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TMR編集室日誌22.06.14|四国八十八ケ所霊場にて、未だ巡礼せず

Podcast「Temple Morning Radio(略称TMR)」の編集・配信を担当する遠藤卓也がお届けする、仏教文化・お経のフィールド録音等に関するエッセイ

「音の巡礼」という名前のプロジェクトをやっていながら、これまでお遍路をしたことがありません。
以前に四国八十八ケ所の札所である善通寺にピンポイントでお参りしたことはありましたが、歩いて巡る「巡礼」は未体験。お遍路への憧れは前々からありながらも、まだそのご縁はないままでいます。

6月初旬、とある雑誌の取材で伺った金倉寺(こんぞうじ)さんは四国霊場第76番札所です。札所でありながら、ここ十数年で安産や子授けの祈願寺としての認知が高まっているお寺で、その経緯と工夫についてインタビューするために香川へと飛んだのです。

空港で出迎えてくださったのは金倉寺 副住職の村上哲済(てっさい)さん。未来の住職塾の修了生でもあります。

金倉寺の "味と歴史" を楽しむ

金倉寺についたのがちょうどお昼時、取材を始める前にまずは腹ごしらえということで、お寺の目の前にあるはなや食堂さんへ。うどん県に来たからにはランチはうどん一択。店構えからして、いい予感しかない。

哲済さんがいつも頼んでいるという、玉子うどんにエビのかき揚げと竹の子の天ぷらをつけました。甘く煮た竹の子を揚げた天ぷらは初めての味でしたが、これがとても美味しい。衣の色が黄色いのも、なんだか特徴的ですね。うどんの美味さは言わずもがな。薄い色のお出汁と、噛みごたえのあるうどんは本場ならでは。

お坊さんと一緒だと、地元の人しか行かないような良い店を教えてもらえるというのは僕のお仕事の一番の役得であると断言できます(笑)
この辺りで一番古いと言われているうどん屋さんらしく、なんと乃木将軍も食べていたのではないかとのこと。実は金倉寺さんにはその昔、乃木将軍が住んでいたことがあったそうで、そのお部屋も残っています。(襖絵がすばらしいお部屋!)

金倉寺の "音" をたずねる

境内にある諸堂をご紹介いただいたあとに行なったインタビューは、とても参考になる考え方や工夫にあふれ、その後の雑談にも花が咲きました。

哲済さんご夫妻は、お互いが好きだったブラジル音楽がきっかけで知り合ったのだそう。元々はお寺の生まれではない哲済さんですが、奥様のご実家が金倉寺だったというご縁から仏門へ。

音楽好きのお二人なので、コロナ前は頻繁にお寺でのライブイベントも受け入れていたとか。以前には僕が好きなアフリカのムビラ奏者、Garikayi Tirikotiの来日公演も金倉寺で行われたことがあり、たまたまラジオで告知を耳にしていたのを思い出しました。

また、地元ミュージシャンとのご縁から、安産祈願をうけた方にお渡しするお寺オリジナルのコンピレーションCD「こゑ紡ぐ」も制作されています。これがまた、気持ちの良い曲ばかり!

お寺にはまだまだ在庫があるみたいですよ!

もうひとつ気になったのは、音曼荼羅(おとまんだら)なる音楽設備。異なる音階で調律されたおりんが逆さに釣られていて、それぞれに十二支の名前がふられています。
自分の干支のおりんを鳴らしたあとは、家族や友人などの干支を続けて鳴らすと残響音が不協和音にならずに融和していきます。
哲済さんはその音の組み合わせで「ああ、あの方がお参りに来られたのだな」とわかることもあるとか。
鳴らした音で自分を認識してもらえるなんて、嬉しい。

導かれるように変化しているお寺、金倉寺

金倉寺さんは、お遍路の札所寺院というだけでなく子宝や安産に関する祈願や、初参りや七五三など、生老病死の「生」にまつわる応援やよろこびを共にしてくれます。

元々、ご自身も不妊に悩んでいたことと、お寺ではずっと訶梨帝母(かりていも)様をお祀りしていることもあり、子授けや安産の祈願に力を入れるようになったとか。
自分で企画したことよりも、誰かのやりたいことを受け入れてはじめた活動のほうがうまくいく。」とご夫婦が口を揃えて仰っています。その経緯を聞いていると、まるでお寺で大事にお祀りしている訶梨帝母様や、智証大師(ちしょうだいし)様に導かれているかのよう。
ご夫婦で入寺なさって以来、どんどん変わり続けているお寺なのだという印象を受けました。次にお参りするとしたら、また違う顔になっていそうで楽しみです。

そんなこんなで取材後も遊ばせてもらっていたらすっかりいい時間に、、、。あっ、憧れの四国遍路の札所寺院にお参りしたものの、今回も一か寺だけでした。またもや巡礼せず!

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