身分差にときめくスウェーデンBL「ヤング・ロイヤルズ」
こんなはずじゃなかった。
こんなにハマるはずじゃ・・・。
※ストーリーの本筋に関わるネタバレはありません。
ヤング・ロイヤルズ
配信元:Netflix
配信日:(S1)2021年7月1日 / 全6話
(S2)2022年11月1日 / 全6話
出演:エドヴィン・ライディング、オマール・ルドバリ他
あらすじ:スウェーデン王室のヴィルヘルム王子は、ある日問題を起こしてしまい、ヒーレシュカ寄宿学校へ転入することとなる。
そこで出会ったのは、一般家庭出身の同級生、シーモンだった。
※Netflix Japanの公式YouTubeには予告が上がっていないため、NekoCapにて日本語字幕をつけてあります。
ポイントは”身分差”
noteタイトルやあらすじにもある通り、この作品の注目ポイントは2人の身分差にある。
片や王室生まれの王子様、片やごく普通の一般人。
間違っても交わるはずのなかった2人が、寄宿学校という閉鎖空間で出会い、関係を深めていく。
誰からも好かれる1軍の子とちょっとオタク気質で内気な子、という組み合わせの作品は多く、ヤング・ロイヤルズも一見するとそんな雰囲気に見える。
しかし実際のところは、カーストに悩む2人のあくまでも対等な関係性だ。
一国の王子様だって、中身はみんなと変わらない普通の高校生だし、貴族たちに紛れた一般人だって、家柄では負けても才能では負けない。
見た目も、立場も、性格も、何もかもがちぐはぐな2人だけど、だからこそ互いに惹かれていくのかもしれないね。
リアルの追求
王室(日本だと皇室)出身の友人や、家柄の良い子どもたちが集まる寄宿学校での学習経験がある人はそういないだろう。
表に出る大きな設定は決して”リアル”とは言えないが、実際にドラマを見ていくと、リアルへの追求がわかる。
中でも、ファンの間で反響が大きいのはメイクだ。
普通のドラマではファンデーションで肌をなるべく綺麗に見せるところだが、このドラマでは、あえて肌荒れを隠さない。
出演する俳優たちだって、ドラマに出てくるキャラクター達だって、人間なのだからにきびが出来る時もあるだろう。
そんな俳優のコンディションがそのまま投影されることで、キャラクターの立体感がより強まっている。
まだまだ未熟な高校生達の言動や行動がバタフライエフェクトとなって、良いことも悪いことも巻き起こしていく様子は、まさにどこにでもある”リアル”だと思う。
※ここから先は本筋とは関係ないネタバレを含むので、見たくない方は次の項までスキップ推奨。
私が最も驚いたのは、女の子の自慰シーン(未遂っちゃ未遂だけど)が挟まっていたこと。
この手の描写はやはり男性キャラクターがほとんどで、更に言うと、一番描かれがちなのは実はLGBTQに属するキャラ達。
ヘテロ男性の描写って女性との絡みが大半だし、性的指向に関わらず、私は女性キャラの自慰シーンが挟まってる作品を今まで見たことがなかった。
許嫁がいるものの、幼馴染でもあるヴィルに密かに憧れを持つフェリス。
憧れの彼のインスタを眺めながら手を伸ばすその姿は、生々しいほどのリアルが伝わってきた。
使用楽曲にも耳を傾けて
・オリジナル楽曲(OST)
各種サブスクでも公式配信中。
中でも一番印象が強いのは、「Harmony Theme」という主に各話のタイトル表示の際に使用されている楽曲だ。
どこか不安を煽られるような、少し暗く聞こえる曲だけれど、ヴィルとサイモンが背負うものの重さが伝わってくる。
・Elias - Revolution
これを聴く度に、ヴィルにとっての「革命」、シーモンにとっての「革命」は何なんだろうと考える。
この曲が流れるシーンでは、確かに「革命」が起きていたのかも。
・Omar Rudberg - Remember / It Takes A Fool To Remain Sane
主演の片割れを演じるオマールによるカバー2曲。
「Revolution」もそうだが、ここまで作品にぴったりな曲を探し出してきた制作陣が本当に凄い。
劇中での2曲の使用シーンは、ヴィルにとってかけがえのない瞬間だったろうし、上記動画の宣伝イベントでの生歌唱にもたくさんの物語が詰まっている。
注目の主演俳優・エドヴィン&オマール
ストーリー、演出、楽曲など、これまで制作陣の様々なこだわりや注目ポイントを書いてきたが、それらを見える形で届けるのは役者のつとめ。
キャストはオーディションで募集され、様々な個性を持つ役者達が揃えられた。
ヴィルヘルム王子を演じるエドヴィンは、6才の頃から役者をやってきた大ベテラン。
でも、撮影当時はまだヴィルと同じ高校生だった。
これまで培ってきた経験の多さと、実際のティーンが演じるリアルさの両方を兼ね備えているのが魅力だ。
まさに王子様のように美人でクールな見た目に反して、普段見せるやんちゃで甘えたな一面もヴィルと重なるものがある。
そんなエドヴィンの相手役・シーモンを演じるオマールは、この作品が初めての演技だ。
顔合わせの際に、台本を細かくチェックしメモを取るエドヴィンに反して、自分は演技指導も一切受けたことがなく、何をしていいのかまったくわからなかったとインタビューで答えていた。
しかし、彼もボーイバンドやアーティストとして長年活動してきている。
ルーツは違うものの、アイドル経験から来る魅せ方の上手さや持ち前の愛嬌、そして吸収力は随一。
私はオマールを見ていると、「この子は表現者になる為に生まれて来たんだろうな」と思う。
撮影外でも時たま仲良くしている姿が確認できるのは、この大インターネット時代に感謝だ。
まあ主にエドヴィンがオマールの強火オタクをしているだけのような気もするけど。
そんな2人の可愛いモーメントは有志の方がたくさんアップしてくれているので、是非チェックしてみて欲しい。
「私の物語」
ヴィルを演じたエドヴィンの元へ、一通のダイレクトメッセージが送られてきた。
その送り主は、本物の王室関係者。
「この物語は、私の物語だ」そう書かれていたとエドヴィンは語る。
その話を聞いて、はっとさせられた。
今まで脈々と受け継がれてきた王室、日本で言うと皇室の中で、自身の恋愛的指向や性的指向で悩んだ方がどれだけいたのだろうか。
王室出身というだけで、血を受け継ぐ使命が圧し掛かり、清廉潔白な善人であることを求められる。
その前に、彼らだって一人の人間なのに。
ドラマ内では同性愛自体がマイナスな問題として取り上げられているシーンは一切ないし、スウェーデンは2009年に同性婚が法制化されている。
それでも、だからといって王子が同性の恋人を堂々と公表できるかと言えば、それはまた別の問題だろう。
恋愛面だけでなく生活のすべてにおいて、王室出身者として求められる振る舞いと、どこにでもいるティーンエイジャーとしての感情や行動とのギャップで悩まされる。
これはきっと、メッセージを送った方だけでなく、今まで存在してきたロイヤルファミリーのすべてが経験してきたのだと思う。
そして、規模は違えど、私たちだって同じだ。
親や周りの人たちや世間が求める「私」と、本当に表現したい「私」との間には、誰だって差があるだろうし、今もなお悩み続けている人は多いだろう。
ヤング・ロイヤルズはそんな姿が描かれている「私の物語」だ。