
pilgryNOTE月報24.12|ディスコは君を区別しない
全国各地の宗教的な場にまつわる「音」のプラットフォーム「pilgry」を企画・運営する遠藤卓也による活動月報
2024年が終わった。
いつも思う。年末の感じは一年のうちで最も好きな時季かもしれない。
「今年も生きた。」好きな日本酒でも買って帰って、マンガ読みながらだらだら過ごして、紅白みながら蕎麦をすすって。
そういうなんというかとても"薄い時間"をなんでもなく過ごすのが好きだ。
この好きな感じのピークは大晦日。元旦の朝には既にちょっと残念な気持ちになる。「ああ、好きな年末が終わっちゃったな、、、。」
そうなるともう、たった数日まえの「2024年の年末」がはるか昔のように感じられ、もう全然思い出せないのだ。
故に、1月に書く前年12月のふりかえりが一番難儀する。脳みその中の2024年フォルダは既にアーカイブ化されてしまっているが、なんとかして紐解いてみるか。(ナム子のポッドキャスト収録もあることだし)
音のこと
12/23 坂本慎太郎バンド Live 2024 @ 恵比寿リキッドルーム

12月のクライマックス、というか2024年のクライマックスは、紛れもなく 12/23 に恵比寿のリキッドルームで行われた坂本慎太郎バンドのライブだった。今まで何度も抽選に外れ続けて、念願叶って当たったチケットの整理番号がなんと74番!とても良い場所でじっくり見ることができた。
チケットが4,500円というのはつくづく破格。僕が学生の頃のゆらゆら帝国だってそれくらいか(もしくはもっと安い)値段で見られた気がする。コロナ以降、内外のアーティストのチケットが値上がりして(致し方ないことではあるけれど)友達を気軽に誘えなくなってしまったことを残念に思う。しかし坂本慎太郎バンドのライブは、相変わらず気軽に誘える値段だ。抽選に当たればの話だけど。

