証券投資の「リターン」

さて、第3回はいよいよ「リターン」について考えていきます。

よく、「ハイリスクハイリターン」とか「ローリスクローリターン」とかいう言葉で使われる通り、証券投資に関わらず馴染みのある言葉だと思います。今回は、「リスク」まで含めると長くなってしまうため、「リターン」のみお話しさせてください。


実は、証券投資の世界では、リターンという言葉は2つの使い方がされています。

1つ目は、「収益率」という意味です。この収益率は、利益を費用で割った値(つまり割合)のことです。つまり、

収益率 = 利益 /    費用

と表すことができます。前回の復習ですが、利益は「売値 - 買値」で、費用は「買値」でしたね。よって、収益率はこんな風に表現することができます。

収益率 = (売値 -    買値)    /    買値

です。つまり、リターン(=収益率)は売値と買値のみで表現できます。

2つ目の意味は、単に「利潤」という意味です。これは証券投資の世界では(厳密には証券投資の理論の世界では)あまり正しいとは言えない使い方です。1つ目の意味では、リターンは割合でしたが、この意味はどちらかといえば概念的で、得があることを表現しています。

今後進めていく議論では2つ目の意味は使わず、1つ目の意味を用います。つまり、リターンと言ったらそれは収益率(割合)のことだと思ってください。これを理解した上で、以下の問題を解いてみましょう。

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【問題】どちらが「ハイリターン(=リターンが高い)だった」でしょうか?

A. 100円で買った株式が、120円になった。

B. 10000円で買った株式が、10500円になった。

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答えは、Aです。これを理解するために、まずは儲かったお金を考えてみましょう。

Aでは、「100円」で「買った」株式が、「120円」になっているわけですから、儲かったお金は「(120 ー 100)円 = 20円」だと分かります。

Bはどうでしょうか。「10000円」で「買った」株式が、「10500円」になっていますから、儲かったお金は「(10500 ー 10000)円 = 500円」だと分かります。

このように、儲かったお金はBのほうが大きいです。それでは、なぜAのほうがリターンが高いと言えるのでしょうか。

答えは、収益率の計算式からも分かるとおり、リターンは「賭けたお金に対して、どれくらい儲かったかどうか」を意味するからです。この儲かったお金は、リターンの計算式でいうところの、「分子」になります。これだけでは、リターンは正しく表現できたといえません。この「分子」を「分母(買値)」で割って初めてリターンとなります。ここまで計算してみると、

Aでは、「20円  /  100円 = 20%

Bでは、「500円  /  10000円 = 5%

という結果になりますので、Aの方がリターンが高いと言えるのです。


では、なぜわざわざ「金額」ではなく「割合」を考える方が良いのでしょうか。

以下の状態を想定しましょう。

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・あなたの全財産は「1億円」です。あなたは「100円」を欲しいと思いますか?

・あなたの全財産は「1千円」です。あなたは「100円」を欲しいと思いますか?

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さて、おなじ「100円」を貰えるわけですが、下のパターンのほうが、貰える100円の嬉しさが大きいと思います。このように、同じ額でも、貰った時の嬉しさは人によって違います。子供の時の100円はとても大きく感じましたが、大人になると急に小さなものに感じるようになりましたよね。そういうイメージです。そしてこの「嬉しさ」を表現したものが、「リターン」なのです。

もう一度、AとBのパターンを振り返ってみましょう。

Aでは、「100円」の賭けに対して、「20円」の利益がありますね。

Bでは、「10000円」の賭けに対して、「500円」の利益がありますね。

Aのパターンは小学生、Bのパターンは大学生くらいを想定してみると良いと思います。Aの方が、なんとなく幸せは大きそうではないでしょうか?紛れもなく、Aのほうがリターンは大きいです。


いかがでしたでしょうか。「リターン」について少しでも理解が深まれば幸いです。次回は、「リスク」についてお話しします。「リスク」についての理解が深まると、さらに「リターン」についての理解も深まるので、ぜひみてみてください。



〜まとめ〜

リターン = 利益    /     費用 = (売値   -    買値)    /    買値

リターンは「賭けたお金に対して、どれくらい儲かったかどうか」を意味する

同じ額でも、貰った時の嬉しさは人によって違います。