレは女性なので、嫉妬深い事でも有名で、キラウエアは活火山なのでたまに噴火するのだけど、その時地元のひとは「ペレの怒りが噴出した」と言う。そして、変化の時だとも。
そんなペレが住むハワイ島に行くと人生がリセットされ、新しいスタートをきる人が多いといわれている。今私に起こっていることも、生まれ変わりのプロセスなのだろうか?いささか激しすぎる気もするけれど。
願わくば、次は可奈と2人で笑いながら、ここを訪れることができますように。
私たちは火口岩に降り、ペレに花と祈りを捧げだ。
ハワイ島にいたのは短い期間だったけど、可奈はここで大切な幼少期を過ごした。フリースクールに通い、フラを習い、英語を話し、現地のフルーツをたくさん食べた。
可奈が口を大きく開けてパイナップルを頬張る姿を思い出して、私はクスっと笑った。よく、果汁で服をドロドロにしていた。
あふれるほどの大地の恵みを惜しみなく与え、私たちを育んだ土地、ハワイ島。
どうかどうか、可奈を私に返してください。そして、また私たちをこの地に呼んでください。
両手を合わせて、ペレに祈った。その時、一瞬だけど、曇り空に光が差した。なんとなく私は、祈りが通じたような気がした。
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