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『霊感ゼロの霊能力者 〜下北沢オカルト喜劇〜』


霊感ゼロの霊能力者

俺の名前は山田太郎。下北沢の片隅で細々と暮らす、どこにでもいるような大学生だ。特筆すべき特技も才能もない。ただ一つ、他人と違うところがあるとすれば、それは俺が霊能力者だということだ。

...少なくとも、俺はそう信じている。

「おい、太郎!今日も霊視の特訓だぞ!」

耳をつんざくような声で、俺の親友にして同じオカルトサークル「霊界通信部」のメンバー、佐藤二郎が叫んだ。俺たちは今、大学の薄暗い地下室で、いつものように霊能力開発に励んでいる。...のはずだ。

「わかってるって。今、集中してるんだ」

俺は目を閉じ、真剣な表情を作る。そう、今まさに俺は霊界と交信しているのだ。少なくとも、周りにはそう見えているはずだ。

実際のところ、俺の頭の中は、昨日見た深夜アニメの続きを想像することで手一杯だった。霊なんて、影も形も見えやしない。

「おお!太郎、すげえ集中してる!」二郎が興奮した声を上げる。「なんか見えてきた?」

「ああ...」俺はゆっくりと目を開け、おもむろに言葉を紡ぐ。「確かに、何かが見えてきた気がする」

部屋の空気が一瞬で張り詰める。みんなが息を潜めて俺の言葉に聞き入っている。

「霊界からのメッセージだ...」俺は ドラマチックに間を置く。「『お前たちは...馬鹿だ』...そう言っているようだ」

一瞬の静寂の後、部屋中に失笑が広がる。

「さすが太郎!」二郎が腹を抱えて笑う。「霊界の住人も俺たちのことバカだと思ってるんだな!」

みんなで大笑いする中、俺は内心ほっとしていた。また今日も、この茶番を続けられそうだ。

噂の廃病院

オカルトサークル「霊界通信部」は、俺を含めてたったの5人しかいない。部長の鈴木三郎は、常に黒いローブを着て、首から怪しげなペンダントをぶら下げている。副部長の田中花子は、占い好きが高じて入部したらしいが、最近は霊能力にも興味を示している。そして最後の一人、高橋五郎は、ホラー映画マニアで、ゾンビメイクが得意だ。

「よし、今日は心霊スポット巡りだ!」三郎が意気揚々と宣言する。「噂の廃病院に行くぞ!」

俺の背筋に悪寒が走る。暗くて狭い場所は本当に苦手なのだ。しかし、霊能力者を自称する以上、怖気づくわけにはいかない。

「オ、おう...行こうぜ」俺は精一杯の強がりを見せる。

夜の帳が降りた頃、俺たちは例の廃病院に到着した。朽ち果てた建物は、月明かりに照らされてより一層不気味に見える。

「じゃあ、太郎。お前から入ってくれ」二郎が笑顔で言う。「霊能力者なんだから、案内してくれよ」

「あ、ああ...」俺は渋々先頭に立つ。

薄暗い廊下を進むにつれ、俺の脳裏に様々な想像が駆け巡る。幽霊が出てきたらどうしよう。天井が崩れ落ちてきたらどうしよう。ゾンビに襲われたらどうしよう...。

「太郎、何か感じる?」後ろから花子の声が聞こえる。

「え?あ、ああ...」俺は適当に答える。「確かに、何かの気配を感じる...」

その瞬間、背後で「ギャアアアア!」という悲鳴が響き渡った。

俺は反射的に叫び声を上げ、その場にしゃがみ込む。「ひぃっ!幽霊だ!」

しかし、振り返ってみると、そこにいたのは高橋のゾンビメイクした顔だった。

「うわっ!ビックリした!」二郎が笑い転げる。「太郎、お前の悲鳴、超リアルだったぞ!」

「いや、俺は...」言い訳をしようとしたが、みんなの笑い声に埋もれてしまう。

結局、その日の探索は俺の「霊能力」によって何も見つからず、終了した。帰り道、俺は考え込んでいた。この茶番をいつまで続ければいいのか。本当の自分を見せるべきなのか。

