高校野球7回制について

前提事項

高校野球における当事者とは選手や指導者だけを指すのではない。
審判や観客、メディアや球場運営など、全ての人間が当事者である。

本来高校野球は部活動であり、活動を行う生徒の意見が尊重されるべきである。
ただ高校野球においては上記の通り当事者の範囲が通常の部活動の域を超えており、実行においてはそのすべての当事者について考えることが必要である。

周知のように現代日本の夏の暑さは命に関わるレベルである。
こういった状況において「現場の気持ち」(ここでいう現場とは選手、指導者のこと)の一点においてその他の当事者の命を危険に晒すことは容認されるべきでない。

また最終的な目標は暑さによる健康リスクの低減であり、試合時間の短縮はその目標に対する方策の一つに過ぎない。
7回制もその一環である。(ちなみに7回である理由は恐らくU18カテゴリの国際大会において7回制が採用されているから)


賛成意見

①日程の緩和

7回制にすることで1日の試合数を増やすことが可能になる。
現行の9回制なら1日4試合で36イニングのところ、7回制なら4試合で28イニング、5試合やっても35イニングとなる。
1日5試合やるとすると1回戦2回戦の計33試合の開催期間は現状の9日間から7日間に短縮される。
この分を休養日兼雨天順延時の予備日として設けることが可能になる。

また4試合開催にするにしても、暑い時間を避けやすくなる。

②球数制限

単純にイニング数が少なくなるため1試合当たりの投球数も減少する。
これにより現行の球数制限(1週間で500球以内)に引っかかる可能性が低下し、投手数の少ない学校にも勝ち上がりのチャンスが生まれると考えられる。

反対意見

①試合数の増加

7回制導入
→練習試合にも採用される。
→1試合内での選手起用機会の減少
→練習試合数の増加
→選手の負担増加

②ロースコア化

低反発バットも相まってロースコア化
→延長戦突入の可能性が高まる
→結局9回制と変わらない or 今まで以上に試合が長期化

賛成意見に対する検討

①日程緩和

1日当たりの試合数を増やすことによる運営側の負担増加。
また5試合制にすれば、結局暑い時間帯に実施される試合時間の長さは現状と変わらないのではないか。

②球数制限

1日あたりの試合数の増加により試合の間隔が短くなり、結果として1週間に500球以内という現行の球数制限に引っかかることが多くなる可能性。

反対意見に対する検討

①試合数の増加

この可能性は否定できない。
ただ練習試合でのみ9回制を採用することは十分可能であり、そもそもこういった管理は指導者が内部で適切に対処すべき事項である。

②ロースコア化

現行ルールでは延長に入るとタイブレークが採用される。
今までの大会での傾向を見るに延長に入ったとしても伸びるのはせいぜい1,2イニングであり、つまり8回9回での決着が多くなると想定される。
そのため現状と比較すると少なくとも時短にはなりえる。

他の暑さ対策の検討

ドーム開催

そもそもこれができるのなら苦労していない。
暑さだけでなく天候不順による中止リスクもヘッジできる。
ただ甲子園球場というブランドやシーズン中に長期間独占で高校野球に貸し出してくれるドーム球場があるのかということを考えると、あまり現実的な案ではない。

開催時期の変更

選抜(3月)、その実質的な予選である秋季大会(9月~10月)の時期は変更しないと仮定する。
また12月~1月は基本的に試合をする時期ではないため除外する。
すると残るのは4~8月と11月である。
都道府県大会から甲子園までで連続した2カ月を確保するとしても、7,8月の暑い時期は十分回避可能であるように思われる。

懸念点としてはまず、①通常の授業実施期間に長期遠征を行わせることが学校の部活動として適切なものであるか、②阪神タイガースやNPB側との多くの調整の必要性、③新入生合流後の練習時間の確保などが挙げられる。
こうしたことを考えるとこの案は実現可能性は低く、実現するにしても時間がかかりそう。

選抜と選手権の一本化

一本化し今の選抜の時期に開催するという案。
それぞれ毎日新聞社、朝日新聞社と主催者が異なっている。それぞれの歴史や主催者側のメンツなどを考えると現実的ではない。

選手権以外での7回制の適用

2/21、国体における7回制の試験導入が発表された。
国体は秋の涼しい時期に開催されるため、7回制の本来の目的である暑さ対策とは関係がない。
そのため国体において導入することの必要性には疑問符が付く。これは春秋大会、春の選抜、明治神宮大会においても同様。

一方で選手権でのみ7回制を適用しその他の大会は全て9回制というのも混乱を招くため、いっそ全ての大会で導入するというのは仕方ないとも考えられる。

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