EVERYDAY EVERYBODY PPP
「お、卓球台や」
「ほんまや」
「やる?」
「え、卓球できんの?」
「アホなこといいなや、オレ中学んとき卓球部」
「お、ならちょうどええかも。アタシも昔やっててん」
「ホンマか?全然知らんかった」
「そらそうやろ。「暇やな、卓球でもやろかー」って一緒に住んでたってなかなかならへんよ。そもそも街中でこんな風に卓球台置いてることないもんな」
「ほんまやなぁ」
「あ、ちゃんとペンもシェイクも両方置いてくれてはるな」
「A子はどっち使うん?」
「両方いけるけどな、どっちか言うたらペンの方が好きかな」
「ならペン使ってくれてええよ。オレはシェイク派やから」
「ほないくで」
ピンポーン!
「うわ!いきなりカットかけてくんなや!」
「えへへ」
「えげつないのう」
「ほんなら打ち返しやすいサーブしたるわ」
「待て待て、そんな簡単に手加減されたくない。オレにも元卓球部の意地がある、一番ええサーブ打ってこんかい」
「ほんならいくで」
ピンポーン!
「なんやねん、その球!なんでそんなごっつい曲がり方すんねん!」
「あんたほんまに卓球部やったんか?全然ついてこれへんけど」
「ちょっと待ってくれ。このな、この部分あるやろ?この部分にさえ打ち込んでくれたらどんだけ変化かけてくれてもかまへんから。そやからもっかい本気のサーブ打ってみて」
「しゃあないなぁ、いい歳して意地になってるんやろ」
「まぁ見とけ、オレの華麗なリターン見せたるさかい」
「じゃあいくで」
ピンポーン!
「早っ!めっさ早っ」
「ちゃんとあんたの言うてた場所に打ったったやん」
「取れるかいな、あんな早い球!素手でツバメ捕まえる人たちくらい動体視力高ないと見えへんやろ」
「ていうかそんな人たちおらんやろ」
「知らんけど」
「知らんのかい」
「ひいばあ!ひいじい!」
「おー、まぁちゃんか」
「二人で何してんの?」
「見たら分かるやろ、ピンポンや」
「ピンポン?」
「卓球とも言うけどな」
「ふーん、それおもろいの?」
「おもろいで~、まぁちゃんもやってみる?」
「うん」
「そしたらひいばあと一緒にやってみよか?ひいじいが相手な」
「あ、もう握ってるやん、ラケット」
「まぁちゃんそれ持っててな。今ひいばあが後ろから一緒に球打ったるさかい」
「よーし、まぁちゃん来い」
「ほないくでー」
ピンポーン!
「なんでドライブかけんねん!というよりまぁちゃん初めてラケット握ったんちゃうんか?えげつないドライブサーブ打つ子やわぁ」
「まぁちゃんひいばあに似てサーブ上手いなぁ。センスあるわ」
「はよ続きやろ~」
「よしよし、今度はひいじいがサーブ打ったるわ」
「まぁちゃんひいじいに頑張れ~言うたって」
「ひいじい頑張れ~」
「二人ともひいじい舐めんなよー、返せるもんなら返してみい!」
「おーやっとるな、年齢差80歳の勝負やな」
「あー、おじいちゃん」
「おー、来たんか」
「まぁちゃん迎えにいく約束してたからな」
「そういえばタカシ卓球やってたよな、少年クラブで」
「ずいぶん昔の話やで。オレ親父もお袋も卓球やるなんて知らんかったなぁ。よう動けるな、その歳で」
「昔取った杵柄やな」
「そやけど同じ家族でお互い卓球やれるなんて今日まで知らんかったもんな」
「誰が置いてくれたか分からんけど、商店街の真ん中に卓球台置くとかおもろいこと考える人おるんやなあ」
「この前な、ここ通ったら昔の同級たちが卓球やってたんやんか。全員還暦越えやで。マジかぁ思てついやってもうたわ。60年ぶりやったんちゃうかなぁ、皆んなと一緒に球打ったん」
「ほんならあの子もおった?ほら、よぉタカシのこと泣かしてたヤツおったやろ、卓球クラブに。体大きかった子」
「あぁ、ケンちゃんね。おらんかった。他の仲間に聞いたら今はアフリカにおるらしい」
「アフリカ?アフリカで何してんの?」
「よう知らんけどダイアモンド掘ってるとか言うてたな」
「えげつないなぁ」
「ともかく楽しかったわ、久しぶりにぎょうさん同級生たちと会えて。一時間くらいタバコ吸わんかったけど全く気にならんかったもんなぁ」
「ほんまかいな、信じられへんな」
「タカシいうたらヘビースモーカーの幕の内弁当みたいなもんやけどなぁ」
「なんやねんそれ」
「しかしあれやな、卓球台一つでひ孫と遊べたり久しぶりの友だちと集まれたり、家族の知らん一面見れたりなかなかどうして奥深いもんやな」
「ねぇ、ひいじい早よ続きやろー」
「おう、ほんならまぁちゃんにひいじいの必殺サーブ見せたろか~」
「あんた張り切んのええけどまたいつぞやみたいに腰痛めんで」
「心配しなや。そうならんためにラケットも腰もシェイクシェイクや~」
「90になっても相変わらずやな、あんたのお父さんは」
「オレも近い将来ああなりそうで怖いわ」
「そんときはアタシがペンラケットでオシリペンペンしたげるさかい」
「なんやかんやで似たもん同士やな、親父もお袋も」
ピンポーン!
「まぁちゃんのサービスリターンえげつないわ~!」