お稽古と出演者の話(前編)

あっという間に上演日まで半月を切った。早いなぁと思う。でも、いつもそんなもんかとも思ったりする。

台風の発生で天気が心なし不安定ではあるが、陽が沈んでからの気温が落ち着いてきたような気もする。なんとなく過ごしやすい、気のせいかもしれないが……今日は職場の先輩に連れられてプロ野球観戦をしてきた。千葉ロッテマリーンズとオリックス・バッファローズの試合。
なんとなく幼少期に球場での観戦は記憶にあるのだが、物心着く前でなんの試合だったのか、どういった経緯で見にったのかは覚えていない。父親がたしか社会人の草野球をやっていた、たしか。その影響で小学校は野球をさせられていたのだが、別に好きでもなくてサボっていた。やりたくない、という意思表示もできず、なにも面白さを見いだせなかった気がする。なんで通ってたんだ……
観戦に趣いたのは他でもない、稽古もなくてオフであり、人生経験の一つとしてだ。人生初の京セラドーム。先輩と合流して、会社のほかの人らと合流して、席につく。程なくしてチア合戦がはじまり、小学生たちの一生懸命なぐずぐずのフォーメーションや振りをニコニコして眺め、中学か高校生かわからないがちょっと大人のしっかりしたパフォーマンスを見てソワソワする。そこからデビューしたてのアイドルの歌や踊り・始球式見て、あぁ若い子の講師先生にガッツリ統率されたチアのが見ごたえあるなぁとかなんとか……試合が始まる。意外と面白かった。球場内を練り歩く売り子さんの笑顔が眩しかった。目を奪われてると試合が進んでいる。ハニートラップだ(絶対違う)

Windows 90.の話
所謂、激しいドラマらしいドラマっていうのが皆無の、街中でちいさく繰り広げられる日常を描いた戯曲を起こしている。面白いのが主人公のゆうぞう氏とヒロインのたつみ嬢が今回の面白さの核を先に掴んでおり、主人公2と3を演じる徳丸氏と坂口氏がうにゃうにゃと悩みいつになく恐る恐る模索して演じていることだ。
稽古帰りの駅へと向かう道すがらに話を聞いてると、若いお二人は体当たりで芝居してるようで冷静に身も蓋もない退廃的な筋道の中にある小さな起伏に面白みがあることに理解を示している。年上二人はそれを理解しつつ、長年武器として使ってきた見せ方とかそういう自分の思考や身体の癖でがんじがらめになってるらしい。どちらにも面白さはあって笑えるので、あまり深く口は挟まないようにしている。これがどう混じり合っていくのかニヤニヤ眺める。正解はない。
どうなるのだろうか、どんな化学反応が起こるのか

さて、本番も近いので俳優紹介の前編。若いお二人から。

①ゆうぞう(てんこもり堂)
主人公の洋介を演じてくれます。群像劇のスタイルのため、いつか「え、主人公なんですか?」と確認された。とらえどころない根無し草で飄々としてるけども、人間関係に角を立てず影が薄いのは立派な主人公です。あれですよね、ラブコメ作品とかエロゲとかの誰でもとっつきやすい前髪眺めで顔が影になってるような……そんな感じのやつ。

ゆうぞう氏は昨年のBOYCOTTで出演した際に珍しく波長が合うかもしれないと遭遇した京都の俳優です。特撮好きで伝説のスーツアクターである高岩成二さんに尊敬の眼差しを向ける青年。憧れの存在の背中を追って、アクション系の舞台に立ったり、ショーのバイトもしてるらしい。夢があるとは、なんと眩しい
そんな彼に今回、役をお願いしてるのは身も蓋もない、しょうもないセリフを違和感なく読んでくれるであろうという確信があったから。劇中で他人から食べられそうだけど、食べて大丈夫かわからないものを与えられて「とりあえず焼こう。焼いて食べて、まずかったら捨てよ」とある。変に欲を出しても面白がっても、怯えて変な否定的なニュアンスもあってはならない、非常にニュートラルでどうでもいいセリフ。これを成立させるのは意外と難しい。棒読みとも違う。どちらでもないようでどちらとも取れなくない非常に曖昧な中間トーンを成立させてくれる。うるさくない。かといっていわけでもない。時々、爽やかでも何でもないびみょーな反応に困る表情とかをするが、それがまたアイツはなんなんだと妄想を掻き立てる。
つまりなんだ……いいダシが染みてて、なんかいい感じのムードがある俳優なのだ。

