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インド旅行記1〜禁断の地へと誘う獣達の囁き〜
インドに行った。インドとは何か。大学生の王道行方不明コース、『インドに旅立ちインドの魅力に惹かれ2度と帰ってこない』で有名なインドである。人間は疲れたらインドに渡る習性があるのだろうか?否定できないが。そんな神秘と大学生行方不明の国インドに私は命終わる場所、ガンジス河を目指して渡ったのだった。最早死期を悟った古龍の行う古龍渡りである。だがしかし正しくそれはどこよりも死に触れる旅だった。
インドに着いたのは夕暮れだった。ゴミの放つ腐臭とむわっとした熱気。街の喧騒。自分は東南アジア特有の毎日夏祭りの様な賑やかで少し不愉快な空気が大好きだ。大人になった今、夏祭りの興奮を味わえる場所は此処しかない。赤い土煙が夜の闇に混じる街の至る所に神の気配を感じた。
◆神と人と獣が這いずる土地
翌朝、ホテルの窓を開ける。
牛ダァ…
早朝の散歩に出てみた。
牛と行き合わせた…
牛とバッタリである。そんなことあるだろうか?食パン咥えた女子高生が角から飛び出してくるという奇跡を経験する前に何らかの神を祀った粗雑な造りの祭壇の影のゴミ捨て場からヨダレを垂らした片角の牛と行き遭うという意味不明事象を経験してしまった。イヤもう熱出した時に見る悪夢である。アドベンチャータイムのエピソードに迷い込んだ様だ…
肉屋の前を通るとヤギが天井から吊るされ、皮を剥がれていた。その血の匂いを嗅ぎつけた野良犬が物欲しそうに眺めていたので写真を撮っていたら目があった。哀愁漂う表情が腹を空かした獣の虚しさを表している様で個人的にこの犬はインドで出会った100頭ほどの野良犬の中で1番のお気に入りだ。ちなみにインドでは毎年2万人ほどが野良犬の媒介する狂犬病により死に至り、腹を空かせた野良犬に襲われ食い殺される人間も後を絶たない。最早死神の類いである。
要するに犬も歩けば牛に当たる。どこに行こうが公衆便所の中にまで牛やら犬がいたりするのだ。人間達の様に赤信号で止まる。大型車両の様に車と車の間を歩く。浮浪者と一緒にゴミを漁る。
異様な空間だった。獣と人の境目がない。人が獣の様に暮らしているわけではない。獣がまるで人の様に暮らしているのだ。最早『体が大きい』『体が小さい』『白人』『黒人』といった個性と同じく『角がある人』『牙が生えている人』『四つ足で歩く人』達がいる様な空間だった。人と獣の境目が曖昧になる。ましてや牛は神の使い。果たして人と獣と神の間に差異というものはあるのだろうか?とずぶずぶと思考が麻痺していくのを感じた。そこら中に造られた祭壇で神が溜息をついていた。
次回、インド最大の葬地、ガンジス河について
ヤギを乗せて走るエスニックでオシャレなヤギさんトラック。インド人、犬や牛には優しいがヤギには容赦無いのでほぼ確実に食肉用である。
合掌。
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