見出し画像

ヒロから2時間ほどのドライブで、カパアウに着いた。ハワイ島の北部は中心地のヒロより緑が多くて、空気が澄んでいる。

深呼吸をして、街の中心にあるマーケットに行った。そういえば、喉が渇いてヒリヒリする。南国で長時間水分をとらないのは、大げさではなく、命に関わる。脱水症状を起こすかも知れないと焦った私は、ミネラルウォーターを手に、レジへ小走りで向かった。

レジで会計を済ませたあと、人懐っこそうな中年の店員さんに聞いた。

「数日前に、この町に日本人親子が来なかった?」

彼は「No , I don't see.」と、首を振った。他の店員さんにも聞いてくれるが、皆、一様に「No」と首を振る。

その場にいた親切そうなおじさんが誰かに電話をしてくれたが、手掛かりはつかめないようで、残念そうな顔をしている。

そうしてる間にどんどん人が集まって来た。

私はざっくりと皆んなに事情を説明した。ヒロからここまで、家族を探しに来たこと。2人は4日前にヒロを出たこと、まだ途中の町でストップオーバーしているかも知れなく、既にカパアウから移動しているかもしれないこと。

「Police, Police!」

話が終わると共に、誰かが警察を呼んだ。話しながら震えている私を見て、ただごとではないと思ったんだろう。

隣にいた優しそうなハワイアンのおばちゃんが肩を抱いた。外に連れていかれ、椅子に座らせてもらうと、冷えたパイナップルを持ってきてくれた。
人からもらう食べ物は、いつでも美味しい。朝から何も食べていなかったのもあり、一気に食べてしまった。

少しすると警察がやってきて、険しい顔をしてこう言った。

「お嬢さん、他の町の警察にも聞いたけど、ここらにあなたの家族はいないよ。」

涙が溢れた。ハワイアンのおばちゃんは、まるで自分のことのように寂しそうな顔をした。が、ここで泣くわけにはいかない。

力なく立ち上がり、集まっている人達にお礼を告げ、近くのビーチまで、何度も転びそうになりながら向かった。

誰もいないのを確認すると、私は膝から崩れ落ち、大声を出して泣いた。

裕太に騙されたんだ。

そんなに私が憎かったんだ。

信じられないけど、裕太は、私の命より大事な可奈を連れていなくなってしまったんだ。
 

・・・何がしたいの?

私は自分の頬を叩いた。痛いと感じるまで、何度も、何度も。

これは夢なんかじゃない、現実なんだと目を覚まさせるつもりで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?