僕は戦争を知らない(882文字)
戦争をテーマにした小説『同志少女よ、敵を撃て』を読んでいて、昨日はちょうど主人公の狙撃兵の少女が戦闘に巻き込まれたところを読んだ。
ちなみにこの主人公は戦争で戦う為に相当な訓練を積んでいて、狙撃兵としてもかなり優秀。
にも関わらず、敵軍の攻撃を受けた際に一瞬状況が理解出来ないでいた。
戦争についての文献を読んだり、戦争映画を観たり、テレビで戦争の特集を見た事はある。
昨年はロシアとウクライナの戦争が勃発して、民家にミサイルが撃ち込まれる動画も見た。
割れた窓ガラス、崩れた壁、泣き叫ぶ赤ん坊の泣き声…
見ていて恐怖を感じたし、辛くなった。
けどそれらの感情は結局のところ想像の範囲を超えることは出来ない。
目の前で仲間が殺されたり、
人間の身体がちぎれるのを目撃したり、
時には共に過ごした犬に爆弾を括り付けて敵に向かわせなければならなかったり、場合によっては自らその犬を撃たなければならない。
真っ直ぐに自分に向けられた銃口、
リアルな死の恐怖…
どんなに想像力を膨らませようとも、結局は想像でしかない。
僕は戦争を知らない。
そんな事を思いながら読んでいたらアニメ「スパイファミリー」のハンドラーのセリフが思い出された。テロリストと化した大学生達を捉え、問いただすシーン。
「戦争」とは、つまりそういう事なんだと思う。
僕は誰かを銃で撃った事もないし、目の前で大切な人が撃たれるのも殺されるのも見たことがない…
人の肉が焼かれる匂いを嗅いだ事もないし、そこら中に死体が転がっている所を歩いた事もない…
僕は戦争を知らない。
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