2020/03/24 新生音楽(シンライブ)第1回 高野寛×原田郁子
各地で様々な催しが延期や中止となっているのは相変わらずで、主催者や出演者には死活問題だと思う。そんな中、従来とは異なる形で仕事ができないかと模索して実験的に始まったのが、今回の《新生音楽 シンライブ》だ。
みんなライブが大好き、でもライブに行けない、そんな2020に、ただの配信じゃない、映像美とリアルな音で、目と耳が喜ぶ、新たな音楽体験をお届けします。
――高野寛
出演者がライブをする。観客がそれに対価を払い(今回は投げ銭式でした)、物販でグッズを買う。
これまでライブ会場で当たり前にしてきたことを土台にして、出演者とスタッフに収益がでるように新たなライブをする。その一つの形だ。
アットホームな(カフェっぽい)雰囲気のレコーディングスタジオが会場。
開場してから開演までは物販を買ったり、BGMを楽しみつつのんびり待つ。
そして、緩やかにライブが始まる。
離れてはいるけれど、「いつも」の感じ。
開始前、しきりに高野さんがヘッドホンを勧めていたのは、会場がレコーディングスタジオだからこそいい音で届けられる、このスタイルだからできることをしたいという意図があったから。
物販のTシャツがシルクスクリーンで手刷りされてる。これはグッズの在庫を抱えない狙いがある。
そういう工夫が随所にあった。
そもそも高野さんが事前の告知をあんなにしたのも珍しい。
今夜のライブは1週間(3月31日まで)アーカイブが公開される。物販も継続される。
高野さんのライブではグッズが通販されることはほとんどないし、誰もがいつもライブに行けるわけではないから、普段行きたくても行けない人がライブを楽しめる機会になったと思う。
ライブ自体は1時間。
高野さんと郁子さんの曲や共作のものでセットリストは構成される。知っている曲も、ふたりで演奏するものを聴くと新鮮で、2月のキチムでのライブを観た友人がとてもよかったと話していたのがよく分かる。
もちろんちょっとしたハプニングもあるけれど、それもライブだからこそだと思う。
アンコールで「今歌うべきだと思った」という高野さんの言葉で始まった「hibiki」には驚いた。でも、懐かしい歌と再び意味をもって再会できるのは嬉しかった。
個人的には「もう、いいかい」がよかった。曲に凄く郁子さんのピアノが合っていて、とても好きだ。(後日音源の販売もあるそうなので楽しみです。)
いつものライブの後だと、友達とおいしいものを食べたり飲んだりしながらライブの感想を話して、「本日の一曲」を共有したりする。それもまた楽しい時間だ。
ライブ中も、曲を聴きつつ友人たちのつぶやきを追う。それも楽しかった。終演後も、あれこれ寄り道しながら話をした。今まで当たり前にしていたことだけれど、すごく久々のような気がした。その話の中で、ひとりが「今日はみんなが最前列でしたね」と言ったのが印象的だった。
「いつも」を取り戻すことがいちばんなのだけれど、「今」と向き合うことが必要だ。自分の大好きなミュージシャンが新たな挑戦するのであれば、ファンができることがともに音楽を楽しみ、応援することだろう。そういうしなやかさは忘れずにいたい。
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《2020/03/24 補記》
投げ銭の窓口が複数あったのはありがたかった。ライブが始まって早々、YouTubeの画面には投げ銭の金額がいわゆる「弾幕」のように表示されているのを見て、抵抗を感じてしまったからだ。それぞれが自分の予算の中で行えばいいのだけれど、金額が可視化されるとなんだか躊躇してしまう。それで、高野さんのnoteのサポート機能を使った。
なお、高野さんとプロデューサーの石原淳平さんのそれぞれの思いはこちらに。