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素人と読む旧約聖書⑨はっけよーい、のこった
素人と読む旧約聖書シリーズは、筆者が、作家であり絵画など美術作品に詳しい中野京子大先生の本を読んで、歴史や美術に関心を持ち、その中でも特に興味を抱いた「聖書」の分野を、皆さんにも理解してほしいという思いから始まりました。ちなみに、筆者は万物において素人なので、どうか温かい目で記事をご覧願います。
参考にさせていただいた中野先生の著作はこちらになります。是非、購入をいただけたら私も嬉しいです。
Amazonリンク:中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇
著:中野京子・文藝春秋社
1.夢からの目覚め
『創世記』の第27章から第33章は、ヤコブ(イスラエル)の生涯についてが記述されている。前回まで、兄弟での家長権争いで、家に居場所がなくなったヤコブは叔父の家のもとへと家出をする。その道中でヤコブは、不思議な夢を見る。ヤコブが神からなにかしら特別な存在であることを、暗に伝えられるシーンである。
さて、夢から目覚めたヤコブは、逃げるようにたちさり、やっとの思いで叔父の家に到着する。そこで、叔父からヤコブに課されたのは、14年間の無償労働である!!!いや、カイジの世界か!!
しかし、カイジの世界とは違うことが一つある。それは、ヤコブがその14年間で、「ラケル」や「レア」といった妻などとの間に13人の子どもを授かり、また、奴隷や家畜を有する大金持ちへとなったことである。
2.ヤコブの焦燥
大金持ちとなったヤコブは、やがて故郷のカナンへ帰ることを決める。しかし、カナンへ近づくにつれて、兄のエサウの話題が耳に入ってきた。エサウとは家長権の争いで、兄を裏切るような行動をとってしまったヤコブは兄との関係性を心配する。そして、ヤコブはエサウが怒っているのではないかと震えるようになる。
そこで、ヤコブは大量の家畜を土産に用意し、全滅を防ぐために自分以外を先にカナンへ向かわせたのだ。
3.ヤコブと天使の戦い
「Jacob wrestling with the angel」
ヤコブはその晩に、また、不思議な夢をみることとなる。ヤコブが1人の男と戦う夢である。戦いでヤコブは朝になっても、祝福を受けない限りその男を離さないと言う。その男はヤコブの根気に負け、ヤコブからイスラエル(神に挑むもの)に改名せよ。お前は神と人とに挑み、勝ったからだ。と祝福をした。
その戦いの様子は、ドラクロワの絵で視覚的に確認できる。ドラクロワと言えば『民衆を率いる女神』の絵画で有名な画家である。以下、ドラクロワの『ヤコブと天使の戦い』である。
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このシーンは、すもうのルーツと言われている(諸説あり)。しかし、がっつり取っ組みあってるなと感じる。天使と互角に張り合えるヤコブ強すぎないか? ちなみに、英語ではレスリングとなっているのも面白い。
このシーンの絵画は他の画家も絵として残しているので、是非検索してもらいたい。
4.エサウとの対面
神から祝福され、認められたイスラエルも、兄のエサウに対してはビビっていた。しかし、案外対面してみると、エサウはヤコブを歓迎し、久しぶりの再会を大いに喜んだ。
私からすると寛大な心の持ち主である、エサウがとてもかっこよく人格者と思えるが、どうやら偉大なる人物には、貪欲さも必要らしい。だから、ヤコブが偉大なる族長と呼ばれているのだ。