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作品を作り上げる デザイン編② (オーストラリアの国際大会での例)

昨年は2008年以来、久しぶりに国際大会に参加しました。
どうしてまた海外に出展する気持ちになったかというと色々とあるのですが、まずは子供達が手を離れてきた事、両親も元気でいる事、そして自分も元気である事。体力があって行けるうちに行きたいと思いはじめました。そして一度は日本から作品を持っていく経験をしてみたかったのです。2008年のコンペの時はイギリスに住んでいました。学校経由の団体で申し込んで出展しました。何かあれば先生に質問ができ、今思うと本当に気楽に出展できました。
この時はフラワー部門に出展、結果は金賞、クラス2位を頂きました。それから十数年たちますが、自分の作品は今ではどうみられるのか、足りない所はどこのなのか、海外からの視点を知りたいと思いました。
そして海外のシュガークラフト業界の近況はどんな感じなのか見たい…という色々な強い気持ちが芽生え、決断しました。

昨年のオーストラリア国際大会では8部門、全25のクラスがありました。フラワー部門は2クラスありました。(1IKEBANA,2Flower Arrangement)私は両クラスとも作品を出展しました。なぜ二つ出展したかというと、どちらもやりたくて、迷って絞れなかったという単純な理由です。
結果は二作品とも金賞とクラス1位を頂きました。
賞は絶対評価で、順位はその時の出展者間の競争になります。両方とも大事ですが、私としては絶対評価の方がより大事です。久しぶりの国際大会でしたが、結果を出す事が出来てとても嬉しかったし、有意義な時間を過ごせました。

海外出展の場合、テーマ、デザインについて日本とは異なる点で気を使います。文化に起因する物事の認識、感覚が国により様々だからです。
例えば、日本の“かわいい”です。日本人の思う“かわいい”という感覚が、海外でもかわいいと思われるとは限りません。

以下は私が海外へ出展する際デザイン面で気を付けていることです。


海外出展向けのデザイン

1. 題材選び

世界大会は色々な国の方が来ます。どの国の人達が作品を観てもわかる、なるべくシンプルな題材を選んでいます(日本人にしかわからない微妙なものは選ばないようにしています)。

2. 出品者の出身国を予想

オーストラリアは地理的に考えるとイギリスの大会よりもアジア人が多く来ると予想しました(予想通りでした)。
アジアの人達はとても器用だと思います。色使いも日本人からみるとはっきりくっきりした色彩が多く、目を引きます。その中で自分の作品の立ち位置をどうするのかを考えます。

3. タブー

作風に海外のタブー的要素が含まれていないかを念のため調べます。
例えば、フラワーでいうと菊。日本で結婚式には使われません。
どの国の方が見ようと、え?とならないように心がけています。

4. Wowな要素

作品にWowな要素が必ず入ることを心がけます。
何がWowかは国々で違うと思います。考えるのは難しいですよね。
では海外では何がWowでしょうか?

シュガーフラワーの作品に関して、私の思うWow
自分の経験から考えると、
・お花がきっちり写実的であること。本物と分からない位に作りこむこと。
・気が遠くなりそうな位、細かいこと。
・本に載っていないようなお花を作ること。
・どうやって作ったのかな?と何度も見入ってしまいたい位のものを作ること。
・躍動感のあるアレンジメントを作ること。
 (どうやったらこんな風にアレンジできるの?というもの)。
・作ったシュガーフラワーがふわっと柔らかく見えること
これではないでしょうか。

余談ですが、
イギリスではフラワーペーストの種類についても規定で触れています。
長時間柔らかいままのペーストや、砂糖以外のものの配合率が配合されているもの等、色々とありますが、Cake Internationalでは砂糖の配合率や、乾燥後はカチッと固まるものである事を指定しています(審査の時にお花を触って確かめると記載してあります)。Cake Internationalに出展する際はペーストにも気を付けましょう。

オーストラリアに出展した作品の話

IKEBANA

季節の移り変わりを描きたく、時間の経過と共に色が変わっている植物を選びました。頬月を主体に、ダリア、日本のモミジ、麦、をシュガーペーストで作った竹に生けました。
木の台も本物のようにシュガーペーストで作りました。
色彩は濃くはっきりしたもので、グラデーションになる様にお花をまとめました。
昔生け花を少し習っていたことがあったので、全体のまとめる時はとても役に立ちました。
規定に、”Less is more” 、“Japanese minimalist conceptという表記がありました。私はこの表記の解釈にとても迷いました。外国人にとってのLess is More と、Japanese Minimalist conceptはどんな感じなのか、と(そもそも生け花とフラワーアレンジメントの違いををどうとらえているのかなと)。ギリギリまで悩んで、この生け方にしました。私の思うLess is more だと、外国人から見た時に草花が少なくてさみしいと思われそうな予感がして、ちょっと植物を増やしています。生花のでの生け花でしたら、こんなに盛らなかったかなと思います。


