逃亡者と家族。

実は福岡で歯科医をしていた時、2人の女性からのつきまとい行為に悩まされていた。

パンデミック初期に一番感染リスクが高い職業ワースト1位に選ばれ、妊娠中の妻を抱え、更にランニングに出れば待ち伏せされ、どこに行っても俺の事を全然知らない名前で呼んで「一緒にお家に帰りましょう」と言う、入院案件の女性に付き纏われた。

危険な事はされなかったけれど、自分ひとりじゃないし、妊娠中の妻に目をつけられたらどうしようと悩んでいたら、円形脱毛症になった。

妻が僕の祖父に相談し、祖父からも田舎に帰って来いと強く催促される様になった。

妻を守りたかったけれど、妻もまた僕を守る為に動いてくれた。

「子供が生まれたら、雪を見せてあげたいね、キレイで冷たいのにあったかい雪が好き、雪国で暮らすの憧れてるの」と、妻が事ある毎に言ってくれたから、僕は田舎に帰る決心がついた。

妻は僕の両親兄姉とも仲が良く、祖父母にも優しい。甥や姪を我が子と隔てなく、優しく育ててくれる。夫としてこんな幸せな事は無い。

でも時々思う。

ここには妻の友人はいない。休日に一緒に出掛けるのは僕。元々は海外を転々とする様な人をずっと雪の中に閉じ込めて良いんだろうか?寂しくないだろうか?

ストーカーから逃げる為に、妻を犠牲にしてしまったんじゃないか?パンデミックを理由にあの街を飛び出した事は、本当に正しい選択だったんだろうか?

妻の寝顔を見る度に、感謝と申し訳なさが込み上げる。ありがとう、ごめんね、愛してる。

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