しかし、仲間たちの楽しそうな様子を見ていると、なんとなく言い出せない。結局、俺はまた今日も嘘をつき通したのだった。


おかしな夢

翌日、大学の講義中、俺は居眠りをしていた。突然、隣の席の女子に肘でつつかれ、目が覚めた。

「ねえ、山田くん」彼女は小声で言った。「あなた、霊感があるって本当?」

「えっ?」俺は寝ぼけまなこで彼女を見る。講義室の薄暗がりの中、彼女の顔が妙に青白く見えた。

「あ、ああ...まあね」俺は適当に答える。「どうしたの?」

「実は...」彼女は声を潜める。「私、最近おかしな夢を見るの。毎晩同じ夢で、真っ暗な部屋に閉じ込められて...」

俺は内心で嘆息した。またか。霊能力者だという噂が広まってから、こういう相談が増えた。普通なら、すぐに「それは単なる悪夢だよ」と言えるのだが、霊能力者を名乗る身としては、そう簡単には片付けられない。

「ふむ...」俺は真剣な顔つきで考え込むフリをする。「それは霊的な何かが関わっている可能性がある。ちょっと調べてみよう」

講義が終わると、彼女は俺を廊下に連れ出した。

「お願い、山田くん。この夢、本当に怖いの。何とかして」

彼女の切実な表情に、俺は罪悪感を覚えた。こんな嘘、もうやめたほうがいいんじゃないか...。

しかし、その時だった。

「おい、太郎!」

振り返ると、二郎が大声で俺を呼んでいた。

「大変だ!五郎が事故に遭ったんだ!」

「えっ!?」

俺は慌てて二郎について走り出した。五郎が事故だって?まさか、昨日の探索が原因じゃ...。

病院に着くと、そこには包帯だらけの五郎が横たわっていた。

「太郎...」五郎が弱々しい声で俺を呼ぶ。「俺、もうダメかも...」

「何言ってんだよ!」俺は思わず叫ぶ。「大丈夫だって!」

「いや...」五郎は目を閉じる。「俺、もう霊界に行くんだ...」

その瞬間、五郎の体が激しく痙攣し始めた。モニターが けたたましい音を立てる。

「五郎!」

俺は思わず五郎の手を握りしめた。その時、不思議な感覚が全身を包み込む。まるで、何かに憑依されたかのような...。

「う...うおおおお!」

気づくと、俺は奇妙な踊りを踊っていた。体が勝手に動く。まるで...お笑い芸人のモノマネをしているかのように。

「太郎!?」二郎が驚いた声を上げる。「お前...まさか五郎に憑依されたのか!?」

そう、これは間違いなく五郎のギャグだった。彼の十八番である「ゾンビダンス」を、俺の体が勝手に踊っている。

「ぐはははは!」俺の口から五郎の笑い声が漏れる。「やっぱお前、霊能力者だったんだな!俺の魂、ちゃんと受け取ってくれて感謝するぜ!」

そして、突然の静寂。

俺の体の動きが止まると、ベッドの上の五郎がムクリと起き上がった。

「どうだった?俺の演技!」

部屋中が騒然となる。

「おい、これどういうことだ!?」俺は混乱して叫ぶ。

五郎は満面の笑みを浮かべながら説明した。「実はさ、お前の霊能力が本物かどうか試してみたくてね。みんなで計画したんだ。お前が本当に霊感あるのか、俺の魂を受け取れるのか見てみたくてさ」

「えっ...」

俺は言葉を失う。つまり、今の出来事は全部やらせで、俺の反応を見るためのものだったというわけか。

「でもさ」二郎が不思議そうに言う。「太郎、お前あんなに上手く五郎のモノマネできたのはどうして?まるで本当に憑依されたみたいだったぞ」

「そ、それは...」

俺は慌てて言い訳を考える。しかし、この状況をどう説明すればいいのか。本当のことを言えば、俺には霊感なんてないとばれてしまう。かといって、嘘を重ねるのももう限界だ。

