「人参膝枕『にんげんは、ほぼにんじん』の巻」 冒頭部分 ふりがなver.
短編小説「膝枕」とその派生作品をclubhouseで朗読する「膝枕リレー」と、日本語を勉強している人と日本人のコミュニティ「にほんごではなそう」とのコラボ企画。「膝枕リレー 体験knee部」用に、ルビを振った原稿を用意しました。
お試しで読んだ後は、ぜひ他のお話も読んでみてください!!
今井雅子作「人参膝枕『にんげんは、ほぼにんじん』の巻」年少さんver.
休日の朝。スーパーの不揃い野菜コーナーで、子どもが母親に聞いた。
子「おかあさん、『にんげん』って『にんじん』のこと?」
母「にんげんとにんじん? どうして同じって思ったの?」
子「なまえがにている」
母「そうだね。名前は似てるね」
子「に・ん・げ・ん。に・ん・じ・ん。4つのもじのうち3つがおんなじ」
母「結構似てるね」
子「ちがうのは『げ』と『じ』だけ。どっちもてんてんがついてる」
母「ほんとだ。そこも似ているね」
子「『け』のぼうと、『し』もにてる」
母「似てるね」
子「『にんげん』は、『にんじん』のことだね」
母「そうだね。『にんげん』は、ほぼ『にんじん』だね」
子「あとね、もっとすごいことに、きづいちゃった」
母「もっとすごいこと?」
子「『にほんじん』のなかに『にんじん』がかくれてるんだよ」
母「『にほんじん』の中に『にんじん』。ほんとだ」
子「『にほんじん』は『にんじん』に『ほ』をくっつけただけだよ」
母「へーえ。よく気づいたね』
子「まだあるよ。『にんじん』がかくれてることば。えっとね。『にんじゃずかん』」
母「に・ん・じゃ・ず・か・ん。に・ん・じ・ん。ほんとだ。隠れてる」
子「にんじんって、すごいよね」
母「シチューや肉じゃがにしとくの、もったいないね」
子「おかあさん。にんげんも、おひざがすきなのかな」
母「そうねえ。すきなんじゃないかな」
子「にんげんは、にんじんだもんね」
母「そうだね。にんげんは、ほぼ、にんじんだもんね」
休日の朝。スーパーの不揃い野菜コーナーで、人参の親子はおしゃべりを続ける。子どもが何を言っても母はうなずき、そのたびに、子どもの頭の下で、ぽっちゃりした膝が小さく揺れる。
今井雅子作「人参膝枕『にんげんは、ほぼにんじん』の巻」
休日の朝。スーパーの不揃い野菜コーナーで、子どもが母親に聞いた。
子「お母さん、『にんげん』と『にんじん』って似てるよね」
母「そうだね。名前は似てるね」
子「4文字中3文字同じだから75%同じだね」
母「75%。結構似てるね」
子「違うのは『げ』と『じ』だけど、ふたつとも濁点がついてる」
母「じゃあ75%より似ているね」
子「80%くらい同じだね。『け』の左側は『し』に似てる」
母「そしたら80%より似ているね」
子「90%くらい似てるね」
母「にんげんは、ほぼ、にんじんだね」
子「実はね、もっとすごいことに気づいちゃったんだ」
母「もっとすごいこと?」
子「『にほんじん』の中に『にんじん』が隠れてる」
母「『にほんじん』の中に『にんじん』。ほんとだ」
子「『にほんじん』は『にんじん』に『ほ』をくっつけただけだよ」
母「じゃあ、『にほんじん』は、ほぼ『にんじん』だね』
子「他にも『にんじん』が隠れてる言葉を見つけたよ。『にほんじかん』『にんじゃずかん』『にんじょうかみふうせん』」
母「どこにも隠れているんだね、にんじんは。忍者みたいだね」
子「『人情紙風船』って昔の映画だよ。『にほんのえいがじん』の中にも『にんじん』が隠れてる」
母「にんじんって、すごいんだね。シチューや肉じゃがにしとくの、もったいないね」
子「お母さん、にんげんも膝枕するのかな」
母「するんじゃないかな」
子「にんげんは、ほぼ、にんじんだもんね」
母「そうだね。ほぼ、にんじんだもんね」
休日の朝。スーパーの不揃い野菜コーナーで、人参の親子はおしゃべりを続ける。子どもが何を言っても母はうなずき、そのたびに、子どもの頭の下で、ぽっちゃりした膝が小さく揺れる。
https://note.com/masakoimal/n/n851097b5318e
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