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2020京都大学 国語 第二問 解答速報

出典は小山清「井伏鱒二の生活と意見」。前書きに「太宰治に傾倒していた作家、小山清による井伏鱒二訪問記の一節である。井伏は太宰の師匠であった」とある。

問一「井伏さんと対坐しているときほど、逝くなつた太宰さんの身近にゐる気のされることは、私にはないのである」のように感じられるのはなぜか、説明せよ。(四行)

〈GV解答例〉
井伏に親炙するにつれ、「山ほど教へてもらひ」という言葉に合点がいくほど太宰の雰囲気の幾分かは師匠である井伏から伝わったことが実感され、井伏との対面において亡き太宰が生きてそこにいるよう錯覚されたから。(100)

〈参考 S台解答例〉
井伏との親交が深まるにつれ、太宰のもつ雰囲気に井伏から部分もあることをあることを感じ、また、太宰が井伏から様々な多くのことを教わっていたことが納得され、井伏の様子は筆者に太宰を思い起こさせるものであるから。(103)

〈参考 K塾解答例〉
井伏は、自分が傾倒していた太宰と遠慮なく口がきけるだけでなく、師匠として太宰が多大な薫陶を受け感化されてきた人物だったこともあって、井伏その人に身近に接すると太宰のことがまざまざと偲ばれてくるから。(99)

〈参考 Yゼミ解答例〉
筆者は生前から太宰に傾倒しており、その人柄を敬愛していたが、太宰亡き後、その師匠である井伏と二人で語るようになると、太宰の考え方や雰囲気などが、井伏から伝わったものであるということを強く感じたから。(99)

問二「こちらの気持が吸い込まれてゆくような感じがする」のように感じられるのはなぜか、説明せよ。(二行)

〈GV解答例〉
井伏の語りには滋味深い随筆のように理よりも情に訴えるものがあり、その雰囲気に同化される感があるから。(50)

〈参考 S台解答例〉
井伏の静かな口調の味わい深い話に引き込まれ、筆者は井伏固有の雰囲気に自然に同化されていく気がするから。(51)

〈参考 K塾解答例〉
静かで気持ちのこもった井伏の話ぶりは、聞く者を井伏の穏やかな雰囲気に自ずと同化させていく豊かさがあるから。(53)

〈参考 Yゼミ解答例〉
理屈ではなく感情で語る、人間味あふれる井伏の話しぶりは穏やかで、自然と人を寛がせる魅力があるから。(49)

問三「井伏さんといふ芳醇な酒を、私といふ水で、いたづらに味ないものにしてしまふのではないかと思ふ」はどういうことか、説明せよ。(三行)

〈GV解答例〉
井伏と対面し我を忘れて聞いた滋味豊かな話を、自身の文章にするとなると、力量不足から、直接受けた感動を逆に薄めて読者に伝えるのではと危惧するということ。(75)

〈参考 S台解答例〉
そのままで豊かな味わい深い作品になると感じられる井伏の話は、筆者が文章にすると、その魅力を減じ、無駄につまらないものになると、筆者が恐れているということ。(77)

〈参考 K塾解答例〉
豊かな文学性につらなる井伏の話の妙味や、気持ちをくつろがせるその人となりを、味気ない自分の言葉では伝え切れないのではないかと危惧しているということ。(79)

〈参考 Yゼミ解答例〉
井伏鱒二は奥深く豊かな魅力をもった人間なのに、凡庸な作家である自分が彼を描写することによって、その魅力を損ねてしまうのではないかと危惧されるということ。(76)

問四「殊更に自分を野暮つたく印象づけようとしてゐるのかもしれない。それほどに井伏さんは、いはばスマートなのである」はどういうことか、説明せよ。(四行)

〈GV解答例〉
自己をへりくだり洗練されていないかのように表現しなければ相手に嫌味に映るほど、井伏の立ち居振る舞いには、対面する者を圧倒するような立派な恰幅にも収まりきれない、内面からにじみ出る魅力があるということ。(100)

〈参考 S台解答例〉
五十半ば過ぎで男盛りの井伏は、男である筆者から見ても風貌に魅力があり、恰幅も立派で、衰えぬ若さも備えている自分をもてあまして、他人に対してあえて洗練されていない自分を示そうとしていると筆者には思えるということ。(105)

〈参考 K塾解答例〉
五十半ばをすぎた男盛りの立派な風貌を誇るどころか、それを持てあましているかのように卑下する井伏だが、それが意識的な韜晦だと感じさせるほど、身のこなしや作品には衰えぬ若々しさと洗練が感じられるということ。(101)

〈参考 Yゼミ解答例〉
井伏の体躯は、筆者から見れば渋くて立派なものであったが、彼は自分をわざと野暮ったく見せることで自身の秀でた点を目立たなくさせ、滲み出る貫禄を隠そうとする、非常に賢く洒落た人物であるということ。(96)

問五「見てると、私の胸の中にも、泉のやうに湧き出てくるものがあつた」はどういうことか、説明せよ。(四行)

〈GV解答例〉
井伏が子供の頃弄んだという粗雑な丸メンを手に取り見ていると、井伏の言に促されて一世代後の筆者にも、子供の頃の情景と童心が自然と蘇ってきて、日々の喧騒や不安を忘れて心が柔らいでくるものがあるということ。(100)

〈参考 S台解答例〉
井伏が子供の頃に弄んだ、筆者が子供の頃に流行ったものよりもさらに年代もののメンコを見ていると、郷里で過ごした子供時代を思って慰められる井伏の安らぎが筆者にも感じられ、心が満たされる気がしたということ。(100)

〈参考 K塾解答例〉
身の回りのことに拘泥せず簡素に暮らしている井伏が、子供の頃に遊んだ古びた玩具に気持ちを和ませているさまに接すると、井伏の素朴な安らぎに自分も引きこまれ、幼児の記憶があれこれと豊かに想起されるということ。(101)

〈参考 Yゼミ解答例〉
井伏に同調して、私も子供時代に対する懐かしさを覚えると同時に、愛着を抱いた古いメンコを大切にしながらも、住居や調度品などにはこだわらない、飾り気のない井伏の人柄に親しみや敬愛の念を覚えたということ。(99)

#京都大学 #国語 #井伏鱒二 #太宰治 #小山清

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