②たつみ
ヒロインの知恵を演じてくれます。洋介の幼馴染で、勝手にバーベキューをされている店で働いてる健全な女子。今回唯一といっても過言ではない「常識・モラル」を象徴する、表向きは卒なくハキハキと人と接するけど、裏や砕けた間柄では口の悪いヒロイン。こういう女性像が好きだよね、とよく揶揄される。どうなのだろう。好きかは別にして格好良いと思ってはいる。単純にそういう家庭や環境にいて、非常に描きやすい。そういう意味で癖とか傾向で書きがちなヒロイン。なんかこういう作品のこのキャラみたいな……と例を出そうとしたが、意外と出てこない。クレヨンしんちゃんの野原みさえとか吉永先生? なんか若干違う気もする。ふざけて掃除しない男子に「ちょっと男子ー!」と呼びかけるのだが、伸ばし棒なしでキレよくてちょっと強気で怒るとドスのかかった感じで圧が強い、正論でもってレバーを抉ってくるそういう女子。
たつみ嬢は、女優ではない。小劇場を観劇してたら時々会う人は会っている人がいるかもしれない。受付の人です。裏方の人であって、舞台に立つ人ではありません。なんで彼女が出演してるかといえば、これは長くなるので割愛とする。とりあえずテーマは定まってるが、その芯を捉えるのが小難しい本を喜んで演じようとする珍しい女史。

おかしい、怒ってる顔しかない……笑うと爽やかで小動物っぽさが漂うかわいいんですけどね、写真がねぇ、残念。今回の上演を見てもらえば……笑う場面はなかったわ。呆れてるか怒ってるか夏の暑さで項垂れているかところしかない。笑う場面を書いたことがあったか、記憶を漁ってみたが、1~2行くらいしかなかった。だいたい怒るか呆れてるかぼーっとしてる気がする。彼女の怒り方は迷惑が誰かに掛かっているということに根付いており、あとを引かず爽やかでスパーンと即頭部をうち貫いてくれる。あまり畏怖を覚えず済むから楽なんだと思う。だいたいの人は怒らせたら(あ、終わった。もうダメだ)ってなるから。良い女優なのである ※女優ではない

やはり、目力バッチバチの攻めた顔しかなかった。

ピチピチ……言ってもそんなに、ですが若いパッション飛び散る夏が暑い作品です。
世には人生とはなんたるかーとか、今の時代はこういうので生きてる人はこれに気づかんとイケナイ!と言った激しい作品があるわけで、演劇ならそういうのを想像するのが多いかと思います。
しかし、ウチはあれです、CMに入る時のアイキャッチみたいな?次回予告後の本編ガン無視のおまけコーナーみたいな。刮目して見よとは言いません。
あ、こういうのもあるんだー……くらいの、深く考えずヘラヘラ笑ってもらえたら嬉しさで、むしろこちらがありがとうと頭を下げそうなくらいの作品です。
人に見てもらえて、はじめて完成します。

街角にいつの間にか生えてる草や花を愛でるような気持ちで。面白がれるのかどうか、心の状態を見つめ直せるかもしれません。よろしく

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ピンク地底人5号
生きる糧となります。喫茶のお茶代……ひいてはアレです、執筆のために頂戴いたします。つまり、ふへへへカフェインだ