政治に翻弄される経済
ユニクロを展開するファーストリテイリングが、
ロシアでの営業を継続すると発表してから
まだわずかな日数しか経っていない。
今日のニュースで、結局ロシア事業を一時停止
するというのを見て、残念ながら
「あー、やっぱり」
という思いが隠せなかった。
中国のウイグル自治区に関しても、
ユニクロが昨年叩かれていたのは
記憶に新しい。
これがあったので、今回の件も必ずや
メディアに叩かれるだろうなぁと
すぐに連想したのである。
案の定、恐らくは非難が殺到したのだろう。
朝令暮改とまでは言わないが、
かなり早期に今回の経営判断の修正を
迫られたと言ってよいだろう。
記事にある通り、今回のウクライナ侵攻を
受けて、ユニクロは日本企業として最大規模
の1000万ドル(約11億5000万円)の寄付と、
毛布やインナー、防寒着といった衣料品
計20万点の提供を発表している。
ロシア住民も同じ人間、市井の人たちの
生活を支えるのは衣料品の企業としての
務め、そういう理念的なところも確かに
立派なことだ。
だからこそ、
「やるべきことはやっている」
「現実と理想のバランスをうまく取った」
というような感覚が、経営層にあったの
かもしれない。
ところがどっこい、今の世界情勢においては
この判断が思いっきり裏目に出てしまった。
今回のロシアによるウクライナ侵攻は、
勿論許されるものではない。
ただ、西側のメディアはまるで報道管制が
敷かれているかのように、ロシア=巨悪と
いう一面的・一方的な構図でのみ報道される
ので、100%鵜呑みにしてよいものか、逆に
不安になる。
日本がABCD包囲網にやられ、ハル・ノートで
追い詰められて、真珠湾攻撃へと誘導された
ように、今回のロシアによる侵攻も、西側に
よる挑発などの行為が一切なかったかと言えば
それはないだろう。
そんなことを踏まえると、ユニクロが
ロシア事業を継続しようとした経営判断は、
非常に冷静かつバランスの取れたものだった
可能性も高いのでは?
そんな思いが頭をよぎる。
とはいえ、人類社会に対して、人道的に
許されざる暴挙に出た国を許すかのような
経営判断は、やはり望ましからざること。
ロシアのことも、中国のことも、速やかに
社会との歩調を合わせるべきだった。
目の前の儲け、経済的な観点を重んじた
ばかりに、政治的な観点から非難を受けて、
結局経済的な痛手を被る。
最初から政治的な観点で安全策を取って
おけば、経済的には軽傷で済んだはず。
極めて難しい判断だとは思うが、
社会にとってよりよい選択肢はどちらか、
そういう観点から経営判断をしていく
ことが重要なのだろう。
そして、社会にとってよりよい選択肢だ
と信じて下した決断が、実際に社会に
とって有益だったか否かを常に確かめ
ながら前へ進めばよい、そう考える。