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2022広島大国語/第二問/解答速報

【2022広大国語/第二問/解答速報】

出典は久米正雄の小説「虎」(1918)。

問一「彼が凡ての言葉を尽くしたにも係らず、川上は笑って受け附けなかった」(傍線部(1))とある。これは二人のどのような様子を述べているか。説明せよ。(2行)

〈GV解答例〉
毬栗頭の見た目からしてまともな役者としては通用しないと苦笑する川上の判断を、深井がどんなに自己を説明しても覆せない様子。(60)

〈参考 K塾解答例〉
役者になりたいと願い、試験で懸命に入団の意志を訴える深井に対して、川上は役者の才能はないとみなして、まともに相手にしていない。(63)


問二「こうして彼は俳優になる時から、すでに立派な三枚目の役を勤めた」(傍線部(2))とある。これは深井のどのような資質をあらわしているか。これより前の本文中から六字で抜き出して答えよ。

〈答〉天性の誇張家


問三「自分と違って正当な、立派な立役に仕立てるのが願いだった」(傍線部(3))とある。なぜこのような願いを抱いているのか。理由を説明せよ。(3行)

〈GV解答例〉
働き盛りの年齢にもなって、道化として食えてはいるものの、まともな役を配されず、周囲にも見下されているように感じてしまう自らの恥辱を、役者の道を継ぐ息子には感じさせたくなかったから。(90)

〈参考 K塾解答例〉
幼くして役者の道を歩み始め、正統派の役者になる可能性がある息子には、真面目な役は一つももらえず、道化のような役ばかりをあてがわれる自分のような道を歩んでほしくないから。(84)


問四「その幕はすっかり深井君の虎に食われてしまいますよ」(傍線部(4))とある。これはどういう意味か。説明せよ。(2行)

〈GV解答例〉
主人の性格を引き立てるはずの深井扮する虎の演技が、あまりに嵌って笑いを生み、その一幕の観客の目を釘付けにするという意味。(60)

〈参考 K塾解答例〉
変わった趣向として深井が見事に演じる虎に、観客の注目が集まり、他の役者がかすんでしまうという意味。(49)

問五「彼はこの子供の言葉を、一種の啓示として感謝していいか、一種の皮肉として苦笑していいか、どっちに取るべきかに迷った」(傍線部(5))とある。ここで「一種の啓示」と「一種の皮肉」の意味するものをそれぞれ説明せよ。(各25字程度)

〈GV解答例〉
(一種の啓示) 特徴の解らない虎の実態を知る契機となる良い知らせ。(25)
(一種の皮肉) 息子のねだりで動物役者が動物園に行く気恥ずかしさ。(25)

〈参考 K塾解答例〉
(一種の啓示) 虎の演じ方は、動物園に行けばわかるということ。(23)
(一種の皮肉) 動物役者である自分を、動物園に行かせるということ。(25)


問六「その獣こそは自分の境遇にも似ているとさえ感じた」(傍線部(6))とある。虎と深井の境遇のどこが似ているのか。本文全体を踏まえて説明せよ。(3行)

〈GV解答例〉
野性の活力を奪われ、檻の中にどんよりと蹲り、見物人の観るがままに任せている虎と、まともな役者としての本懐を遂げることなく、道化の役に甘んじて、観客の笑いに身を委ねている深井の境遇。(90)

〈参考 K塾解答例〉
虎が、野性を封じ込められ、見世物として人々に従順な態度をとっているところと、深井が、自らの意思をないがしろにされ、周囲の要望に合わせた役を演じ続けているところとが似ている。(86)


問七「前よりももっと欣然としながら、動物園の門を出た」(傍線部(7))とある。なぜこのように変化したのか。深井の心情に即して80字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
自らと対照をなすように感じられた虎が一瞬見せた、口の中の鮮紅色に心を打たれ、それを機に虎の気持ちを理解し切って演じることのできる自己の演技の無二性を悟ったから。(80)

〈参考 K塾解答例〉
虎役を演じることを周囲から認められていささか得意になっていたが、実際に動物園で虎を見て、虎の心が分かり、自分こそが立派に虎を演じられるのだと確信できたから。(78)

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