そして今時、Tシャツ買うのに長蛇の列に並ばなくていいのもいい。少し前に会場に行けば、さっと買えちゃう(終演後だって買える)値段も安い。昨今の高額化・プレミアム化の流れに逆行するかのように何もかも、「昔のライブの感じのまま」である。普通に考えて、チケットもTシャツも倍の値段でも買う人だっていそうだけれど、そうはしない。坂本さんは「だって、そんなもんでしょ」って言ってそうだ。
思えばいつから、ライブ事情はこんなことになったんだ。やっぱコロナか。それは大きかった。みんな大変だったし。しかし今は、どうなのか。
演奏について。
全16曲すべてが良かった。誰かが作ってくれたセットリストのプレイリストを貼っておこう。
昨今では終盤にやりがちな「ツバメの季節に」で始まった。リリース当時のコロナの頃のムードを歌ったような歌詞と思っていたけど、今聴くと印象が少し違う。普遍的な歌詞であるとわかる。サウンドもグルーヴィでムーディで、好き。
「ずぼんとぼう」ライブでの重厚感、重たいダンスミュージック。リズム隊、すごい。
「べつの星」「好きっていう気持ち」歌詞が心に刺さってくる。
誰かにとって うれしくて 誰かにとって 悲しい
同じものみても 同じことしても やっぱり
まるで べつの 星の人みたい
どこか べつの 星のことみたいさ
何やってんだろうね はぁ 踊ろう
何やってんだろうね はぁ 踊ろう
何やってんだろうね はぁ 踊ろう
何やってんだろうね はぁ 踊ろう
とても冷静で正気。境界やズレについて自覚的でありながら、音楽の持つ熱を信じている。
そして、一番好きな曲「まともがわからない」が、さらっと始まる。
2013年のTVドラマ「まほろ駅前番外地」のエンディングテーマだったこの曲。今でも、ドラマのエンディングの雰囲気が目の奥に浮かぶ。最終回のエンドロールで泣いたなあ、とか。監督・脚本を務めた大根仁さんも会場に来られている。
他にも、坂本さんとは盟友のCornelius 小山田圭吾さんもPAの横に立って聴いてる。ライターの松永良平さんも開演前に見かけた。
2024年はCorneliusの30周年ライブへ行ったし、大根監督による「地面師たち」も大いに楽しんだ。松永さんのテキストにも幾度となく接した。自分がメディアを通じて敬愛する皆さんが同じ会場にきていて、一期一会な年末感をしあわせに感じる。
また会いたい人たち また観たいあの場面
戻りたい場所など 果たしてあったっけ
前半の山場は間違いなく「仮面をはずさないで」。ベースAYAさんのコーラスと坂本さんの歌がビシッと決まってシビれる。カッコ良すぎる。
盛り上がりから一転、静かなる名曲「スター」これも聴きたかった。亡くなった方を思う曲。自然に、2024年・春に亡くなられた ゆらゆら帝国 亀川千代さんを思う。
君の色 褪せなくて
みんな染まってるよ
来年もきっと みんな元気で
何度もきいた話 またしてる
「浮き草」はUSオルタナカントリーバンドのような呑気なグッドソングの味わい。「愛のふとさ」はアーバンなドラムンベース風情が際立つ。(ドラム菅沼雄太さん、サックス西内徹さんのコンビネーション凄まじいな)
ライブアレンジでは各曲のコンセプトが全面にあらわれてくるので、楽曲の理解が深まるんだ。ほんとすごいや。
そしてライブも佳境となる頃、これまた大好きな「ディスコって」が始まる。
ディスコは君を差別しない
ディスコは君を侮辱しない
ディスコは君を区別しない
ディスコは君を拒絶しない
今年も盆には みんな来る
さあ出迎えよう 迎え火で
サビで観客側に照明があたって、みんなの顔がよくみえた。楽しそうに踊ってた。やっぱこの感じなんだな。差別や分断を曖昧にする音楽空間・文化の存在。そのためにリキッドルームくらいのサイズ感で、(抽選ではあるけれど)みんなが気軽に来られるくらいの値段で、日本各地をまわる。ありがたい。
ディスコって 男や 女が 踊るところ
ディスコって 不思議な 音楽かかるところ
ディスコって 男や 女が 出会うところ
ディスコって いつでも 一人になれるところ
そこからの「ナマで踊ろう」が圧巻の演奏で、2024年のライブ体験で一番感情が昂ったかもしれない。
けして この世は地獄 なんて 確認しちゃだめだ
だって今みんなここにいる
ほんとそう。坂本さんみたいな人がそう言ってくれるのは、心づよいね。
アンコールでは、絶対に聞きたいと思ってた「君はそう決めた」もやってくれた。大満足。
この町で 生きている 行く人を みながら
そして肝心なとこでしらけてみながら
朝がきて 夜がきて また朝が 夜になって
また朝がきて また夜がきて 朝が
ラストは「悲しみのない世界」。いなくなってしまった人のことや、今の世界のことを思いながら、じっと聴いた。年末。
ほとんどMCをしない坂本さんから「良いお年を」と言ってもらえたので、2025年はきっと。

2024年の10曲
毎年、一年間に聴いたたくさんの楽曲から、特に印象深い10曲を選んでいる。年が変わって、(自分としては)もうずいぶん前の曲たちに思えるけど、どれも素晴らしいので、よければぜひご一聴を。
お寺のこと
福井ツアー 2024 Winter
福井に講演のお仕事で呼んでいただいて、一乗谷や越前たけふへ。雪もないし、思っていたほど寒くはなかった。
一乗谷は静かでしっとりしてていいところだった。朝倉氏の遺跡や博物館(残念ながら休館)はまたいずれじっくり見に行きたいな。
とにかく石仏が異様にたくさん残ってて放置されている。その雰囲気がなんだか朝倉氏滅亡後の無情感を今に伝えているような感じがあるのだ。


一乗谷では、未来の住職塾の仲間である真宗高田派の朝倉恒憲さんがご案内してくださった。
朝倉さんのお寺は今、岐路にある。少ない檀家さんで維持しきれなくなってしまった伽藍を解体し、2025年5月以降に新しい本堂を建築する。以前と同じような、所謂お寺らしい大きな建物ではなく、これからの時代・お寺のあり方に合わせた建築を検討中とのこと。
過疎問題はどこの地域でも深刻だけれど、朝倉さんのお寺は先端事例の一つになっていくと思う。今後の展開も非常に楽しみ。


