ゼンハイザーHD25を半年間使ってみて、、
ヘッドホンのスーパートップブランド=ゼンハイザーのHD25をDJ用として自宅や現場で約半年間使ってみた。
それまで自分は長い間ずっとPioneerDJユーザーだったわけだが、結論から言って、結局Pioneerに戻ることにした。
何がどうなってそうなったかをnoteしておく。
まず、それまで使用していたヘッドホンはPioneerDJのHDJ-2000MK2というモデル。発売当初は同ブランドの最高級フラッグシップモデルと位置付けされていた。耐久性に優れていて、10年にわたってDJの現場でヘヴィに使い続けてきて、今もまだ使用できている。ケーブルやイヤパッドを交換できるのもセールスポイントのひとつで、パッドの方は2回ぐらい付け替えたと記憶している。最近になって、接触不良か何かが原因で、音が切れる事象が何度かあり、5月に大きなイベントに出演するのを機に買い換えしたという経緯である。ちなみにこのMK2はメーカーではすでに終売していて、ケーブルやイヤパッドも入手できない。(ケーブルを交換できれば音切れ問題は解決できるかも知れない。)
私のDJのキャリアが10年ちょいだから、まあ、DJのほとんどのシチュエーションでこの2000MK2を使ってきたことになる。つまり、他のヘッドホンはほぼ使った経験がない。
さて、ブランドの陣地を飛び出してまでゼンハイザーを選択したのには実はそこまで深い理由はない。いちばんの決め手は(恥ずかしながら)ハニーディジョンが同機種を使用している写真をファッション系のウェブマガジンの記事の中で見たことだったと思う。自分はハニーディジョンのファンでは全くないのだけど、彼女は存在そのものがスタイリッシュでファッションとの距離が近い感じがする。(事実、自分のファッションブランドを持っていたりもする。)持ち物については、彼女の真似をしておけば間違いないんじゃないか、という気がしたわけだ。
あと、ロングセラーというのも大きな要素だった。DJ用のヘッドホンはトレンドの移り変わりが激しいアイテムだと思う。その中においてHD25が長期間に渡って多くのDJやエンジニアから支持され続けてきたのには、それなりの意味があるはずだと思った。
他にも、コンパクトでミニマムなデザインとか、カラーイヤーパッド(他社製)でカスタマイズできたりとか、非常に軽量であることとか魅力は多々あった。
PioneerDJからHDJ-CXというオンイヤー型のDJヘッドホンが発売されていて、サイズ感で言うとHD25と同じぐらい。プライスも確か同じぐらいだったかな。最後までどちらにするか迷ったが、まあPioneer製品については大体想像がつくので、ちょっと冒険してみたいという気持ちもあったと思う。
では、HD25の何がダメだったのか?
致命的だったのが「左と右が逆」問題。MK2もHD25もケーブルはシングルで片方のイヤーカップに接続されているのだけれど、Pioneerが左耳から生えているのに対して、HD25は右耳からケーブルが生えているのである。
スタジオでモニター用のヘッドホンとして使用するなら何も問題はなかったかも知れない。しかし、DJは片耳で現場の音を聞きながら、もう片方の耳で次の曲のモニターをするのである。そして私は左耳でしかヘッドホンモニターができない。
ヘッドホンを左右逆に装着する。という方法がある。YouTubeなどのDJの動画を見ると、確かにプロのHD25ユーザーの中にもヘッドホンの左右を逆に使用しているDJは一定数いるようだ。
右と左の音が逆から出ていたところで曲が逆再生されるわけでもなく、気にしなければプレイはできなくはないだろう。しかし、本来右から出る音が左から聞こえてくるというのは、やはり不自然だし、実際の出音とも異なるわけで、曲やシチュエーションによっては頭が混乱することになる。
私はヘッドホンは正しく装着して、右側のイヤーカップを外して、左のイヤーカップでモニターするという方式で使用していた。つまり外している方のイヤーカップにケーブルが生えているという状態。顔の前(あるいは首の後ろ)をケーブルが横切っている(通常ミキサーのヘッドホンジャックは左側にある)わけで、多少なりともストレスがあることは否めない。
第2に、イヤーカップが外れやすい、という難点がある。気がついたらカップが片方外れてブラブラしていたということが現場で2度あった。そこまで激しく踊りながらDJしているわけではないと思うのだけど、どうも扱いが雑なのかな。何にしても2度あることは3度あるだろうし、最悪の場合、本番中にコードが切れたり故障するリスクもある。
第3に、コンパクトに折り畳めない。という欠点。私は大きめのしっかりしたケースに入れて持ち運びしていたが、バッグの中でかなり場所を取る。この点ではPioneerの製品とは明確に差が出る。
これらの欠点を並べて判断するに、要するに、このヘッドホンは「DJのために作られたものではない」という結論に導かれる。スタジオ用なんだ。スタジオで使うなら、ケーブルが右から生えていても全く問題ないし、スタジオでカップが外れるようなヘッドホンの使い方はしないし、持ち運びだってしないからコンパクトに畳める必要がない。
これはメーカーも最初からDJ用と意図せずに開発していたわけだからしょうがない。スタジオ用のヘッドホンをDJの現場で使ってみたら、すごくよかったからDJが「勝手に」使うようになったのがHD25だと思う。
再度、HD25の魅力を羅列すれば、音と軽さ、装着感、シンプルなデザインのかっこよさ。ということになろう。音は確かにいいと思う。Pioneerとどっちがいいか?となると「好み」の話になるだろうが、少なくとも比べて「劣る」ということはない。クラブの大音量の中でもしっかり綺麗にモニターできる。
多少の使い勝手の悪さはある。理由は「DJ専用ではない」から。でもそのデザインのかっこよさも「DJ専用ではない」からかもなあ、と思ったりもする。
なので、それらの条件を天秤にかけて、可とするか不可とするかは、もうユーザーの好み次第、と、いうことになるだろう。
きのう、久しぶりに埃をかぶったMK2を取り出してきて自宅のブースで使ってみたら、あ、オレはやっぱりコッチだな。と確信した。ちょっと野暮ったいデザインも自分には似合ってるような気もするし、重さも、まあ「存在感」と解釈することにしよう。
とは言え、いつ壊れるかわからないアイテムを現場で使うのは怖いので、近くヘッドホンを新調しなくてはならないが、おそらくPioneerDJの製品の中から選ぶことになると思う。
そんなわけでDJの現場では使わなくなるゼンハイザーだが、メルカリに売り飛ばすような野暮なことはせずに、宅録やリスニングに活用しようと思っている。何せ音はいいし、付け心地も軽くて楽だしね。