本居宣長の「好信楽」
シャボン玉石けんという会社が
福岡にある。
一時期大儲けした合成洗剤が
肌荒れの元凶だったと知るや、
過労で倒れた折に入院先のベッドで
一念発起。
退院後に合成洗剤を止める宣言をし、
無添加の石けん一本に絞り込んだ。
その結果、売上が10分の1になって
しまい、多くの古参の社員が去り、
会社はいつ潰れてもおかしくない
状態にまで落ち込む。
それでも信念を貫き、
無添加石けんの販売を継続。
資金に窮した折に、社長が自ら筆を
執って『自然流「せっけん」読本』
という本を出版。
天も味方したのか、これが異例の
ベストセラーとなって、会社は
驚異の復活を遂げたのだった。
この時の社長は既に世を去り、
息子さんが会社を引き継いでいる。
その息子さん、森田隼人社長が、
父親の言葉の中で一番影響を受けた
と語っているのが、タイトルに
掲げた「好信楽」である。
これは、江戸時代の国学者である
本居宣長の言葉であり、
彼の学問に対するスタンスだ。
元々は三重県松坂で医者を営み、
ほとんど趣味で始めた古事記研究が
いつしか当代随一の高みに達した
宣長らしい言葉だと感じられる。
『致知』8月号で森田社長が述べて
いらっしゃる説明をそのまま引用
すると以下の通り。
本居宣長記念館のサイトにある
説明では、こんな感じで非常に
シンプル。
「好きこそものの上手なれ」
ということわざもある。
また、『論語』には、
「これを知る者はこれを好む者に
如かず。これを好む者はこれを
楽しむ者に如かず。」
ともある。
何かを成し遂げるためには、
それを好きになり、
それを信じ切り、
それを楽しむことが重要。
翻って、自分は最近、仕事にせよ
遊びにせよ、この「好信楽」の
精神がしっかり根付いているか、
ふと気になり始めた。
好きなことに、なりふり構わず
取り組めているだろうか?
対象に確信を持ってのめり込む
ような関わり方が出来ているか?
そして、すべての出来事を、
心の底から楽しむことができて
いるだろうか?
この「好信楽」の精神で、
仕事も遊びもバリバリこなして
いきたいものである。
ちなみに、シャボン玉石けんの
森田光徳・前社長には、
そのものズバリ『好信楽』という
名の著書がある。
余程この考え方がしっくりきたのに
違いない。
人生を充実させる「好信楽」。
常に頭の中に常駐させておきたい
言葉として、大切にしたい。