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「12歳の恋愛カウンセラー」第3話

第3話「色恋営業」

●相談者シンジのストーリーへ
シンジの自宅のワンルームマンションにて
シンジ、仕事終わりのスーツ姿で心愛にメールを返信する。

※メールの文章とともに、マッサージ店員に惚れるシンジの姿が描かれる。

『はい。

ちょうど仕事で責任のある立場になり、慣れない仕事で心身ともにすり減っているところでした。
仕事帰りにへとへとで歩いていると、ふとマッサージの看板が目に入ったんです。

普段の私は倹約家で、贅沢をしないたちですが
仕事を頑張った自分へのご褒美としてマッサージしてもらおうと思いました。
誰かに自分を労ってほしかった私は、若干の期待もしつつ吸い込まれるようにそのマッサージ店に入っていきました。

ユキ(ユキはメンズエステ用の名前で本名はゆか)
「こんにちは。担当しますユキです。
 よろしくお願いします!」

シンジ
「はっはい、よろしくお願いします(美人だ…)」

担当してくれたセラピストのユキさんは、予想外にかわいくてマッサージ中ずっとドキドキしていました。
仕事の話をすると、「すごい!」と褒めてくれて、体だけでなく心も癒されていくのが分かりました。
それからというもの、仕事中はずっとユキさんのことが頭に浮かぶようになりました。
気づいたら完全にユキさんのことが好きになってしまいました』

心愛、メールを読みながら
「惚れっぽいやつだな。
 でも、強い恋愛感情を抱くかは相手じゃなくて自分の精神状態で決まる。
 仕事で大きなストレスを抱えているときは心が癒しを求める。
 このタイミングで恋に落ちたのは偶然ではなく必然…」

少女漫画を読みながら、メールの返信をする心愛
『仲良くなるための定石は、共通の話題を作ることです。
 二人の共通の趣味はありますか?』

シンジ
『そういえば、以前同じアーティストが好きでその話で盛り上がりました。』

心愛
『では、次マッサージに行ったときにライブのチケットを2枚もってるからと誘ってみてはどうでしょうか。
 あくまでも、たまたま2枚持ってる体にしてください。
 わざわざ買うのは引かれる可能性が高いので』

シンジ
『なるほど、分かりました!』

シンジ
「(でも、あのアーテイストのライブはプレミアで、
 1枚数万円するんだよな……。
 でも、ユキさんのため。先生も言ってるし…)」

・・・・

一方でセラピストゆかにメールを送る心愛
『ゆかさんへ。
 具体的には、お客さんの男の心をつかんで
 お金を落とさせることです。
 そうすれば必ずリピート客になってくれます。』

●後日、シンジはメンズエステに訪れる。

マンションの一室にて
ゆかは、シンジのマッサージ施術をしている。

ゆか
「えっ!あのライブのチケットもってるんですか!!
 いってみたいです!
 …ちょっとあとでスケジュール確認してみますね」

施術する部屋とは別の廊下にて、
マッサージのスキマ時間に心愛にメールを送るゆか
『いま、たまに来てくれるお客さんから
 コンサートのLIVEのお誘いがきました。

 悪い人ではないんですが、あんまり外で会うのは気が進みません。
 どうすればいいでしょうか?』

心愛、ゆかの客がシンジであることを確信する。
「そういうことか…。
 …ばかな男。
 メンズエステの客と外で会いたいわけないだろ……。
 お前と会うコンサートの3時間で、3万円は稼げるんだから」

心愛、悪い顔をする
『チケットだけ貰って、転売しましょう。
 当日は、風邪でドタキャンすればOKです。
 連絡先はSNSの捨てアカウントにしてくださいね。』

心愛
「さて。
 この調子じゃいくらでも搾り取れるだろうが、流石にそれは可哀そうか…。一応私のクライアントだし。
 
 でも、言葉でいっても分からない。
 一度痛い目を見ないと…これも愛のムチ。許してくれ」

●マッサージの施術

マッサージがお終わり、見送りの時間。
マンション一室の玄関にて

シンジ、すごく嬉しそうにしている。
「スケジュール空いててよかった!
 当日は楽しみにしてるね!」

ゆか、愛想笑いで手を振り見送る。

・・・・

●後日
ライブ当日
ゆかさんからシンジに連絡がある。
『ごめんなさい💦
 風邪ひいちゃって、今日は難しそうです』

シンジ、めちゃくちゃ落ち込む
「えーーーー!!ガーン!」

シンジ、メッセージの返信をする。
『そうなんだ!風邪なら仕方ないよ!お大事ね💦』

心愛のメールを主出すゆか
『ドタキャンの連絡以外は連絡をしないで大丈夫です。
 相手は必ずまた店にくるので、何事もなかったように対応してください』

・・・・

シンジは連絡がないことにしびれを切らして追いメッセージをしてしまう。
『調子どう?? 何かあったら言ってね。心配してるよ💦』

●シンジの会社にて
シンジの上司
「……井上くん?
 聞いてるか?」

シンジ、仕事中もユキのことを考えてしまい仕事が手につかない。
上司
「ここ間違えるじゃないか。
 先方、怒ってるぞ!!」

シンジ
「えっ、はっはい!
 スミマセン!!すぐに直します」

・・・・

シンジ、メンズエステ店舗のwebサイトを見ながら
「もう1週間もゆかさんから返信がない……。
 次、いつ会えるんだろう…。
 ……あれ?お店に出勤してる」

●メンズエステのマンションにて
再びメンズエステに訪れるシンジ

ゆか、にこやかに
「あっ!シンジさん、来てくれてありがとう!

