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ふるさと納税返礼品について レポートの例【2025改訂版】

 ※本記事は、学校などで「ふるさと納税」について研究する学生の方に向けて、私が大学時代に書いたレポートを再考し、編集したものを公開しております。みなさんのレポートづくりや発表での参考になればと思います。
 ちなみに、完全に素人が執筆した記事なので、完成度は決して高くなく、学生の方の手助けになればと思っているので、有識者の方は回れ右でお願いします。  
 また、大変申し訳ございませんが、記事に誤りがあればコメント欄でご報告頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。

 ※こちらは、私が以前に執筆した記事の改訂版になっております。2025年の10月よりふるさと納税の際の仲介サイトのポイントの付与が禁止されることが政府より発表されまして、そちらについても触れているので、改訂版もご覧いただければ理解がより深まると感じます。
↓前回の記事


「ふるさと納税」制度を聞いたことはありますでしょうか。
 現在、テレビや雑誌などでもよく取り上げられる題材で、知らない人はいないのではというほど有名な制度になってしまいました。
 今回は、ふるさと納税でレポートを書いたらこんなんできあががったよ!!というのを公開しているので、是非ご覧ください。

 本レポートは、「ふるさと納税」肯定派の立場から、返礼品の問題について言及し、解決策としてどのような返礼品ルールが適切かを記しています。

1.はじめに

 2023年10月より、ふるさと納税の返礼品についてルールが変更された。この変更で返礼品の取り扱いが、これまでよりも厳格化されることになる。この変更は、私たち納税者からすると、返礼品の質や量が低下したり、寄付額が実質値上げされるなどと良いニュースではないように思える。
 では、なぜこのような改正が行われたのか。その背景を、ふるさと納税がもつ問題点や、過去の返礼品についてを争った判例を確認したうえで、今後のふるさと納税返礼品制度の在り方について検討する。

2.ふるさと納税とは

ふるさと納税の仕組み ※1より引用

 「ふるさと納税」制度とは、住所地以外の任意の地方団体(都道府県および市区町村)に寄付をすることにより、寄付額から2000円を除いた金額を所得税や住民税から差し引いてもらえる制度。また、寄付により自治体より返礼品を受け取ることができる。

※税額控除の計算方法は資料1

⇒2000円でメロンやお肉がもらえる

※例えば、10000円を寄付して、自治体から牛肉をもらった場合、8000円分は自分の払うべき税金を免除してもらえる。なので、実質差額の2000円を払っただけで牛肉を手に入れることができる。

 「ふるさと納税」は、税金が集まりやすい都市部の地方自治体と税収減少に苦しむ地方自治体の税収格差問題に対する策として2008年に導入された。また、制度の意義として「納税者の選択」「「ふるさと」の大切さ」「自治意識の進化」の3点が強調されている。

①「納税者の選択」
 納税者が納税地を自分で選択できるという道を開き、
 税金の使われ方を知る。
②「「ふるさと」の大切さ」
 自分を育ててくれた故郷の人々や施設に感謝し、
 恩返ししたいという気持ちを育む。
③「自治意識の進化」
 納税を受けたいという地方団体が魅力を発信することで、自治体間の競争を生む。

3.ふるさと納税の問題点

 しかし、ふるさと納税は多くの問題を抱えていることが指摘されてきた。ここでは、問題点について、以下の5つに大別した。

① 地方税の満たすべき性質である、応益原則や負担分任原則に抵触すること
② 地方交付税特別会計の財源不足を増大させること
寄付を求めての返礼品競争を激化させること
④ 負担を伴わない「寄付」は寄付の理念に反すること
⑤ 地方団体への寄付と、地方公共団体以外への寄付との間で不平等性が激しいこと

 ここからは、③に注目し検討を進める。返礼品激化とその判例、また、法令の改正の歴史を示す。そして、適切な返礼品制度について検討する。

4.判例

 ふるさと納税がここまで世間の認知度をあげ、注目されるのは返礼品の影響が大きいだろう。一方で、寄付を求めての自治体による過度な返礼品競争が行われている状況が起きてしまった。
 判例では、泉佐野市が過度な返礼品を設定したことによって、ふるさと納税制度から外されてしまったという判決を扱うが、その以前の状況を引用しておく。

