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ほんとは好きなものなんてないのかもしれないね

好きなものってなくちゃいけないんだろうか。趣味特技ってなくちゃいけないんだろうか。

就職活動、転職活動、自己紹介。人生の様々な場面で「好きなこと」とか「趣味」を聞かれる。私はそれが嫌いだ。だって、よくわからない。

絵を描くのは好きだ。と、思ってはいた。けど、たぶんほんとはそんなに好きじゃない。幼い時に多少なりとも人より優れていた(それでも少し描けるくらいのもの)から、好きと言っているだけな気がする。

文章を書くのは好きだ。好きだけど、本当に「好き」な人の足元にも及ばないのだ。毎日文章書いて、毎日楽しく生きていけるみたいな、そんなレベルの好きなんてない。

世の中、たくさん好きなものを持ってる人がいる。私はそれが羨ましい。

自信を持って好きと言えるものがあること、それをなんの気負いもせず「好き」と言えてしまうこと。

なにかを、「好き」じゃないといけない。と、私はどこかで思っている。好きなことをやる人がカッコいいから。好きなことをやれてる人は素敵だから。けど、世の中そんな人ばかりなんだろうか。どうだろう。

私は絵を描いては絵が嫌いになる。自分の下手な絵が嫌いだから。描くのが好きと言ったところで、所詮その程度なのだ。

文章を書いて、私は私の文章を好きになる。けれど、結局「こんな何の価値もないものを」と思う自分がどこかにいる。

英語を勉強しても、ドラマを観ていても、なにをしてても、私は何かを好きだと思って、そのたびに何故だか少し嫌いになる。

結局のところ、自分のことがそんなに好きではないのだ。自分のことが好きではないから、自分が好きなものが信じられない。自分の好きなものが嫌いに思える。そうなんじゃないかと、最近になって気付いている。

本当のところ、好きなんてものは気楽でいい。人と比べるものではない。あなたの好きと私の好きは、どちらも同じ好きだから。あなたの方が強い好きだとか、そんなことはない。

けれどもどうしても、私の好きなモノはなんて小さいんだろうなぁ、と。不意に思ってしまって、そしてまた、自分が少し嫌いになるのである。

私が好きなもの、なんて、本当はどこにもないんじゃないか。自分の手元になんにもない気がして、手が冷え冷えとして恐ろしかった。

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