[中継観戦]雑感#5|2024.3.10 ノア熊本大会「VCタッグリーグ優勝決勝戦など」
WRESTLE UNIVERSE(ネット配信)で観戦しました。今回の興行、興奮ポイントが沢山あり心の底から楽しめたので、簡単にですが感想を残してみます。なお、プロレス観戦にハマって1年足らずの新参者なので、内容が浅かったり、見当違いな見解があったりするかもしれません。ご容赦ください。
公式サイト試合結果ページ
雑感
(1)「大和田くんの大冒険」としてのVCタッグリーグ
改めてこのVCタッグリーグを振り返り、これを“大和田選手初めての大冒険”という冒険成長譚として見ると、実に波瀾万丈でドラマティックな傑作ストーリーだったな、と感慨深い気持ちになります。
すでにリーグ戦の全参戦チームが発表された状況で迎えた2/8、大和田選手が拳王選手に「強くなりたい、チャンスが欲しい」と直訴したことから、急遽拳王選手とのチームで参戦が決定。冒険はここから始まりました。開幕を数日後に控えた2/15のTEAM NOAH興行では、石川修司選手との異次元シングルマッチ。リーグ戦開幕前に大巨人に挑み、敗れはしたものの莫大な経験値を手にしたように見えました。
そして迎えた2/24のリーグ初戦、すでに驚異的な成長を見せる大和田選手でしたが、近藤選手のキングコングラリアットを耐えるなど健闘を見せるも敗戦。しかし会場一体となっての観客の声援は、大和田選手をさらに奮い立てたのか、この後早速結果を一つ残します。
2/28のリーグ2戦目、長時間にわたる清宮選手の締め技を耐え、清宮組との引き分けをもぎ取ります。「勝てませんでしたが、負けませんでした」の名マイクもあり会場は大熱狂。間違いなく大和田選手は“あの日の主役”でした。しかし、真の勝利の壁は厚く、3戦目、4戦目ともに善戦するもマットに沈みます。あと一歩が届かない。そんな中迎えた3/8の5戦目、拳王選手が勝利したことで、自身で手にした勝ち星ではないものの、チームとしては初めての勝ち。一気に勢いづきます。
そして3/9の6戦目、ついにその時が来ました。自らの手で佐々木憂流迦選手から3カウントを奪う大激勝。大和田選手も拳王選手も、そしてファンたちも、皆が待望した一つのクライマックスを見せてくれたのでした。興奮冷めやらぬなか迎えた翌日の最終戦、立ちはだかったのはハックスリー&サッチャー組。しかし無情にも3分という短時間で敗れるという結果に終わりました。
結果が出ず苦しみ続けたことも、飛び上がるような嬉しいこともあった、短くも長くも感じられる大冒険の終わり方として、このほろ苦いラスト。でも、これがまた良いんだよな、と私は思っています。すごく青春っぽいですし、何より大和田選手は、この冒険で確かに「強くなった」わけで、この物語の先を期待させてくれるからです。
「ビクトリーチャレンジ」、まさに大和田選手のための言葉であったようにも思えます。しかし大和田選手にとって、これはプロレスラー人生のまだほんの始まりにすぎません。これからまた猛スピードで目覚ましい成長を遂げ、私たちはそれに驚嘆することになるんだろうな、と今から楽しみで仕方がありません。
(2)熱戦!潮崎&小峠vs清宮&大岩!
実のところ、このVCタッグリーグ戦、個人的には楽しめる試合がそれほど多くはなかったのです。20分1本勝負と短時間での決着が求められる割に、どうも試合展開が重たいというか、勝ちにいく姿勢があまり伝わってこない印象がありました。
ところがこの試合は、スピーディーかつ、勝利への執念が非常に伝わってくる好勝負で、まさに私が見たかった試合そのものでした。試合展開でも、予想をいい意味で裏切るポイントがいくつかあり、驚きと興奮に満ちていました。試合の決着、大岩選手のドクターボムも意外性、納得、説得力、もろもろ兼ね備えていて、最初から最後まで楽しめました。そしてこのジェットコースターのように感じられる試合が、なんと試合時間16分52秒という。体感10分弱くらいでした。本当に面白かったです。
そういえばさらに微笑ましいおまけが待っていたのでした。清宮組の勝利後、傍に控えていたロス・ゴルペアドーレスはすぐに決勝に駒を進められないと気づき悲しがっていたのに、肝心の清宮組はリングアナが説明し終わるまで「どうなるんだ?」と戸惑った表情をしていて可愛かったですね。知らんで試合してたんかい。
(3)大岩選手の新技?ドクターボムが素晴らしかった!