 地方自治体による過度な返礼品競争に対して、国は2015 年から2018年までに、技術的助言として計4度の通知を発出し、制度の趣旨に沿った責任と良識のある対応を要請してきた。しかし、「一部の地方自治体が過度な返礼品を送付することによって多額のふるさと納税を集めている状況が継続していること」から、「制度的な対応を講じることが必要である」として、「ふるさと納税指定制度」が導入された。 制度の見直しを表明した2018年9月11日の閣議後記者会見では、野田聖子総務大臣(当時)によって、「一部の地 方団体において通知に沿った対応が行われていない実態」、「過度な返礼品を送付し、制度の趣旨を歪めているような団体」、「一部の地方団体による突出した対応」、「制度の趣旨に沿わない返礼品を送付している地方団体」という表現が用いられ、通知に従わない一部の地方自治体の責任が強調されている。

ふるさと納税における返礼品競争の要因と問題点 ※11より引用


★泉佐野市不指定取消請求事件
 最高裁令和2年6月30日第三小法廷判決

<概要>
 泉佐野市は総務大臣の技術的助言(2017年4月・返礼品は寄付額の3割以下にすること、2018年4月・返礼品は特産品にすることなど)に従わず、高額の返礼品提供により多額の寄附金を集めた。そのことが、当時の法律には違反していなかったにもかかわらず、その後の法改正により創設された新制度において、総務省告示により、過去に著しく多額の寄附金を受領した団体でないことが制度参加の要件とされ、泉佐野市が新制度から排除された。この不指定の適法性が争われた。

<判決と考察>
 判決は、破棄自判で泉佐野市の勝訴となった。
 本レポートの趣旨に照らすと、裁判上の重要ポイントは、泉佐野市が秩序に反した返礼品の提供を続けていたという事実である。判決の全文からは、『泉佐野市における寄附金の受領額は、平成23年度までは年間1000万円前後にとどまっていたが、寄附金の受入れのための取組が進められた結果、同27年度に約12億円、同28年度に約35億円、同29年度に約135億円、同30年度に約498億円と、大幅に増加した。このうち平成29年度及び同30年度の受領額は、いずれも全地方団体の中で最も多かった。』『平成30年11月1日から同31年3月31日までの期間において、同市の寄附金の受領額は約332億円であったところ、同市が提供した1026品目の返礼品の返礼割合はいずれも3割を超え(平均43.5%)、そのうち745品目は地場産品ではないものであった。』『平成30年12月及び同31年2月から同年3月までの間、「100億円還元キャンペーン」等と称し、従来の返礼品に加えて寄附金額の3〜20%相当のアマゾンギフト券(電子商取引サイトであるアマゾンにおいて取り扱われる商品等の購入に利用できるもの)を交付するとして、寄附金の募集をした。また、同市は、同年4月2日から令和元年5月31日までの間においても、「300億円限定キャンペーン」、「泉佐野史上、最大で最後の大キャンペーン」等と称し、従来の返礼品に加えて寄附金額の10〜40%相当のアマゾンギフト券を交付するとして、寄附金の募集をした。』とある。このように、総務大臣からの助言に従わず、高額な返礼品を提供していたことが分かる。また他の地方自治体でも、泉佐野市同様に、高額な返礼品があることを宣伝し、全国からの寄付を募っていたという状況が確認できている。

※本判決で泉佐野市が勝訴したロジックについては、複雑かつ主題から逸れてしまうため参考文献9、10をご覧ください。

5.法改正

 泉佐野市をはじめとした過激な返礼品合戦によって2019年には、「返礼品の調達額は寄付額の3割以下にすること」「募集経費を寄付額の5割以下としていること」「返礼品は地場産品に限ること」「居住自治体への寄付では、返礼品が受け取れないこと」などが地方税法に定められた。
 そして、2023年の10月から新たな改正が実施された。今回の法改正では、「募集に要する費用について事務費用や手数料も含めて寄付金額の5割以下にすること」や「加工品のうち熟成肉と精米について、原材料が地方団体と同一の都道府県内産のものに限り返礼品として認める」ことが決められた。
※令和5年度改正について詳しくは資料2にて解説

