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セラフ部隊の基地が男女で分かれている理由を妄想してみる

注意

 本記事には、ヘブバンのメインストーリー5章前編までのネタバレが含まれています。記事にあるヘブバンのプレイ画像は、全て筆者がプレイし撮影したものです。
 また本記事は、ヘブバンで明らかになっていない部分に関して、筆者が好き勝手に妄想しているだけの内容となっています。


前書き

 月歌が日々の生活を送る基地には女性しかいない。前線で戦うセラフ部隊員はもちろん、司令部も、整備兵も、おそらくカフェテリアのスタッフからショッピングモールの店員まで全員が女性だ。
 これについて、メインストーリー第1章Day1で「基地ごとに男女が分かれているから」だと説明されている。

©WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS ©VISUAL ARTS/Key

 しかし、この説明では納得できない点がある。月歌たちが軍事作戦を行う中で全く男性のセラフ部隊員が登場しないのだ。大規模な作戦を行うとしても、他の基地から男性隊員が駆けつけることはない。

 メタな視点に立てば、ドーム住民を除いて女性しか登場しない理由は、WFSとkeyがヘブバンを美少女ゲームとしてリリースしたからだろう。

 だが、あえて筆者はこう妄想する。「セラフ部隊員は、徹底して異性との接触が起こらないような環境に閉じ込められているのではないか?」と。

そして筆者が出した結論を簡潔に言うと「基地が男女で分かれている理由は、ヒト・ナービィがナービィを出産したから」である。 

 これだけでは話が飛躍しているため、なぜこのような仮説を立てるに至ったのかを、順序立てて書いていく。

第1章 ナービィの遺伝子

ナービィとは何か

 メインストーリー第4章Day0にて、セラフ部隊のショッキングな事実が覚醒つかさっちによって明らかになった。それは、セラフ部隊員は皆ヒト・ナービィ計画によって人為的に生み出された生命体であり、亡くなった優秀な人間のDNAを取り込むことで対象の記憶や人格を丸々コピーした化け物であるというものだった。

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 そもそもナービィという生物は何か。この漠然とした問いに答えを出すために「すべての生物は何なのか、何のために存在するのか」という疑問を設定する。この疑問に一つの回答が出た時、「すべての生物は〇〇であり、✖️✖️のために存在する。ナービィも生物だから、〇〇であり、✖️✖️のために存在する。」という三段論法が成り立つ。

 私たちの正体について、イギリスの生物学者リチャード・ドーキンスは

私たち、およびその他のあらゆる動物は、遺伝子によって創り出された機械にほかならない

『利己的な遺伝子 40周年記念版』
リチャード・ドーキンス著、日高敏隆・岸由二・羽田節子・垂水雄二訳
 株式会社紀伊国屋書店、P41

という答えを出した。つまりナービィも生物だから、遺伝子によって創り出された機械であるという訳だが、これはどういう意味だろうか。

不滅の遺伝子

 私たちは、往々にして自然淘汰の単位は種であると考えがちである。私たちが生きて子孫を残す理由は理由は種の繁栄の為であると、また種が絶滅することは良くないことであると考える。しかし、自然淘汰の単位は種ではなく、個体でもなく、遺伝子なのだ

 まず、なぜ種ではないと言えるのか。とある利他的な集団がいると考える。各個体は、種の全体的な繁栄のために犠牲となる歩兵だ。だが突然、種の利益を一切考えない利己的な個体が現れた時、その個体は大多数の利他的な種よりもより多くの子孫を残す機会を得るだろう。そして年月が経つと、利他的な個体の集団は利己的な個体によって乗っ取られてしまうだろう。(1)従って、種が自然淘汰の単位となり各個体が利他的に行動して全体的に繁栄する事は、極めて難しいのだ。

 次に、なぜ個体ではないと言えるのか。それは、個体は遺伝子の短命な組み合わせに過ぎない(2)からである。私たちは父親の遺伝子を半分、母親の遺伝子を半分受け継いでいる。そして子供を作った時、彼に託せる自身の遺伝子は半分だけだ。つまり、各個体の基盤となる遺伝子の組み合わせは一世代だけのオリジナルであり、その個体の死亡とともに消滅する。これでは、自然淘汰の単位となる事はできない。

 では遺伝子こそが自然淘汰の単位となぜ言えるのか。リチャードは、

一つひとつの個体に宿っている遺伝子の組み合わせは短命だが、遺伝子自体は非常に長生きする。彼らの歩む道はたえず出会ったり離れたりしながら、世代から世代へ続いていく。一個の遺伝子は、何世代もの個体の体を通って生き続ける単位と考えてよいだろう。

