三題噺⑥
練習をしてみる。多分やり方間違ってるよって話もある。つづけることが多分大事なので,やってみる。
※ ライトレというアプリを使ってお題を決めています。
お題: 無職 姿なき 餌
何らかの仕事をしなければ,何らかの姿を持たねばならない。
お花屋さんになりたければ人の姿に,動物園で展示される動物になりたければ動物の姿にならなければならない。
太陽は光と言う姿を,風は空気という姿を持っている。
逆に言えば,姿を持っていれば何らかの仕事をしているともいえる。
そうなると私は1つの仕事もしていない,この世で唯一の無職ともいえる。
私は生まれた瞬間から姿がなかった。
姿がないから食べなくても眠らなくても問題ない。ここにいることと向こうにいることは同じ。いるのもいないのも同じであった。
私の意識はただここにあった。
ただ,ここにいる意味が分からなった。何も世界に影響を与えない。私と同じように意識を持った存在が生まれるのも見たが,皆姿を持ち,生き生きと暮らしていた。
姿がないから私には寿命がない。突然生まれたその時から,ずっと生き続けていた。
しかし生まれてから数えきれない年月が経ったある日,この世界に唯一の希望ができた。それはある時からいつの間にか存在していた「猫」という生き物にだけ,私の姿が見えるようだということだ。
初めてその視線に気づいたのは,もう数百年も前になる。今までにない感覚,生まれたその瞬間よりも明確に,自分の存在を感じた瞬間。「他の存在から見られる」という感覚。
それ以来私は猫を探しては猫のそばにいるようになった。
意識はいつだってどこにでも飛ばせる。世界中の猫にあった。時に餌場の場所や,彼らの敵となる人間の来ない場所を教えてやったりもした。
猫たちは私になつくようになった。
私が意識を一点に置いてじっとしていると,いつの間にか猫たちが集まっている。
死に際の猫がいれば,私は猫が落ち着いて眠れそうな場所を探して,意識がなくなるまで傍にいた。
私は自分を取り囲む猫を見ながら,確かに自分がそこにいることを感じていた。