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PingPong of Liberty

「自由にやりなさい」その言葉は時々呪いのようで、自分の無力さに打ちひしがれる。
昨年、ポーラ美術財団の助成で1年間中国に滞在した。中国ほど想像で語られる国はない。日本人から最も近く、最も遠い国である。


これらの写真は景徳鎮に滞在した時の記録である。
色とりどりの洗濯物があらゆる「すこしだけ地面より上」な場所に吊るされて日光浴をしていた。自身の両端を駆け抜ける巨大な壺よりもこれらの印象が強かった。なんて自由なのだ。

卓球台はないけれど、人々は陽気で楽器を演奏したり将棋をしたり。昼寝して喧嘩して騒いで、鳥を捌いたり地面で蟹が潰れていたり。やりたいことをやる。とっても「自由」に外にはみ出ている。ここで感じる自由って何なのだろう。私たちは幼い頃に「ルール」を教え込まれ、ある程度の歳になるといきなり「個性」などと怪奇なものを求められる。結局自分探しに疲れて他人に人と同じくあれという態度を求める大人になる。

中国で学んだことは、はみ出す勇気を持て、だ。自由とは勇気である。
近所に突如できた卓球台にはこどもやおばちゃんもおじちゃんも、はみ出す勇気を持って近づいてくる。そして同時に必要なのは自身の好奇心を赦す勇気を持つことでもある、と自分にも言い聞かせる。見ているだけでもいい。そこで何が起こるのかを見届ける地蔵になる自由もある。

この卓球台が商店街から境界線をはみ出る時、私たちはきっと少しだけ自由を赦し、もっと地球での遊びが上手になる。


寄稿者  ウチダリナ
1990年東京生まれ。美術家。東京藝術大学大学院工芸専攻修了。GAP0期にグローバル実験体として参加。京島に住居とアトリエを構える。
instagram https://www.instagram.com/lina.uchida/
HP linauchida.com


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