6.これからの「ふるさと納税」

 ふるさと納税の実施で、各自治体が多くの寄付額を募るが故に、魅力的な返礼品を追求し、自治体間での返礼品の競争が発生した。これが、ふるさと納税制度を行う上でのひとつの大きな問題点だということが理解できる。
 実際に泉佐野市では過去にアマゾンギフト券を交付するなど社会通念上節度を欠くといえる返礼品を設定し、返礼品競争を加速させていた。
 そこで、政府は返礼品に対する法令の改正を行い、返礼品の競争を落ち着かせた。しかし、いまだ返礼品に関して各自治体が平等なルールにはなっていないと感じる。また、手数料や送料などで自治体の実際の取り分は少なくなっているという問題もある。

 よって、
①返礼品の競争の加速を助長しない
 かつ社会通念上適当な返礼品であること
②自治体が寄付額を十分受け取ることができるルール
 の2軸が重要だと私は考える。

 ①に関して、現在ふるさと納税の仲介サイトを見てもらうと分かるが、ありとあらゆる返礼品が設定されている。つまり、規制が厳しくなった現在でも、ある程度の競争は起こっているはずである。そこで、競争を喰いとめるためには、あらゆる返礼品のひとつひとつにルールを設け、競争が生まれにくい返礼品を確立していくべきである。
 しかし、懸念点としては、まずあらゆる返礼品ひとつひとつにルールを作るのは不可能に近いということである。また、自治体が特産品を強みに出しあって、生まれる競争は、ふるさと納税の意図に沿った良い効果であると考えられることである。
 なので、返礼品ルールは、ふるさと納税制度を続けていく中で、適性な返礼品競争を乱すような返礼品が出てきたときに、個別に対応をしていくのいが一番望ましい方法であると考える。

 ②に関して、自治体の募集に関する費用は、寄付額の5割までと定められたが、守っていない自治体も多くあり、実際に自治体が受け取れる寄付額が少なくなっているという問題がある。
 これは、仲介サイトがマージンを取りすぎているというのが答えではないかと考える。返礼品の梱包費や発送日は、安く抑えるのにも限界がある。仲介サイトに政府が規制を加え、少しでも自治体への寄付額を増加させる方法が、最も効率的で現実的な解決策であると私は考える。

資料1(税額控除の計算方法)

参考文献6より引用
参考文献6より引用


資料2(「ふるさと納税返礼品」令和5年10月のルール変更について)


ルール変更①経費含めた5割ルール
ルール変更②熟成肉と精米のルール
ルール変更③セットの返礼品

※参考文献7より引用。詳しくは、参考文献7をご覧ください。


7.2024年6月の法改正について

 ふるさと納税制度の2024年6月改正の評価であるが、本レポートの趣旨に沿えば、素晴らしい改正といえる。しかし、ふるさと納税利用者にとっては大ブーイングの改正だと考える。

①寄付者に対しポイント等を付与するポータルサイト等を通じた寄付募集を禁止(2025年10月より)
②民間事業者等が行う返礼品等を強調した宣伝広告も禁止事項である旨を明確化
③食品返礼品の産地名の適切な表示を確保するため、必要な措置を構ずる旨、募集適正基準に明示
④製造者から、当該製品の価値の過半が当該区域内で生じていることについての証明がなされた場合に限定
⑤宿泊は、同一県内展開の宿泊施設に限る(以下は限定の対象外)
 ⇒1人1泊5万円以下の宿泊
 ⇒膨大な災害の被災地での宿泊(発災の次の指定期間)
⑥地域との関連性が希薄な役務は対象外である旨の明確化

 法改正の内容は、上記の通りであるが、なんといっても①の改正が今回1番制度の変更に大きな影響を及ぼすのではないかと考えられている。
 現在では、多くの仲介サイトで寄付額に応じて一定のポイントを付与するサービスを行っており、例えば楽天であれば楽天ポイントを付与するなど、自社サービスを使うとお得ですよ!!というのをアピールしてきた。
 しかし、これが2025年の10月から廃止されることにより、ふるさと納税を利用する上での、お得感が減少してしまう。

 ポイント付与が廃止される理由は、
①ふるさと納税本来の意図から外れているから
 (自治体の財政負担の軽減を目指す・ポイントによる競争激化を止める)
②ポイント付与の高さで寄付先を選ぶ人が多いから

