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「三方よし」より「四方よし」

3日前に、伊那食品工業の最高顧問
である、塚越寛さんの著書を簡単に
紹介した。

Facebookの方にこの noteの記事をシェア
しているのだが、そこで若き友人から
付いたコメントが、
「四方よしがとても心に残っている」
という内容。
私自身、全くの同感である。
先般紹介した際は、中身の紹介をあえて
さらっと済ませてしまい、この
「四方よし」も端折ってしまったので、
もう少し詳しく書いておこうと思う。

まずはその「四方よし」について。
近江商人の「三方よし」は、ご存知の方が
多いだろう。

売り手よし
買い手よし
世間よし

というのが「三方よし」であり、
近江商人はこれに忠実に商売を行った
から栄えた、という風に言われる。
マーケティングの基本は、いかに
お客様のためになることをするか、
そのニーズに応えられるか、という
点にあるわけで、買い手が満足する
ことなしに長期継続的なビジネスは
成り立たない。

かといって、売り手である自分も
適正な利益を得ないことには、商売が
潰れてしまい、そもそもお客様のため
にならないから、買い手も満足する
必要がある。

そして、売り買いが2者間で成立して
よしよし、で終わらせるのでは無く、
ちゃんと世間様のことも考えよう、
今風に言えばCSRとか、企業の社会的
責任も考えようぜ、というのが、
近江商人の慧眼である。

塚越さんは、そこに何を付け加えて
「四方よし」としているか。
それは、「将来もよし」である。
二宮尊徳の「遠きをはかりて・・」を
踏まえ、将来にとっても良いかという
基準を付け加えたというのだ。

この「四方よし」に限らないのだが、
塚越さんは、誰が聞いても分かる
極めて平易な言葉で、社員が寄って
立つべき指針、意思決定の基準とでも
言うべきものを定めていらっしゃる。

平易であるからといって、それが
有効でないとか、すぐに役に立たなく
なりそうなどということは決してなく、
若い頃から様々な苦労をされて、自分
なりの哲学を打ち立てながら経営を
されてきた方ならではの味わい、
含蓄が感じられるのだ。

「年輪経営」というのが同書のテーマ
となっているのだが、これは
「絶えず成長し続ける」ことの比喩
として、年輪が一回り、また一回りと
大きくなっていくことになぞらえて
いる。

このことを、別の言葉で
「自転車遅乗り競争」
と表現されていて、なるほど!と
これまた膝を打ったのだった。
ハイスピードで漕ぐのではない、
あえてゆっくりと、着実に、マイ
ペースで漕ぐ。
身の丈に合ったスピードで行く。

実のところ、自転車を遅乗りする
のは難しいだろう。
ボディバランスをしっかり取れる
体力、筋力がないと、あえて
ゆっくり進むことはかえって難易
度が高いはずである。
経営にも、同じことが当てはまるか
どうかは正直分からないが、きっと
当てはまるのだろう。

勢い込んで、売り過ぎた、作り過ぎた
とやる経営は、その時はスピードに
乗っているからかえって楽であり、
残念ながら後から強烈なしっぺ返し
が待っていた、となりやすい。
そういう見通しを踏まえての、
「年輪経営」なのである。

他にも、
・目的はブレてはならないが、
 目標は変えてよい
・No.1よりも一流を目指す
・新入社員研修で100年カレンダーを
 使い人生の短さを悟らせる
・性善説の経営でストレスなし、
 コストも低減
・真の株主はその会社の応援団
・自社の経費は他社の売上
・環境整備は物言わぬ営業マン
・経営とは「時代適応業」
といった、良き教えの詰まった本で
あった。
折に触れ、読み返したい。

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ahiraga
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。