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2022東大国語/第一問/解答速報

【2022東大国語/第一問/解答速報】

出典は鵜飼哲「ナショナリズム、その〈彼方〉への隘路」。

問一「その『甘さ』において私はまぎれもなく『日本人』だった」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。(60字程度)

〈GV解答例〉
国内では他集団として排除されても国外では同じ日本人として受容されるばずだと自明視していた点で、自身の日本人性を自覚したということ。(65)

〈参考 S台解答例〉
国内では集団ごとに排他的でも国外では同じ日本人としての仲間意識があると期待する、日本人的な心性が自分にあったということ。(60)

〈参考 K塾解答例〉
国内では緊張関係にあっても、国外では日本人同士なら許容されると思った点に、日本語を通じた身内意識に依存する感覚が働いていたこと。(64)

〈参考 Yゼミ解答例〉
国内では小集団に分断されていても、国外ではその分断は解消されるだろうという認識の甘さがまさに日本人の特質を示していたということ。(64)

〈参考 T進解答例〉
外国ならば、同じ日本人だから許されるだろうという油断が招いた排除を通じ、自身が、「甘え」を心的特徴とされる日本人であることを再確認したということ。(73)


問二「その残忍な顔を、〈外〉と〈内〉とに同時に見せ始めている」(傍線部イ)とはどういうことか、説明せよ。(60字程度)

〈GV解答例〉
中流幻想の崩壊に伴い、国民を絶えず分節することで標準的な日本人と外国人を峻別する日本社会に潜む機制が露わになりつつあるということ。(65)

〈参考 S台解答例〉
階級の分断が進む日本ナショナリズムは、外国人の排斥と共に日本人の一部を非国民として摘出する動きも強めているということ。(59)

〈参考 K塾解答例〉
日本国籍をもたない者を排除するとともに、国民内部に異質な存在を見出し、容赦なく切り捨てることで、国民の統合を目指す動きが強まっていること。(69)

〈参考 Yゼミ解答例〉
異質な人間を目ざとく見つけ徹底的に排除しようとするナショナリズムの特質を、国内に向けても国外に向けても露わにしつつあるということ。(65)

〈参考 T進解答例〉
日本社会の階層分化につれ、外国人を排除し、日本でも国民の一部を排除する形で、ナショナリズムの厳しい排他性が見られつつあるということ。(66)


問三「文字通りの『自然』の中には、もともとどんな名も存在しない」(傍線部ウ)とはどういうことか、説明せよ。(60字程度)

〈GV解答例〉
存在が生じる際の自然に遡れば、血統と並び国籍の根拠として自明視され、平等性と排他性を担保する生地の区別は虚構にすぎないということ。(65)

〈参考 S台解答例〉
名とは、世界のありのままの姿の反映ではなく、それを人為的に意味づけ秩序化し、自然のものように見せかける制度だということ。(60)

〈参考 K塾解答例〉
名は人間が付与するものであって、自然そのものには、一定の領域を指し、個人の帰属先を規定する名が備わっているわけではないということ。(65)

〈参考 Yゼミ解答例〉
後の本来的な意味における「自然」には、人間が確定した国境やその区画内に与えられた国名などの人為的な要素は一切存在しないということ。(65)

〈参考 T進解答例〉
国名のような名辞は、人間の便宜のための恣意的な区切りに基づき与えられたもので、本来の自然はただそこに存在するだけで、全てが未分であるということ。(72)


問四「日本人であることに、誰も安心はできない」(傍線部エ)とはどういうことか、本文全体の趣旨を踏まえて100字以上120字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
人は本質的に個別的な存在であり、生地や血統に基づき自明なものとして享受され平等性と排他性を担保する国籍は制度にすぎない上、外部と峻別するため日本人の標準は恣意的に変更されるので、すべての成員が常に日本人から排除される危険性を孕むということ。(120)

〈参考 S台解答例〉
ナショナリズムが依拠する生まれの同一性は、実は制度的な仮構を自然であるかのように見せかけたものにすぎず、境界は恣意的で容易に変化しうる以上、日本人の排他性が「同じ日本人」であったはずの自分に突如として向けられる可能性は常にあるということ。(119)

〈参考 K塾解答例〉
日本人とは、個として誕生する人間に対し、血統に基づいて同一の国民であると思わせるべく仮構された制度であり、国民統合を維持すべく国内に絶えず非国民として排除する対象を生む制度であるため、日本人であれば誰もが排除される危険を免れないということ。(120)

〈参考 Yゼミ解答例〉
同質性を核とし異質な者の徹底的に排除によって成り立つナショナリズムは、同じ生まれの者が自然に身につけた当然の価値観を共有していると思わせる制度的な「自然化」によって可能になるため、その自然さが失われる恐れを消し去ることはできないということ。(120)

〈参考 T進解答例〉
独立した存在たる人が、自然にはなれない日本人になるのはナショナリズムが主張する「生まれ」の「同一性」という加工された制度を自然なものとするという操作によるもので、その逆の操作が起き得る以上、常に日本人から排除される危うさを決めるということ。(120)


問五 (漢字の書き取り)
a. 緩んで b. 滑稽 c. 深長

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