『利己的な遺伝子 40周年記念版』
リチャード・ドーキンス著、日高敏隆・岸由二・羽田節子・垂水雄二訳
株式会社紀伊国屋書店、P72~73

と述べる。最後に長文の丸々引用となり恐縮だが、これで自然淘汰の単位が種でも個体でもなく遺伝子であることがご理解いただけただろうか。

私たちは遺伝子に生かされている

 自然淘汰の単位が遺伝子であり、個体が一時的な遺伝子の組み合わせに過ぎないのならば、私たちは何のために存在するのだろうか。実は、私たちは、遺伝子が外界の環境から身を守り生き延びるために存在するのである。 

 この世界では、安定したものが存在し生き延びることができる。大気の8割が窒素なのは地球では窒素が安定して存在できるからであり、ニホニウムの寿命が1000分の2秒しかない(3)のは安定した原子構造ではないからだ。とある遺伝子が世界に存在するのならばそれは安定して存在できるからであり、消滅するのならば安定して存在できなくなったからである。

 ご存知の通り、遺伝子はDNAによって構成されている。アデニン・チミン・グアニン・シトシンの4種類のヌクレオシドの組み合わせによって、身体の設計方法を保管しているのだ。リチャードによると、DNAとは体の作り方に関する一組の指令だ。そして細胞にある核は、DNAという設計書を保管するためにある「書棚」であり、人間の場合その「書棚」は染色体という46巻にわたる設計図で埋められている。(4)

 原初は剥き出しのアミノ酸だった遺伝子は、長年の自然淘汰と進化のサイクルの中でほとんどが消え失せた。現代まで生き残ったごく少数の勝者こそが私たちを構成する遺伝子だ。リチャードによると、その最大の特徴は、自分が住む生存機械、すなわち身体を創り出す能力を獲得したことである。そして彼らの維持こそ、私たちの存在の最終的な論拠(5)なのだ。

すごいぞ、ナービィ!

 これで、上で提示した疑問へ回答することができる。ナービィも生物だから、遺伝子によって創り出された機械であり、ナービィを創り出した遺伝子を維持するために存在するのである。

 では、ナービィとはどのような生存機械だろうか。ナービィの最大の特徴は擬態である。それは昆虫の不可逆な変態とは異なり、擬態を保てなった際に元のナービィに戻る可逆的なものだ。

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 ナービィの遺伝子がDNAで構成されているのか、人類の知らない他の方式で構成されているかはわからない。だが確実なのは、ナービィの書棚には「空間」が存在し、そこに摂取した設計書を入れて、理解し、組み立てることで、元の遺伝子を残しつつも新たな生存機械を創り出すことが可能であるということだ。ナービィに宇宙を自由自在に旅させ、各所の環境で最も安定して存在する生存機械に擬態させることで、その土地で安定して自らを維持することができるのである。

 最後に「ナービィとは何か」という疑問に対する筆者なりの結論を記す。ナービィとは、ナービィが保有する遺伝子が創り出した生存機械である。その遺伝子は、ナービィに自らを保護させ維持させるために、それぞれの土地で起こる自然淘汰と適応のサイクルの勝者へのフリーライダーとなる能力を与えた。これによって遺伝子は宇宙各所で安定して存在することが可能となり、宇宙規模の自然淘汰を生き延びてきたのである。

第2章 なぜナービィが産まれてくるのか

 前章では、全ての生物は遺伝子によって創られ生かされている生存機械であると述べ、それ故ナービィもまた彼らの持つ遺伝子によって創り出された生存機械であると述べた。しかし賢明な読者はお気付きだろうが、これだけではヒト・ナービィがナービィを妊娠する理由は説明できない。本章では、ナービィの生殖に着目し、さまざまなパターンについて考察することで、結果的にヒト・ナービィがナービィを出産する可能性に帰着すると論じる。

ナービィは不死身ではない

 基地にいるナービィはこれ以上これ以上変身する事ができないロスト・ナービィであることからわかるように、ナービィにとって擬態とは一度だけ使えるチケットだ。また、致命傷を受けると擬態を維持できなくなり、再度の擬態は不可能である。それだけでなく、ナービィ星には色褪せたリーダー格のナービィがいて、月歌は老いていると推測した。

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 このようにナービィには、擬態が解けてロスト・ナービィとなる、老いて色褪せるという2つの不可逆な変化が確認されている。従って、ナービィも生殖行為をしないと絶滅してしまうのだ。そして孫「娘」という表現から、少なくとも2つ以上の性が存在すると考えられる。

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 複数の性がある動物ならば、生殖を司どる器官がナービィにも備わっているはずである。しかし見る限りナービィは、半透明のスライムのような物質で構成される大福状の身体に目と手足がついているだけで、生殖器のようなものは確認できない。ここから、ナービィは他の生物への擬態後に生殖を行うと考えられる。

