「膝浜」 冒頭部分ふりがなver.
短編小説「膝枕」とその派生作品をclubhouseで朗読する「膝枕リレー」と、日本語を勉強している人と日本人のコミュニティ「にほんごではなそう」とのコラボ企画。「膝枕リレー 体験knee部」用に、ルビを振った原稿を用意しました。
お試しで読んだ後は、ぜひ他のお話も読んでみてください!!
「膝浜」(原作:古典落語「芝浜」 膝入れ:今井雅子)
語り「江戸の昔、膝屋の久五郎という男がおりました。膝屋というのは、浜に流れ着いた膝枕を拾い集め、磨いて売り歩くという商売。
久五郎が手をかけた膝枕は、色と艶が増し、眺めるも良し、枕にするももちろん良しで、新品よりも高い値がつく人気。ところが、この久五郎、困ったことに大変な酒好きで、呑むと仕事が雑になり、浜に行くのも面倒になる。そうこうするうちに、一年も押し詰まってまいりました」
女房「おまえさん、起きとくれよ。 ちょいと! おまえさん!」
久五郎「おい、こら、布団をはぐなよ! 亭主を叩き起こしやがって、どういうつもりだ?」
女房「どうもこうもないよ。 浜に行って、膝を取って来ておくれよ。おまえさんが膝を売ってくれないと、釜のフタが開かないんだよ」
久五郎「釜のフタが開かねえ? 鍋のフタ開けときゃいいじゃねえか」
女房「くだらないこと言ってないでさ。もう年の瀬だよ? 大晦日になったら、掛け取りが大勢来ちゃうよ。このままじゃ年を越せないよ」
久五郎「うるせえなあ。 ゆうべの酒がまだ抜けねぇんだ。 今日は休みだ。明日から行くよ」
女房「明日、明日。そう言って、もうひと月になるじゃないか。おまえさん、ゆうべのこと忘れたのかい? これ以上酒屋さんのツケを増やすわけにはいかないってあたしが言ったら、 おまえさん、明日からちゃんと働く、だから今夜は飲みたいだけ飲ませてくれ、そう言ったじゃないか」
久五郎「わかったよ。行きゃあいいんだろ行きゃあ。いや……けどダメだ。俺もうひと月も休んじまってんだ。商売道具だって使い物にならないだろうよ」
女房「何言ってんだい。 あたしは昨日や今日膝屋の女房になったんじゃないんだよ。膝を磨くやすりもちゃんと研いで蕎麦殻の中に突っ込んで、イキのいいサンマみたいにピカピカ光ってるよ」
久五郎「よく手が回りやがるねえ。しゃあねえ、行くか」
女房「まっすぐ帰って来るんだよ。途中で一杯引っかけるんじゃないよ」
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