シンジ
「う、うん。
 風邪は治ったの?」

ゆか
「あ、心配かけてごめんね!
 やっと治ったところだよ」

シンジ、少し悲しそうな顔をする
「(あれ、それだけ?)
 そっか…、それなら良かったけど……」

ゆか
「ライブ一緒にいけなくて、残念だったな」

シンジ、顔が明るくなる
「また行こうよ!」

ゆか、心愛のメールを思い出す
『もうすぐ誕生日だけど、何も予定がないといってみてください。
 必ず食事に誘われるはずです。
 そこで、誕生日プレゼントをお願いします。』

・・・・

●マッサージの施術中。
シンジ
「えっもうすぐ誕生日なの!?
 ……何にも予定がないなら、よかったらご飯でもいかない?
 いい感じのレストラン、予約するよ」

『誕生日プレゼントを頼むコツは、直接言わないことです。
 相手から言わせるんです。
 例えば……』

ゆか、嬉しそうに
「えっ、いいの。
 嬉しい!」

シンジ
「喜んでくれてよかったよ。
 誕生日は一緒に過ごそうね!」

ゆか
「うん!
 でも……」

シンジ
「どうしたの?」

ゆか
「私、誕生日にすごく思い入れがあって…。
 学生の頃はいつも両親にブランド物のバッグを買ってもらってたの。
 だから、そういう特別な日にしたいっていうか…。
 だから、大学を卒業してから男の人と誕生日をすごしたことなくって」

シンジ、ちょっと引く。
「……そ、そうなんだ。」

ゆか
「はじめて、男の人と誕生日を一緒に過ごすことになるかも……」

シンジ
「ちなみに、どんなバッグが欲しいとかあるの?」

ゆか
「エルメスのバーキン…」

シンジ
「エ、エルメス…」

ゆか
「でもね、一番安いやつでいいの」

シンジ
「そ、そっかちょっと調べておくね。
 (バーキンっていくらするんだろ……)」

・・・・

ゆか
「今日は来てくれてありがとう~」

ドアを閉めるゆか。
ガチャリとドアのカギを閉める。

ドアの外にカギを閉める音が響く。
シンジ
「……」

●シンジの家
心愛にメールを送るシンジ
『今度、セラピストのユキさんの誕生日に食事に行くことが決まりました。
 男の人と誕生日を過ごしたことがないみたいで、私の思ったとおりとても清純な女性です。
 このタイミングで、ユキさんに告白してみようと思います。
 誕生日を空けておいてくれてるので、脈ありなんじゃないかと思うのですが…。
 
 あと、ユキさんはエルメスのバーキンが欲しいそうです。
 調べると100万円以上して、流石に無理なのですが、ココア先生はどう思いますか?」

心愛、メールを読みながら
「ただのマッサージ店員がバーキンのバッグねだるわけねーだろ。バカ。
 何が脈ありだ、だからバカは一度痛い目みないと治らないんだ…」

心愛、真顔でメールを送る。
『本気で相手のことを考えているなら、
 買ってあげるべきです。』

シンジ、心愛のメールを読んで覚悟を決める。

シンジ
「そうだよな、
よし!」

●後日(ゆかの嘘の誕生日)、高級レストランにて

シンジ
「これ……欲しいっていってたヤツ」

ゆか
「え…ウソ…!
 シンジさん、ありがとう」

ゆか、プレゼントをもらって泣くそぶりをみせる。

シンジ、その様子を見て満足げな顔をする。
「はは。そんな、泣かないでよ。」

・・・・

レストランから出る二人。
ゆか
「食事もありがとう、すごく美味しかった」

シンジ
「いえいえ、あの…話したいことがあるんだ。
 ちょっと歩こう」

プルルッ!
ゆかの電話が鳴る。

ゆか
「うん……あ、ちょっと電話に出るね」

ゆか、わざとスマホの電話の音量をMAXにする。

心愛がボイスチェンジャーを使って大人の声で電話をしている。
『ユキさんですか?
 お父様を担当している看護師の佐藤です。
 お父様の体調が急変したので、いますぐ病院にきていただけますか?』

ゆか、慌てるそぶりを見せる
「えっお父さんが!?
 わ、分かりました!」

シンジ
「だ、大丈夫!?」

ゆか
「ごめんなさい、お父さんが危ないからいますぐ病院にきてくれって…」

タクシーを呼ぶゆか。

シンジ
「えっ!?わ、わかった」

ゆか
「ごめんね!!」
タクシーで去っていく。

シンジ、唖然としてタクシーを見つめる。
「……」

タクシー車内で。

心愛
『ゆかさん、お疲れさまでした。
 それではこれを機に今後一切メンズエステには関わらないでください。
 次は幸せな恋愛のためのステップをお伝えします。』

#創作大賞2023

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