 ふるさと納税の目的を考えると、今回の改正は間違っていないと感じる。しかし、ユーザーからの不満の声は大きく、仲介サービスを行う楽天もこれに反対し署名運動を行っている。※15を参照
 読者は今回の改正をどう考えるだろうか。



【参考文献】

※1ふるさとチョイスHPトップページ 
https://www.furusato-tax.jp/about
※2「ふるさと納税」制度とその問題点 水田健一
https://ngu.repo.nii.ac.jp/record/908/files/syakai_vol5304_04.pdf
※3行政判例百選Ⅰ第8版 P.98 中原茂樹
※4ふるさとチョイスHP 「2019年6月の法改正について」
https://www.faq.furusatotax.jp/faq/show/3011site_domain=default
※5総務省HP 「ふるさと納税の次期指定に向けた見直し」
https://www.soumu.go.jp/menu_news/snews/01zeimu04_02000113.html
※6日経BP「日経マネー別冊付録2022年11月号」P.2、3
※7YouTube「ふるさと納税 10月からのルール変更」Nスタ解説
https://www.youtube.com/watch?v=LGWkl3NJQlE
※8総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000827748.pdf
※9令和2年ふるさと納税訴訟最高裁判決
  泉佐野市は「節度を欠いていた」がなぜ勝訴?
https://aclogos-law.jp/information/385/
※10 令和2(行ヒ)68号不指定取消請求事件
※11ふるさと納税における返礼品競争の要因と問題点 土屋仁美https://www.seiryo-u.ac.jp/u/research/gakkai/ronbunlib/e_ronsyu_pdf/No135/04_tsuchiya135.pdf

※12ふるさと納税のポイント付与廃止はいつから?なぜ?わかりやすく解説
  ふるらぼ 

※13ふるさと納税の指定基準の見直し等 総務省
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01zeimu04_02000126.html

※14 ふるさと納税の指定基準の見直し概要 総務省
※15 ふるさと納税へのポイント付与を禁止する総務省告示に対する
   反対署名が100万件を突破 楽天
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2024/0709_03.html



コラム1 ふるさと納税ができた経緯

 レポートを書くうえで、どうやって「ふるさと納税」制度はできたんだろうと思うことがあると思うので記しておきます。
 実は、元内閣総理大臣の菅さんが総務大臣時代の2008年に制度は作られました。やはり菅さんの功績はでかいですね(?)
 インタビューに答えられていたので貼って置きます。※16より

総務大臣になって調べてみると、当時、生まれてから高校を卒業するまでの行政サービスに自治体は、約1,600万円かけていました。それだけかけて育ててくれたのに、いざ、自分が働いて、税金を納めるとなると、住んでいるところ、つまり都会になるのです。やはり、こうした仕組みが必要だと改めて確信し「今やらないで、いつやるのだ」という固い決意で、制度創設を表明しました。

※16より引用

 ちなみに、2006年に福井県の西川知事が、都会に子供が流れてしまうため、多額の税収コストが回収できずにいるという提言が始まりでできた制度だそうです。


コラム2 泉佐野市ヤってんねえ

 泉佐野市の判例の全文、複雑だけどめっちゃおもろい。
 最後の方の林景一裁判官補足意見をみると泉佐野市のやばさが伺える。

居心地の悪さの原因は、泉佐野市が、殊更に返礼品を強調する態様の寄附金の募集を、総務大臣からの再三の技術的な助言に他の地方団体がおおむね従っている中で推し進めた結果、集中的に多額の寄附金を受領していたことにある。特に、同市が本件改正法の成立後にも返礼割合を高めて募集を加速したことには、眉をひそめざるを得ない。

令和2年(行ヒ)第68号 不指定取消請求事件

たとえ結論に居心地の悪さがあったとしても、法的には法廷意見のとおりと考えざるを得ないのである。

令和2年(行ヒ)第68号 不指定取消請求事件

 また、最後の一文からは、裁判官としての覚悟が感じられてとても良き。



8.最後に

 ここまで、読んでくれた読者のみなさまありがとうございました。学校などでの発表で役に立ててくれれば、嬉しいです。ふるさと納税は納税者にとっては、とてもお得な制度なので、法改正によってお得感が減少してしまうのはとても残念だと思います。
 他のシリーズで「素人と読む旧約聖書」がありますので、こちらもチェックしてくれたら嬉しいです。よろしくお願いします!!


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