大岩選手、タッグリーグ戦前から新技「抱え込み式足4字固め」を実戦投入するなど、新技の開発・習得に貪欲な姿勢を見せていました。それゆえ、リーグ戦期間中も大岩選手の「技のラーニング」が一つのフックになって、試合を楽しんで見ることができました。そして、リーグ戦最終日にお披露目した「ドクターボム」(技名は後日変わるかもしれませんが)、最後に度肝を抜かれました。と同時に、最高に気持ちのいいフィニッシュで、試合の満足度にもつながりました。何が良かったのか、箇条書きでまとめます。
サイドスープレックス(俵投げ)と同じクラッチから始まる
パワーボム系の技が大岩選手に似合う
技の説得力がある
大岩選手は、もともとサイドスープレックスを得意にしていて、さらには誰もやらなかった(?)ホールド技にまで昇華させて、オリジナルの得意技としていたわけです。であれば、リーグ戦の最終戦、しかも終盤、ここぞという場面でサイドスープレックスのクラッチに入れば、それはもう切り札のサイドスープレックスホールドが出る、と思うじゃないですか。ところが、持ち上げた直後にシットダウン式パワーボムの形で落とした。これは見ている側の予想を、技の最中という一瞬の間に裏切り、想像し得なかった結末を見せてくれる、最高のサプライズですよ。まるで鍛錬の末、大事な局面で生じた、「技の進化」のよう。
しかも叩きつける際のダイナミックさや、最後に相手の両腕を足で固める丁寧さまで、初披露とは思えないほど様になっている。何より大岩選手の体格に似合いますね。3/17の横浜武道館もこれでとっちゃいましょうよ!(かつて武藤選手デビュー20周年記念試合で、武藤選手が三沢選手と組んだ時、三沢選手が馳選手にタイガードライバーを決めた後、そのまま馳選手を後方に転がすように回転させて、片膝状態になった馳選手に武藤選手がシャイニングウィザードを決める、という連携があった記憶があるのですが、それを大岩選手のドクターボム→清宮選手のシャイニングウィザードに変えたのとか、どうですかね!「団体の垣根を越えている」し)
(4)ヘビー級相手に躍動、ニンジャ・マック選手!
ジェイク・リー、ジャック・モリス、アンソニー・グリーンと、ヘビー級で活躍する3選手を相手にしたニンジャ・マック選手。ジュニアヘビー級の選手を相手にすることの多いニンジャ選手ですが、いつもよりも水を得た魚のように伸び伸びと躍動しているように見えました。ひょっとするとヘビー相手の方が、遠慮なくいける分だけやりやすいのかな、と思ったり。ニンジャ選手はいつ見ても元気がもらえるので大好きです。
(5)HAYATA選手もイキイキ
シングルのベルトを落として以降のHAYATA選手は、対戦相手に捕まる時間が増えるなどして、動きが重たくなった印象があったのです。個人的にですが。ところが、今日のHAYATA選手は、ジャック・モリス選手をスカして怒らせるのがよっぽど楽しいのか、トリッキーで機敏な動きを徹頭徹尾見せてくれて、モリス選手の苛ついた表情込みでずっと見ていて面白かったですね。まだナショナル王座戦は組まれていないようなので、今後もしばらくこの寸劇を見られると思うと小躍りしてしまいますね。
(6)メインイベント、清宮選手の多彩なシャイニングウィザード!
様々なタイプのシャイニングウィザードを繰り出していて見事でした。ここだけの話、清宮選手が通常使用する変型シャイニングウィザードは、コーナーで構えて相手選手がリング中央で片膝立ちになるのを待機して、という流れが私はあまり好みではありません。試合の流れがぶったぎられてしまうし、やや茶番くささが出てしまうし。本家の武藤選手も、コンディションが悪化した晩年にはそうした「いかにも必殺技」みたいな形でフィニッシュとしていましたが、それはあくまで動きが悪くなったなりの一つの魅せ方として採用していただけだと私は勝手に思っています。
やはり瞬発的に発射される「いつどこから飛び出すかわからない」のがそもそものシャイニングウィザードという技の一番の魅力だと思いますし、現状コンディションの良い清宮選手なら、むしろ武藤選手が使い始めた当初のような自由自在なシャイニングウィザードが出来るはず、とモヤモヤした気持ちを抱えていたのです。
それが今日は、ふと生まれた隙をつく撃ち方、大岩選手のジャーマンとの連携での撃ち方などをみせた上で、フィニッシュの変型シャイニングに持っていって、流れも含めて本当に見事でした。今後もあっと驚く使い方を見せて欲しいです。
(7)終わりが約束された「海斗と陵平、二人の青春」
リーグ戦終盤になって、二人の口から「絆」という言葉が飛び出すようになりました。二人のタッグ生活も始まってもう7ヶ月も経っています。毎度のことではあるのですが、私は今日改めて二人の試合を見ていて、青春だな、と思いました。元気いっぱいにリングを動きまわる姿、晴れやかな表情で爽やかに汗を流す姿。時にSNSでは二人で仲良く食事をする姿なんかも目にしました。
でも、この青春、いつかは終わりがくるのですよね。組み始めた7ヶ月前から、それは決まっていたわけです。それが、二人の絆が深まれば深まるほど、結果を残して輝けば輝くほど、その“終わり”を意識してしまう。今日二人の優勝した姿を見て、そんな切ないことを考えてしまいました。
だからこそ青春だなと。いつかは終わってしまう、尊い限られた時間。しかし輝けば輝くほど、のちに大切な青春の記憶として思い出すことになる、宝石のようなもの。そんなかけがえのない時間を、いま彼らは過ごしているんだな、と思いました。はぁ、泣ける。とかなんとかいいながら、横浜武道館のチケットを買ったのでした。