エレキギター待ったなし

　さて、昨日は久しぶりに友人と豊かな時間を過ごせた。友人との話の中で印象的であり、かつ、やはりその手の言葉が出たか、と思ったものがある。「このご時世、『趣味力』が試されるよな」。それは常々自分も考えていたこと。それで、その流れもあって、今自分がやりたいと思っていることの話をした、エレキギターである。

　10年位前はよく弾いていた。それが、すっかりアコースティックギターに一本化された。やはり一人で完結させられる音楽で言えばアコギに分があったのだろう。でも、エレキの楽しさも捨てがたいものがある。そんな気持ちは実は内に秘め続けていて、こんな時代、再開するにはうってつけじゃないか、と小さく小さく鬨の声を上げていたのだ。そして、きっと友人なら背中を押してくれるに違いない、と。案の定、良い感じに後押ししてくれた。というか、思っていた以上におもしろがってくれた。

　コーヒーを２杯飲み、「NBA井戸端会議」のステッカーを添えて、借りていた「さま～ず」のDVDを返すと、「楽器屋行こう」と話は進んだ。さすが都会、ちょっと歩くだけで都合3軒の楽器屋がある。

　目星をつけていたのはセミアコだ。やはりあの見た目がかっこいい。思えば「見た目」も選ぶ要素として大事！　と全力で肯定されるギター界隈の風土は素敵だ。「見た目」よりも中身（音）、としょんべんみたいな正論で勝ち誇ることは簡単なのに、「かっこいいって大事だよな！」と全村人がサムアップしてくれるそんな村が、ドラクエでなく現実にあるのだ。

　昨日、超爽やか店員さんに導かれるがまま、２本試した。なにしろ久しぶりのエレキである。いきなりGibsonのセミアコなんかに手を出すつもりは毛頭ない。予算は、と問われ10万前後かなぁと言うと用意してもらった２。EpiphoneとIbanez。店内を見て抱いた印象だが、セミアコは、テレキャスターなどと比べると、価格帯を細かく刻んでこない。実際その２本も10万円では十分にお釣りがくるのだ。で、次の価格帯はというと、20万円に迫ろうかという勢い。さすがにそこまでは出せないかな、と。見た目では完全にEpiphoneのがオーセンティックで良い。音も、特に不満はない。候補だな、とプライスカードを写真撮らせてもらって退店。昨日はそんなふうにして終わった。

　で、今日。すっかりエレキ熱に浮かされた僕は、単身逆方向の街へ出る。この街にも近距離に3軒の楽器屋がある。中古屋を覗くと、あ、と声が出た。昨日見ていたEpiphone、それとほぼ同機種が一段階安く並んでいたのだ。見たところ状態も良好。形も、色も、大いにありだ。一躍候補に躍り出た、とほぼ心では決まりつつも、あと２軒も流してみる。最後に行ったこじんまりした店。ここに衝撃が待っていた。

　実は、実は、セミアコと言っておきながらテレキャスターにも興味があった自分。ギターの性格として全然違うことは承知しているからこそ、「セミアコかテレキャス」みたいに、「サッカー部か華道部で悩んでいる」並みの見当違いなことは言いにくかったのである。それで、少しでも「テレキャスター」を話題に出せるように前々段落でさりげなく「テレキャスター」の語を出していたという寸法。

　とにかく３軒目の楽器屋。店員さんに声をかけられ、まずは「セミアコ」と伝えると、自然に試奏の流れに。すっかり知っている音、懐への収まり具合。店員さんが親しみやすかったことが僕を軟派にした。実は、とテレキャスへの思いを打ち明ける。てっきり「サッカー部か華道部」の喩えでぶん殴られるかと思いきや、「テレキャスターも魅力的ですもんねー」とサムアップ。しかも、「シンライン」という、ｆホールの空いたテレキャスターを用意してくれた。「これだとセミアコの“箱モノ”感も得られますよ」と。そんなサ華部みたいなギターもあるのか、と目から鱗。

　結果的に20分くらい弾いていたかもしれない。途中オーソドックスなテレキャスとの弾き比べなどもさせてもらいながら。教えられたとおり、ピックアップを切り替えるごとにテレキャスっぽいジャキジャキ感が得られたり、セミアコのようなウォームな感じが得られたりと楽しい。トーンを絞ったり上げたりしても、それぞれに良さがあって、つまりは夢中。そんなテレキャスター、シンラインは「FUJIGEN」製。Epiphoneとは倍ほど価格は上がるが、これはマジで買うかもしれない。また店員さんの言葉が気持ちよくさせてくれたのだ。「弾かれるフレーズも、このギターに合ってますね」。手クセから判断してくれるなんて、信用してしまうではないか。

　そういえば昨日、友人と回った楽器屋で、友人（ギターは弾かない）が気に入っていたのはテレキャスターだった。これで自分がどんでん返しでテレキャスを買ったとしても、友人はきっと祝福してくれるに違いない。背景にこんなふうなストーリーを持つと、いよいよ迎え入れるしかないなと思えてくる。いや～盛り上がってきたかも！