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サンタさんからの「Happy Birthday」 .

#わたしの旅行記
はじめて海外に行ったときの話

"サンタさんに会ってオーロラを見る" ことに決めたのは11月。行先はフィンランドのロヴァニエミ、出発は1月の誕生日。周りは私の急な決定に驚いた。場所にも。これまで海外に行ったことも、興味を持ったこともなかったのに、突然のロヴァニエミだったから。

私の地元は海外からとても遠い。外国人はESLの先生が1人いるくらいで、他に見たことがない。英語を勉強する意味も全く分からなかったし、英語の先生も話せないのでCDを使って授業をしていた。私は英語が嫌いだった。英語が好きで勉強しているのは、お金持ちで、東京ディズニーランドに遊びに行ける人間だけだと思っていた。(ディズニーくらいしか地元と海外を繋ぐものは無かった。)

大学も地元から通ったが、卒業する頃になると人脈も増え、行動範囲も広がり、少しずつ海外が近くなってきた。それで私はやっと英語の勉強を始めた。単語から。

社会人4年目の春、ついに行ってみようという気になって、友達を誘った。どの友達も最初は行く気だったけれど、計画を進めると断ってきた。一緒に行こうとしていたのは何処も名の知れた観光地(例えばグアムとかハワイとか)だったけれど、結局何処へも行けなかった。

そこでふと思った。「私は何処に行きたいんだったっけ?」

それでフィンランドのロヴァニエミになった。だって私は英語が話せなくて苦手で、ひとりで海外に行くのが不安だったから、友達が行きたいであろうグアムやらを選んだ。本当に行きたいところはそこじゃない。

決めてからは忙しかった。調べると、ツアーは高くて買えない。飛行機とホテルだけ予約して、オーロラは現地ツアーに参加することにした。ここでも日本語のツアーが高すぎて買えないので、英語のツアーを予約。こうなると英語を話すしかない。CD付の旅行英会話本を買って、営業車を運転しながら死ぬ気で喋った。人間、追い詰められたときの記憶力は計り知れない。私は1ヵ月で本当に1冊丸暗記した。

その頃していた仕事は日曜日しか休みがなく、新婚旅行でも4連休が過去最長記録だった。フィンランド、往復するだけで3日かかってしまう。私は最長記録を5連休に更新した。面白がってOKを出してくれたみんなには感謝している。

そうして私は25歳の誕生日に出発した。はじめて長時間飛行機に乗って、はじめて飛行機を乗り換えて、はじめて英語で会話をした。

2日目に北極圏を越えサンタクロースに会い、覚えたての英語で昨日が自分の誕生日だったことを伝えると、サンタさんから「Happy Birthday」がもらえた。サインも。サンタさんは本物だった。よくイベントにいる、外国人であれば誰でもなれるサンタではなくて、本当に本物のサンタクロースだった。

上のラインを越えると北極圏

ここからクリスマスにサンタさんから手紙が届くように申し込むこともできる。言語は英語かフィンランド語。私は自分用に英語、友達へフィンランド語で申し込んだ。読めなくても、その方が本物っぽいと思ったから。

世界中からサンタさん宛の手紙も届く

夜はオーロラを見に行った。外はマイナス30℃くらいで、外に出るのは5分が限界。小さな小屋のようなところで珈琲を飲んだりお菓子を食べたりしながらオーロラを待った。肉眼で見えるような大きいものは見られなかったけれど、カメラで撮った写真にうっすらと緑色が写った。

オーロラ観測の休憩小屋

現地滞在は2泊3日、北欧に行くには短いけれど、それでも私はとても楽しかった。短くも感じなかった。長くも。図書館に行って、博物館に行って、カフェに行って、スーパーマーケットでお惣菜を買う。レストランでトナカイを食べて、生まれてはじめて甘い緑茶を飲む。あとから見ると街の中のごく狭い範囲だったのだけれど、私にとっては大冒険で、沢山のことをした気分だった。

トナカイの肉!!

友達に断られて決まった私のはじめての海外旅行は、
"はじめての海外旅行、1人で北極圏に行ってサンタクロースに会ってきた。"
という印象に残りやすいものに偶然なり、フィンランドに行った翌々年、私はこれをTOEICのスコア代わりに外資系企業に転職した。

周りに海外経験のある人がいなくても、英語が話せなくても、飛行機を予約してしまえば旅行は始まる。始まれば何とかなる(する)ので、気になるなら行ってみたらいいと思う。何処へでも。現地での色々も、出会いも、トラブルも、帰ってきたら経験と思い出と笑い話になる。

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