「実は...」俺は深呼吸をして、覚悟を決める。「俺には霊感なんてないんだ」

部屋中が静まり返る。

「ずっと嘘をついていた。でも、みんなが楽しそうだから、なんとなく言い出せなくて...」俺は顔を伏せる。「さっきのは、ただの偶然だ。五郎のギャグをよく知ってたから、無意識にやっちゃっただけ」

沈黙が流れる。俺は首の皮が飛ぶ思いで、みんなの反応を待つ。

すると、突然、部屋中に笑い声が響き渡った。

「そうか!やっぱりな!」三郎が大笑いする。「俺たちも、お前に霊感がないってうすうす気づいてたんだ」

「えっ?」俺は驚いて顔を上げる。

「でもさ」花子が優しく微笑む。「太郎くんがいるから、このサークル、すっごく楽しいの。霊感なんてどうでもいいじゃない」

「そうだぞ」二郎も同意する。「お前のおかげで、俺たち、こんなに仲良くなれたんだ」

五郎も笑いながら付け加える。「それに、お前のリアクション、めっちゃ面白いしな!」

俺は、思わず涙ぐんでしまう。「みんな...」

そして、俺たちは全員で大笑いした。この瞬間、俺は気づいた。霊能力なんて、本当はどうでもいいんだ。大切なのは、こうして一緒に笑い合える仲間がいることなんだと。

霊笑い通信部

それから数日後、俺たちは再び大学の地下室に集まっていた。

「よし、今日は新しい霊能力開発メニューを考えよう!」三郎が意気揚々と宣言する。

「おう!」みんなで賛同の声を上げる。

俺は、ふと思いついて言った。「あのさ、霊能力じゃなくて、お笑いの練習とかどうかな」

一瞬の静寂が流れた後、二郎が大笑いしながら言った。「太郎、お前らしいな!でも、それ案外いいかもしれねえぞ」

「そうだな」三郎も考え込むような表情を浮かべる。「霊界通信部」改め「霊笑い通信部」ってのはどうだ?」

「おお!それいいね!」花子が目を輝かせる。「私、占いネタで一発芸考えてみようかな」

五郎も乗り気だ。「よっしゃ!俺のゾンビメイク技術、絶対ウケるぜ!」

こうして、俺たちの部活は思わぬ方向に進化を遂げることになった。霊能力開発という名目で、実際にはお笑いの練習に励む日々。正直、これはこれで楽しかった。

ある日のこと。俺たちは大学の学園祭で出し物をすることになった。題して「霊笑い通信部の怪談お笑いライブ」。まあ、怪談というよりはただのコント集なんだけどな。

準備の日々は慌ただしく過ぎていった。二郎は「霊媒師あるある」というネタを必死に練っている。花子はタロットカードを使ったマジックを完成させようと奮闘中だ。五郎に至っては、ゾンビメイクを施した状態での物真似に挑戦していた。

そして俺は...相変わらずオカルトネタで滑り倒すことになりそうだった。

学園祭当日。会場には意外にも多くの観客が詰めかけていた。なんでも、ウチの大学では「霊界通信部の太郎が本物の霊能力者らしい」という噂が広まっていたらしい。まったく、嘘も方便とはこのことか。

「よーし、始めるぞー!」三郎の掛け声で幕が上がる。

最初は二郎の「霊媒師あるある」から始まった。「霊を呼び出そうとしたら、間違えて宅配業者を呼んじゃった〜」なんてオチで、会場は爆笑の渦に包まれる。

続いて花子のマジック。「占いの結果、あなたの運勢は...」とカードをめくったら、そこには「どん底」の文字。「あ、これ裏表逆さまでした!」と慌てて「超絶ラッキー」に変える芸に、客席からは笑いと拍手が起こった。

