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2020/01/23 16年前の確かな光
思い出したのは、16年前の早朝のこと。当時、周りの方がよくしてくださることでなんとか続けられていた、しょうもない大学院生のわたしは、提出当日の朝、ようやく修士論文を書き上げた。そこで、書き上げるまで聴かずにとっておいた高野寛『確かな光』(渋谷タワレコのイベントチケット付)を聴いた。このCDは忙しい仕事の合間を縫って東の地に住むKくんが送ってくれたものだ。1曲目のタイトル曲のイントロで胸が詰まり、サビでは涙が出た。
寝ぼけまなこを覚まして 上着着たら出かけなくちゃ
もう寝ぼけていられない 新しい朝が来るから
天気予報がどうだろうと 突然の雨が降ろうと
関係がないのさ 関係がないのさ
風が吹いて眠くなって 芝生の上横になって
目を閉じてもまぶたに 赤い色の光があって
このまぶしい日差しの中で たわいもない笑いの中で
あの頃と変わらない あの頃と変わらない
それだけでまた今日も 光が差して
それだけでまた今日も 息を吸い込んで
それだけでまた今日も
――高野寛「確かな光」
2004年1月23日、場所は梅田ロイヤルホース。新譜『確かな光』発売記念のツアー。ギターを弾く高野さんの歌を聴きながら、ここでも涙が出た。2003年夏以降の色々が脳裡に浮かんでは消える。自分ではどうしようもない出来事と感情に翻弄された半年。この歌の中には、泣いて立ち止まり後悔した半年とそこから歩き出すための言葉が詰まっているように思えて、わたしにとってはとても大切な一曲になった。この歌にどれだけ救われただろうか。
時々歌は祈りだと、思うことがある。「確かな光」は限りなく純粋な失われたものへの祈りの歌だ。歌うことで、祈る者はまた立ち上がり、日々を生きる。
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