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収益化する中国のオンライン・ナショナリズム

中国では少しでも自分の国を批判すると、オンライン・ナショナリストから激しく攻撃されます。炎上したせいで倒産に追い込まれた企業もあるほどです。

「愛国心(愛国主義)」というと、英語では「patriotism」という言葉と「nationalism」という言葉がありますが、patriotismはポジティブな意味で使われ、nationalismは行き過ぎた愛国心、つまり外国に敵意を抱くような、ネガティブな意味で使われます。

日本には「ネトウヨ」という言葉がありますが、nationalismについては右か左かの問題ではないようです。「アメリカ・ファースト」のトランプ元大統領だけでなく、中国やロシアや北朝鮮などの共産主義・社会主義国も思いっきりナショナリズムに走っています。

さて、中国がこのような状況にあるせいで、海外支援をするNGOや、外国との懸け橋になろうとしている民間企業などは苦境に立たされています。

「ナショナリストのブロガーたちは、ときには中国共産党と人民解放軍が管理している報道機関から支援されて、海外から助成金を受けたことや、あるいは中国が世界に与える影響が大きくなりつつあることに対する海外の懸念を伝えただけで、海外に向けて活動する団体や個人を何か月もにわたって叩き続けており、環境問題などの比較的無難な分野に取り組んでいる個人や団体であっても油断できない。」
"Nationalist bloggers, supported at times by media outlets controlled by the Communist Party and the People’s Liberation Army, have spent months denouncing groups and individual campaigners for receiving foreign grants, or merely for relaying foreign concerns about China’s growing impact on the world, even in such relatively safe fields as the environment."(英エコノミスト2022年1月8日号 "Chaguan: For-profit paranoia"より。以下引用同じ)

さらに問題なのは、このようなナショナリズムに走った動画や投稿がクリック数を稼いで収益につながり、ひとつのビジネスになってしまっていることです。

「昨年、自分の会社が標的にされたという中国のリベラル派の人の話によると、ナショナリストたちは「反中の裏切り者」の動画を作ればクリック数が稼げることに気がついたらしい。「クリック数を稼げばインフルエンサーになれて、そこから収益が生まれる仕組みになっている」のだという。
"In the words of a Chinese liberal whose employer was targeted last year, nationalists discovered that videos about “anti-China” treachery generate clicks. “If you have a lot of clicks you become influential, and influence drives revenues.”

愛国心や外国に対する敵意をあおることは、権力者が批判から国民の目をそらし、自分の地位を安泰にするための手っ取り早い方法です。国を愛するpatriotismは悪いことではないかもしれませんが、それは個人が心に抱くものであって、他人からあおられたり、他人に押しつけたりするものではないはずです。

感情をゆさぶる興味本位の動画や広告は、ついクリックしたくなるものですよね。しかしそれをクリックすることによって、よからぬ人や組織の収益につながるとしたら、どうでしょう。私たちも、興味本位でクリックする前に一瞬立ち止まって考える習慣を持った方がいいのかもしれません。

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