上から下に下がるにつれて紅葉する感じにグラデーションを作りました。


Flower Arrangement

Flower Arrangementのクラスの方は、Presidential Suiteのサイドテーブルに置くようなアレンジメントを作るというのがお題でした。日本人が大好きな桜を主としたアレンジメントを作りました。青い花器や大理石に似せた土台もシュガーペーストで作ったものです。
IKEBANAで作った作品とはがらっと雰囲気と変えて、淡い色のお花を華やかに、ふわっと感が出るようにアレンジしました。作ったお花は、桜、イングリッシュローズ、アネモネ、こでまりとナルコユリです。
フラワー部門共通の規定に、お花の種類、種類数が記載されています。この規定はイギリスではなかったので、これで合ってるかなと不安になる箇所がありました。。Flower Arrangementの規定では隙間を埋めるお花も作るようにと記載ありました。私はこでまりを作ったのですが、それが外国で隙間のお花に該当するかどうか心配でした(結果は大丈夫でした)。
それから、オーストラリアのお花(例えばseed podsや gumnutsと書いてありました)もできたら作ってと書いてあったのですが、調べたたらどうしても作れる気がせず(笑)、アレンジメントには入れませんでした(印象が悪くならないかハラハラしましたが、作らなくても結果大丈夫でした)。


ふわりとした雰囲気を心がけて制作しました



Cake InternationlにはなくてAustralian Cake Showでは必要な提出書類があります。それはJudge’s Information Sheetというものです。A4の提携フォーマットに、作品のタイトル、説明、アピールポイント等を書きます。作品が更に理解してもらえるような説明文を心がけて書きました。又、規定に沿って制作している事もここで文章にして証明できます。作品だけでは伝えきれない部分を文章化出来るので、この書類を提出できるのは素晴らしい!と思いました。

評価

審査は絶対評価です。審査項目がいくつかあり、夫々点数が付けられ、総合点によって賞が決まります。オーストラリアでは85点以上が金賞になります。 
印象として、2008年のイギリスでの国際大会の時と審査の点が大きく違わないと感じました。出来ていると思った箇所は評価されたし、心配に思っていた箇所は減点されたので、何で?みたいな大きなビックリはなかったと思いました。


IKEBANA
お花が形美しく、色彩も良いと評価を頂きました。特に麦はよく作られていると(鬼灯に1番力を入れたので、麦か〜と思ってしまいました)。
逆に木の台の色はもう少し明るさを抑えても良かったと減点されました。
台は実は黒にしたかったんです。でもテーブルクロスが黒と事前に分かったので、この色にしました。会場で飾った時に思ったよりも色が明るく感じたので、私も審査員と同じ事を思いました。

Flower Arrangement
美しくゴージャスと評価されました。特にこでまりは絶妙と書いてありました。また、花器と大理石風の台も良くできていると。逆にナルコユリが本物に見えなくて減点したと書かれていました。規定の種類数に合っているか悩み、念の為に余分に作ろうと思って飾ったのがナルコユリでしたが、逆効果になってしまいました(涙)。種類数は足りていた事が分かったので、無理して作らなければ良かったです。

観に来ていたお客様や他の出展者と機会あってはお話しをしたのですが、どちらかというとIKEBANAの作品よりも桜のアレンジメントの方が目を引いてくれたようです。

オーストラリアのシュガーアート

会場にはジャパンケーキショーのように沢山の業者さんがデモンストレーションをしたり、道具や材料を販売していました。日本では殆どの道具や材料は輸入品です。オーストラリアでは輸入品だけでなく多くのものを自国製品で頑張っているという印象でした。抜型はほとんど3Dプリンターのものだったと思います。日本も日本製の道具や材料でまとめられないかあと思いました。

オーストラリアmadeの色素、Colour Millです。
イギリスでも使われています。
色がくすみ系で日本人好みです。



オーストラリアでも思っていた以上にキラキラものが好まれていました。生のフルーツにもLuster dustを塗るそうなんですよ。これはびっくりでした。

これ全てキラキラ系のパウダーです。
試しに購入してみました。発光感良かったです。
他のメーカーでもLuster Dustが沢山販売されていました。

授賞式の時、主催者のスピーチで出品者に感謝を述べられていて、「審査員達も出品される作品を通し、色々な技術をみて勉強になっているんです」と言っていました。またオーストラリアのケーキショーをーイギリスの様に盛り上げて行きたい!と言っていました。 そういう姿勢や雰囲気がとても良く感じられて、参加をして本当に良かったと思いました。

お読み頂きありがとうございました。
オーストラリアの話はもう少し続きます。


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