ちょっとレンタカー旅を思い出しただけ ~新幹線で追いかける~
ダブルブッキング。痛恨である。
本来ならば朝から友人とレンタカーで一泊二日の岡山旅行だった。楽しみも楽しみ、なんなら当面の生きる目的にしていたくらいの。それを、ダブルブッキング。
超イレギュラーな休日の出勤日。まったくモチベーションが上がらないまま最低限の午前を終え、午後は光の速さで有休消化。追いかけて岡山へ向かうのだ。
ホームタウンでさっとカレー蕎麦を食っていく算段だったがお昼時で満席。初めてのステーキ屋でカレー。味の感想がないのは、急く気持ちからということにしておこう。
一旦帰宅し荷物だけ持ち替え、駅へUターン。新幹線に飛び乗って30分の車窓。よく知る風景が剛速球で流れていく様子は贅沢。これが5000円のラグジュアリー体験。
首尾よく16時過ぎ、岡山駅ロータリーで待つ友人のマーチの助手席に落ち着く。ふっと、安堵と疲労のため息。お疲れ、とまぼろしのグラスで乾杯。
本当ならばこの日は、バスケットB3のトライフープ岡山―東京ユナイテッドを、コートサイド1列目で観戦する計画だった。チケットも手配済み。がしかしダブルブッキンガーのワタシのチケットは涙のお布施行き、と思っていたところ、まさかの展開に。
東京U側に体調不良者が続出したことによる試合中止がアナウンスされた。運営的には大変痛手ではあるが、きょとんとした顔でチケット代金は帰ってきたわけである。
まっすぐラッキーとも思ったし、諸手をあげて喜べることでもない。
友人は、代わりに催された公開練習をたっぷり楽しんできた模様。今はただ、友人が豊かなひと時を過ごしてくれたことだけが嬉しい。
岡山に着いたはいいが、冬のそろそろマジックアワー。あまりあちこち行くことはできないため、目星をつけていた内の近場を訪ねる今日この日に。
まずは岡山駅近くの「丸瀬古道具店」。過去に一度訪れたことがあり、確か「akizu」と店名を記憶していたはずだが、いずれにせよ良店。
買いこそしなかったがレトロな小引き出しや花瓶など目白押し。自室のスペースのサイズをしっかり測ってこなかった初歩中の初歩ミス。
友人は、中山律子かしらと思しきを象ったブロンズのトロフィーを、色んな持ち方で試し悩んでいた(「玄関先に何か置きたいなぁと思ってるねん」)。本命の文机もしっかり見繕っていた。バスケの試合が延期になったことで早くも近いうちの再訪が決まったこともあり、二人とも購入はすべて見送り古道具店を後に。
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まだ少し時間があったので、もうすっかり日が暮れた市街地を駆ってもう一軒の新古家具屋へ。こちらはかなりデートまたはファミリー向けの店構えで、あまり心は踊らなかった。というか、価格が10倍近くアッパー。
セールになっていた琺瑯キャニスター×3を勢いで購入。ホテルへ向かう。
車中のおしゃべりこそ本懐。この日までの課題映画「ちょっと思い出しただけ」について。
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これはちょっと本当に良作、好きな雰囲気の映画だった。一本の映画を、余すシーンなく話せる友のいる喜びよ。
ゆるい遠征レンタカーは、今後も定番化するだろう。そしてそのとき、きっと課題映画をひとつ設定するだろう。とても、とてもおすすめである。
ちなみに昨夏のレンタカー旅行の課題作は「佐々木、イン、マイマイン」。
ホテルはいつもどおり別室。5分後にロビーでね、と言い合う。
「部屋に入ったら、まず何する?」と訊くと、回答は同じだった。「あの折りたたまれてあるやつをXに開く」。今調べたら、あれは「バゲージラック」というらしい。なんとなく、自分はしっかり活用する方だ。友人もそうらしい。
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平和町の辺りをぶらぶら。あたりをつけていた居酒屋に入る。丁寧な仕事をする職人タイプの板さんが3人、朗らかに立ち働いている。良い雰囲気。
ここで飲んだレモンハイがとても美味しい。しっかりと焼酎の風味もあり、そこらの清涼飲料水的なものとは違う。刺し身も天ぷらも堪能し、2軒目へ。
あてもなく歩くとオーセンティックなバーがあったのでそこに決めた。ずっと喋ってはいるが、いつものごとくたいして憶えていない。ダンディーなホールの人が、さりげなく酒の説明をしてくれたりチェイサーを持ってきてくれたりして、豊かな時間を演出。
遠征先で良い店に出会えたら、無条件でその町が好きになる。
友人はいつものように〆のラーメンを食いに。僕はホテルへ。
午前中しっかり仕事をしてきたこともあり、まぁよく眠れるだろう。radikoタイムフリーで「プチ鹿島のラジオ19XX」を聞きながら深い眠りへ。確か禁煙パイプ流行の時代の話だったZzz……。
(続きます)
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