五郎のゾンビ物真似は予想以上の盛り上がり。「私の名前はマイケル・ジャクソン。ただし、スリラーの時の」というネタで会場が沸いた。

そして、いよいよ俺の出番だ。

「え〜っと、皆さん。私は霊能力者の山田太郎です」俺は緊張しながら話し始める。「今日は、皆さんに霊視の様子をお見せしたいと思います」

会場が静まり返る。みんな、固唾を飲んで見守っている。

俺は目を閉じ、額に手を当てる。「うーん、霊の声が聞こえてきます...」

そして、突然叫ぶ。「あ!幽霊だ!」

会場がざわつく。

「いや、違った。自分の腹の音だった」

一瞬の静寂の後、会場が爆笑に包まれた。

「今度は本当に見えてきた!白い影が...」俺は ドラマチックに間を置く。「って、あれ?あれ?... あれ? うわーっ! 本当に見えてきた!... あれ、あれは... あの人の下着!?」

また大爆笑。

こうして、俺の「霊能力者あるある」は意外にも大ウケとなった。まあ、笑われているのは俺自身なんだけどね。

ライブが終わると、観客から大きな拍手が起こった。控室に戻った俺たちは、興奮冷めやらぬ様子で喜び合う。

「やったな、太郎!」二郎が俺の背中を叩く。「お前のネタ、最高に面白かったぞ!」

「本当だよ」花子も目を輝かせて言う。「太郎くんの真面目なフリからの落ちが絶妙だったわ」

「まあな」俺は照れくさそうに答える。「霊能力者のフリをするのには慣れてるからな」

みんなで大笑いする。そう、もはや俺たちにとって、霊能力の有無なんてどうでもいいことだった。大切なのは、こうして一緒に笑い合える瞬間なんだ。

その夜、俺たちは下北沢の居酒屋で打ち上げをしていた。ビールで喉を潤しながら、今日のライブの話で盛り上がる。

「ねえ、太郎くん」花子が不思議そうな顔で俺に聞く。「さっきのライブの時、本当に何か見えたりしなかった?」

「はあ?」俺は首をかしげる。「何言ってんだよ。俺に霊感なんてないって知ってるだろ」

「いやいや」二郎も真剣な顔つきになる。「俺もちょっと気になってたんだ。お前、ライブ中に妙にリアルな反応してただろ?」

「えっ...」俺は言葉に詰まる。確かに、ライブ中は妙にテンションが上がっていて、自分でも驚くくらい自然な反応ができていた。でも、それはきっと...。

「まさか」三郎がニヤリと笑う。「本当に霊感が芽生えたとか?」

「バカ言うな!」俺は慌てて否定する。「そんなわけないだろ!」

しかし、その瞬間だった。俺の視界の隅に、かすかな白い影が映った。

「うわっ!」思わず声が出る。

「どうした、太郎?」五郎が心配そうに聞く。

「い、いや...」俺は冷や汗を拭う。「なんでもない。気のせいだ」

みんなは怪訝な顔をしていたが、やがて話題は別のことに移っていった。

俺は静かにビールを飲む。さっきの白い影は、本当に気のせいだったのか?それとも...。

いや、考えるのはやめよう。俺には霊感なんてない。そう、絶対にないはずだ。きっと、ただの錯覚さ。

...そう思い込もうとしても、どこか心の奥底で、俺は不安を感じていた。

これからの「霊笑い通信部」の活動が、思わぬ方向に進化していくなんて、この時はまだ知る由もなかった。

廃病院ライブ

それから数週間が過ぎた。俺たちの「霊笑い通信部」は学内で人気者になっていた。廊下を歩けば、「あ、霊能力芸人だ!」なんて声をかけられるようになった。正直、少し面映ゆい気分だ。

ある日、俺たちは地域のお笑いライブに出演することになった。場所は...なんと、あの廃病院だ。

「マジかよ...」俺は絶望的な気分になる。「まさかあそこでライブするのか?」

「そうだぜ!」二郎が興奮気味に言う。「超ウケるだろ?本物の幽霊屋敷でお化けネタやるんだぜ!」

俺は内心で泣きそうになりながらも、表面上は平静を装った。「あ、ああ...楽しみだな」

当日。廃病院は意外にもたくさんの観客で賑わっていた。古びた病室を改造した即席の舞台。薄暗い照明。かび臭い空気。...最悪の環境だ。

「よーし、始めるぞー!」例によって三郎の掛け声でショーが始まる。

みんな、この雰囲気を存分に活かしたネタを繰り広げる。二郎の「幽霊と間違われて入院を断られる霊媒師」は大ウケだった。花子の「悪霊退散」と称して客席にお札を投げまくるパフォーマンスも、予想以上の盛り上がり。五郎に至っては、本物の幽霊と見間違えられるほどリアルなメイクで観客を驚かせていた。

