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欧州で深刻化するエネルギー危機

欧州では、電気代が高騰して家計を脅かしています。冬期停電の恐れもありましたが、今のところ比較的暖冬で、なんとかもっているようです。

どうやら夏の間の天然ガスの備蓄不足が原因の一つのようですが、このエネルギー危機には、他にもさまざまな要因が複雑に絡んでいるようです。

「オランダなどの国で国内のエネルギー生産が縮小していること、風が弱くて思うように風力タービンを回せないこと、アジア需要の高まりによってガスが東方へ吸い上げられていること、フランスの原発のメンテナンストラブルなどが重なって予想外の不足が生じ、ガスパイプラインの出発点であるロシアからの追加供給が遅れると、価格が急騰した。」
"Shrinking domestic energy production in places like the Netherlands, wimpy breezes that failed to spin wind turbines as much as hoped, booming Asian demand sucking gas eastwards, and maintenance trouble at French nuclear plants have coalesced into a shortage few saw coming. When Russia, whence gas pipelines tend to depart, did not rush to help with additional supply, prices spiked."(英エコノミスト2022年1月15日号 "Charlemagne: Gas nightmares"より。以下引用同じ)

欧州のエネルギー供給がロシア頼みになっているのは不安要素ですし、ロシアがウクライナ問題で揺れている今、人道的にも問題がありますね。

欧州では、環境に配慮して炭素税を課し、再生可能エネルギーへの転換を進めていますが、早急すぎる再エネへの転換政策がエネルギー危機の一因ではないか、という見方もあります。

ドイツでは、一度は止めた原子力発電所に再度目が向けられてもいるようです。

原発がエネルギー危機を救ってくれる? 石炭に戻るよりは原発? 世界が二酸化炭素排出に敏感になっている中、経済界では、そのような声も大きくなってきているようです。

私は経済畑の人間ではないので、原発が必要だなんて全然思いませんけど--と、つい個人的意見を口にしてしまいましたが、さまざまな意見を出して話し合うことは、とても大切なことです。

エコノミストの当記事にも、このエネルギー危機による混乱は、民主主義社会ゆえの混乱であると書かれています。

「欧州の政府関係者は、非難の矛先が自分たちに向けられることはわかっており、それを喜ばしく思ってはいない。だが、エネルギー危機の責任を問われることへの不安は健全なものだ。問題に対するEUの取り組みが有権者の怒りを買っているのは、一部の人にとっては同意できず、破棄してほしいと思っているような政策を打ち出していることの表れだ。これは、広く欧州全域にわたって民主主義が機能しているからにほかならない。」
"European officials know the spotlight of blame might swing to them, and are not looking forward to it. Yet anxiety can be healthy when the fear is of being held accountable. Having voters fume at the EU’s approach to problems is a sign that it is devising policies some people disagree with, and might want overturned. That looks an awful lot like a functional democracy at a pan-European level. "

何か問題が起きたとき、独裁者の一声で解決策を決定したほうが、すみやかに問題が解決することは確かにあります。だからこそ、大衆は「強いリーダー」を求める気持ちを常に持っています。

民主主義は、みんなで話し合って決める、という制度ですから、問題への対処は遅れがちです。だからといって、民主主義を捨ててよいはずはありません。

エネルギー危機の問題も、地球環境にも配慮しながら皆でよりよい落としどころを見つけていくしかなさそうですね。手っ取り早い解決策よりも、50年後、100年後の世界を見据えて、議論が尽くされるべきだと思います。

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