 筆者は、軍がヒト・ナービィ同士で子供を作らせる実験をしたと考える。以下では普通の人間やヒト・ナービィが生まれる場合を合わせて考えることで、ゲーム内では一切の情報が明かされていない現状であっても、結果的にヒト・ナービィを妊娠する可能性しか残らないことを証明する。

パターンA:人間が産まれる場合どうなるか

 完璧な人間が生まれる場合、擬態したナービィが遺伝子を未来に残そうと試みても、子孫にはナービィの遺伝子が受け継がれないことになる。

 前章の通り、私たちは遺伝子の乗り物であり、遺伝子を繋いで行くために存在している。そうでなければ、遺伝子は淘汰されてしまう。ナービィがあらゆる星で様々な生物に擬態することができても、その後遺伝子を残すことができないのなら、果たして宇宙規模の自然淘汰を生き残ることができるだろうか。いや、絶滅してしまうだろう。

 ナービィが今存在していることそれ自体が、パターンAの可能性を否定していると考えられる。

パターンB:ヒト・ナービィが産まれる場合どうなるか

 ナービィの遺伝子も持った人間が生まれる時、つまりヒト・ナービィが生まれる時どうなるだろうか。その子供はナービィの遺伝子の生存機械であり、親と同じくセラフを使うことができるだろう。

 軍が実験をしたのなら、このパターンBを期待していたと思うのだ。もしもヒト・ナービィを産めるのなら、もう宇宙からナービィがやってくるのを指を咥えて待つ必要はない。優秀な人間の死体を利用して人為的にヒト・ナービィを作る必要もなくなるのだ。軍はヒト・ナービィに出産を奨励し、セラフ部隊の人数は大幅に増加するだろう。

 しかし、結果としてそうはならなかった。軍は31世代にわたりヒト・ナービィを人為的に作り、セラフ部隊の基地は男女で分けられている。ヘブバンが美少女ゲームであることが、ヒト・ナービィが生まれなかった証拠だ。

パターンC:ナービィが産まれる場合どうなるか

 これまで消去法で他の可能性を否定してきたが、パターンCの先を想像しても自説の論拠となる。

 もしもセラフ部隊が普通の軍隊のように男女混合であり、当然のようにどこかで恋愛と出産が起こり、そして生まれてきたのがナービィだった時どうなるか。基地中がパニックになるに違いない。なぜエイリアンを出産したのか?我々はそもそも人間なのか?セラフ部隊とは一体なんだ?と。

 筆者が妄想するストーリーは以下の通りだ。軍はヒト・ナービィ同士で交配することで、ヒト・ナービィを出産する未来を期待した。それはセラフ部隊員を作るために必要なコストを大幅に削減し、人類の革命的な戦力増強につながるからだ。しかし実験の結果産まれたのはナービィだった。もしもセラフ部隊員がナービィを出産したら、それはセラフ部隊員の正体やヒト・ナービィ計画が発覚する大スキャンダルに発展する可能性がある。だからこそ、軍はセラフ部隊員が万が一にも出産をしないように、異性との接触がない環境に彼らを閉じ込めることで、物理的にセラフ部隊員が性行為及び出産をするリスクを無くしたのだ。これこそが、基地が男女で分かれている理由だ。

まとめ

 本記事では、まず「基地が男女で分かれている理由は、ヒト・ナービィがナービィを出産したため」という仮説を示した。仮説を論証するために、第1章では全ての生物は遺伝子によって作られた生存機械であるという学説を紹介し、ナービィもまた彼らの遺伝子の乗り物であると述べた。第2章では、ヒト・ナービィがナービィを出産する理由を述べ、最後に筆者の考えたストーリーを紹介した。

 いかがだっただろうか。多少ブッ飛んだ仮説であることは理解しているが、この記事をご覧になって、少しはアリな考え方だと思っていただけたなら嬉しい。

 最後になるが、筆者は生物に関しては高校1年生の生物基礎で止まっているため、大した知識はない。もし疑問や指摘をお持ちならば、どうか遠慮なくおっしゃっていただきたい。

引用注

(1)『利己的な遺伝子 40周年記念版』
リチャード・ドーキンス著、日高敏隆・岸由二・羽田節子・垂水雄二訳
 株式会社紀伊国屋書店、P49

(2)同上、P72

(3)テレ朝news「113番目の元素「ニホニウム」って何?デスクが解説」

(4)『利己的な遺伝子 40周年記念版』
リチャード・ドーキンス著、日高敏隆・岸由二・羽田節子・垂水雄二訳
 株式会社紀伊国屋書店、P69

(5)同上、P66

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