そして、トリを務めるのは俺だ。

「え〜、霊能力者の山田太郎です」俺は震える声で話し始める。今回は本当に怖くて震えているんだけどな。

「今日は、皆さんに特別な霊視をお見せしたいと思います」

俺は深呼吸をして、目を閉じる。そして...。

「うわあああああ!」突然、絶叫を上げる。

観客が息を呑む。

「い、今、廊下に...」俺は震える指で廊下を指さす。「白衣の...」

その瞬間、廊下に本当に白い影が見えた気がした。俺は固まる。

「お、おい、太郎?」二郎が心配そうに声をかける。「大丈夫か?」

俺は口パクで「マジでいる」と伝える。

二郎は「ふ〜ん、さすが太郎!リアルな演技だな!」と笑いながら言った。

俺は震えながら、即興で話を続ける。「え、ええと...そこにいらっしゃる白衣の方。どうかその...怖い顔はやめていただけると...」

すると突然、廊下から「キャー!」という悲鳴が。

観客が一斉にその方向を向く。そこには...病院の巡回をしていた警備員のおじさんが立っていた。

「す、すみません」警備員が慌てて言う。「ネズミにびっくりしちゃって...」

会場が爆笑の渦に包まれる。

俺はほっとため息をつく。「あ、ありがとうございました。これにて霊視を終了します」

ショーが終わると、観客から大きな拍手が起こった。控室に戻った俺たちは、興奮冷めやらぬ様子で喜び合う。

「太郎、お前すげえよ!」二郎が俺の肩を叩く。「あの警備員との掛け合い、打ち合わせてたのか?」

「いや、あれは...」俺は言葉に詰まる。本当のことを言っても、誰も信じないだろう。

「太郎くん、霊感復活したんじゃない?」花子が冗談交じりに言う。

「まさか」俺は苦笑いを浮かべる。「たまたまタイミングが良かっただけさ」

みんなで談笑していると、警備員のおじさんがやってきた。

「君たち、素晴らしい芸だったよ」おじさんは満面の笑みで言う。「特に最後の霊視のやつ。あれには本当に驚いたよ。まるで本物の...」

おじさんの言葉が途中で止まる。彼の背後に、かすかに白い影が見える。俺は息を呑む。

「あの...」俺は震える声で言う。「おじさんの後ろに...」

おじさんは振り返り、そして... 「おや、院長先生。お久しぶりです」

俺たちは唖然とする。そこには、確かに白衣を着た老紳士が立っていた。

「やあ、久しぶりだね」老紳士...いや、元院長先生が穏やかな笑顔で言う。「君たちの公演、素晴らしかったよ。特に霊能力者の君」

院長先生は俺を指さす。「君には本当の才能があるようだね。これからが楽しみだ」

そう言うと、院長先生はふわりと消えてしまった。

俺たちは、しばらく言葉も出ない。

「お、おい...」二郎が震える声で言う。「今のは...」

「ネタ...だよな?」五郎も半信半疑の様子だ。

俺は黙ったまま、天井を見上げる。

こうして、俺たち「霊笑い通信部」の新たな冒険が始まった。霊感アリなしの霊能力者兼お笑い芸人として、俺たちはこれからどんな騒動に巻き込まれるのか。

それはもう、誰にも分からない。

ただ一つ確かなのは、これからも俺たちは笑い続けるということ。たとえ相手が人間であろうと幽霊であろうと、笑いの力で乗り越えていく。

そう、「霊笑い通信部」の真の能力は、霊を視る力じゃない。

人々を、そして霊をも笑顔にする力なんだ。

...なんて、ちょっとイイこと言いすぎたかな。

(完)


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