一乗谷から越前市へ移動して、真宗出雲路派ご本山の毫摂寺さんで「塾生しゃべり場」を開催。地方開催の時は、未来の住職塾 塾生に限らず地元のお坊さんにもご参加いただけるようにしていて、真宗出雲路派や真宗三門徒派(なかなかお目にかかることのない宗派)の若い方や、テクノ法要の朝倉行宣さんも駆けつけてくれてなかなか盛り上がった!
夜は毫摂寺の食堂で、手作りの鍋料理をご馳走になり、薪ストーブを囲んで暖かな時間を過ごさせていただいた。寒いから肩を寄せ合うんだ。
なんと出雲路派のご門主様が同席くださり、とてもありがたく貴重な機会となった。

翌日は、浄土宗 福井教区青年会さんと企画をした勉強会「これからの葬儀を考える 〜お寺葬の事例を起点として〜」に登壇。
会場の 越前市 正覚寺さんはとても大きく歴史のありそうなお寺。その本堂を使わせていただくなんてありがたい。
本堂は広くて高くて一向に暖まらなかったけど、こちらでもストーブを囲んでお茶を飲んで、そういうのがなんかすごくいい。これが北陸の冬かあ。

こちらも住職塾仲間の大門哲爾さんがお声がけくださって、とてもありがたい。今回は大門さんのお寺には行けなかったけれど、次回は大門さんのお寺でやってる本堂でレコードを聴くイベントの時にいきたい。
勉強会が始まる前の、「ちゃんとしたのじゃない読経」を録音させてもらった。例えはよくないかもしれないけれど、"賄い飯"みたいで特別感ある。
Webメディア「お寺のじかん」で連載させてもらっている「お寺さんの音景色」の記事の中で聴けるようにしたので、よければぜひ。
勉強会終了後、縁あって近くに偶然きていた塾生仲間と一緒に、夜は越前たけふの町へ繰り出した。2軒目に行ったカウンターのみの居酒屋「あおば」が素晴らしすぎて、、、絶対にまた行きたい。

福井ツアー最終日は、初日にも行った毫摂寺さんにて「お寺の広報研修会」に登壇。企画してくださったのは、越前市 長慶寺 泰圓澄一法さん。

泰圓澄さんが、越前市の観光協会さんにも声をかけてくださったのがよかった。越前市観光協会では数年前に市内の寺院にアンケートを行い「越前国府の御朱印・御首題巡り」という企画を実施。観光協会側から地域の寺社仏閣に呼びかけて、「観光客が来ても大丈夫か?」という段階から確認をして巻き込みを図ったとの由。観光資源としての寺社仏閣を大切に考えている観光協会さんなので、今後は共同で企画を検討するワークショップなどを開催しても良さそう。
勉強会終了後、泰圓澄さん推薦のお店で、"越前市のキラーコンテンツ"こと、カニをいただきました。でかい!!

その後、二か城を巡ってから東京へ。福井を大満喫。
東海ツアー 2024 Winter
福井の翌週は、岐阜〜名古屋へ。

ごっちゃんこと、五藤広海さんのお寺へ初訪問。明智城跡のふもとのお寺という点がアツい!山城マニアにはたまらないエリア、可児市。
近隣を車で巡って歴史や地形を教えてもらうと、町の経緯や構造が見えてくる、ブラタモリみたいな時間を過ごした。

翌日は名古屋にて、未来の住職塾NEXT 受講生たちが企画してくれた集いに参加。会場は、安心の教西寺さん。和やかで楽しき夕べ。

各地でお世話になった皆さんに、大きく感謝。
城の巡礼
丸岡城(36・福井県坂井市)


福井城(137・福井市)


美濃金山城(143・岐阜県可児市)


犬山城(43・愛知県犬山市)


名古屋城(44・愛知県名古屋市)

味の巡礼
朝倉の里 利休庵(一乗谷)

居酒屋 あおば(越前たけふ)

万葉庵(武生)

タンドゥール(近鉄名古屋)

鳥栄(伊豆長岡)
