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審判を取り下げる代わりに家族の再構築をする。話し合いはそこから。

裕太の出した条件は私を深く悩ませた。

1人で考えるとどうしても感情が入り、偏ってしまうので、弟の夏生に来てもらい、母を含めた3人で話し合う事にした。

夏生は賢いので、冷静かつ心理戦に長けている。母は流石の年の功で、裕太の考えや今後の展開がある程度読めていた。そんな2人に相談すると気付かされる事が多くあったし、何より何日もかけてこの話をしているので、問題を深く理解している。

やっと進んだ審判を取り下げることに、父と母は反対したけど、夏生は賛成した。

ある程度、裕太の要求をのんで良い関係を作ったほうが、裁判所の決定に頼るよりもいいんじゃないかという判断だ。
そうなのだ。結局、裁判所の審判が下されても、可奈との関係の鍵は裕太が握っている。

だけど、取り下げたところで約束が守られる保証は無いし、ここまで揉めた後に再構築できるかどうかは分からない。出来たら奇跡だと母は言った。

だけど、可奈を連れ去られてから既に11か月も経ってしまっているし、残念だけど裁判官にも親権は無理だと断言されてしまっている。得るものはあっても失うものはないはずだ。

あるのは、交換条件が守られなかった場合、再度家裁に行き、一からやり直しになるケースだ。養育実績がさらに積まれ、今より不利な状態になるだろうし、裕太が再構築の言質を取っていたらマイナスからの再スタートになる。

だけど、悲しいかな、勝率ゼロなのは今も変わらないのだ。面会交流の判決の相場、『子どもと会うのは月に1回、2時間』が出ればいいほうなのだから。良くて月に2回。

どちらにせよ親子関係を継続させるにはあまりにも低い数字だ。すぐに可奈は成長して、親と過ごす時間はさらに短くなるだろう。

可奈が幼く記憶も曖昧な今は、1日1日が貴重だ。
親権を得る事より、すぐに会える、定期的に会えるように持っていく方が優先順位が高い。

そう考えると、取り下げて裕太との信頼関係を再構築する方に望みを託した方がいいだろう。
賭けではあったが、これ以上、決定権を握っている裕太を怒らせ続けることは得策ではなかった。


悩みに悩んだ末、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで、私は裕太の条件をのむ事を選んだ。

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