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「日常系」を分類する新しい見方-『ゆるキャン△』と『スローループ』から見る2つの交わらない日常系アニメ-

結論:「日常系」と呼ばれるアニメには2種類あり、その区別をすることがとりわけ重要である

「日常系」とまとめられるアニメには実は2つの種類があるのではないかということをを発見した。そして見る人にとってそれはかなり重要な分類なのでは?と思う。

これを『ゆるキャン△』と『スローループ』というふたつのアニメを題材にしながら語っていきたいと思う。

2023冬アニメ『スローループ』

「日常系」に存在する2つの種類とは

便宜的に『スローループ』が属する日常系を「日常系A」、『ゆるキャン△』は「日常系B」とする。
なぜ『スローループ』の方がAかというと、多くの日常系アニメは『スローループ』側だからだ。
(『スローループ』を選んだのは直近に見たというのとアウトドア系で一致するからで、『ごちうさ』や『たまゆら』等でも置き換えていい。)

ちなみによくブロガーやアフィリエイターがこのあたりで書く「まず日常系とは~」のようなことは書かないので、ご安心いただきたい。本題だけストレートに書く。

何がこの2つを分かつのかというとそれは
「長期的慢性的な悩み・困難・ストレスの克服の有無」だ。

日常系Aは(というよりほとんどのアニメは)何かしら困難や悩み、トラブルなどを乗り越えていく主人公たちの姿を描いている。特に日常系では派手なバトルや爆発や魔法なんかがない分、より人間関係(友達や家族など)の悩みや辛い出来事に焦点を当て、それを乗り越える姿を描くことが多い。

一方で日常系Bではそれらが一切ない。克服どころかそもそもそのような悩みやストレスが登場人物の身に発生しない。
過去のnoteでこの辺りは詳しく書いたが、読まなくとも大丈夫。気になる人は↓
映画『ゆるキャン△』の愛とファンへの裏切り

この違いは見る側の心理に大きく影響する。
『ゆるキャン△』と『スローループ』を例にもう少し詳しくこの違いについて具体的にみていく。

なんとなく分かったよ、という方は具体例は飛ばしても大丈夫。
具体例の後になぜこの分類が大事なのかを書く。

日常系A『スローループ』の具体例

日常系AとBを分かつのは「長期的慢性的な悩み・困難・ストレスの克服の有無」と書いた。これは克服することで成長や希望につながるような前向きな悩みも含まれる(あの子と仲良くなりたいな、など)。
『スローループ』にはこれがある。

まず家族関係だが両親が亡くなっているし再婚もするし仲良くならなければならない連れ子もいる。
学校でも「あの人と仲良くなれるかな」という人間関係の悩みも描写される。

周りの人物たちも、例えば二葉は自分の好きなことがなかなか言えずに悩んだり、他人からどう思われるのか気にしたりする。

もちろん最後は乗り越えて美談に変わるし、それが大半のアニメのストーリー構成だと思う。

視聴者はそこに感情移入して感動し、観た充実感を味わうことができる。飽きずに見続けられるのも、困難→克服→困難→克服という緊張と緩和の波が小気味よく連続するからであろう。

日常系B『ゆるキャン△』の具体例

いっぽう、『ゆるキャン△』ではこれがない。

『ゆるキャン△』

具体例を挙げると、リンちゃんは野クルに誘われるも別に強制関係はないし、実際に入ることもしない。
クリスマスキャンプに誘われる場面も、誘う側も「来てくれたらうれしいな」程度で済ますし、リンちゃんも「どうしよう、行った方がいいのかな」とか「仲良くできるかな」など人間関係のありがちな葛藤は一切ない。
あくまで自分本位に決めていく。

ひとりでキャンプしたければ自由にするし、誘いたければ誘うけど強制はしない。誘われた側も行きたければ行くしやめたければやめる。

よくある「友達の友達への嫉妬」もない(なでしこからみた斉藤さん、リンちゃんから見た綾乃ちゃんなど)。

「誰かと仲良くできるかな」とか「キャンプしてるの変かな、どう思われるかな」とか揉め事も一切なく、各キャラが好きなように動いている。

乗り越えるべき長期的・慢性的な困難がなく、ストレスフリー。
これが日常系Bである。


アニメ『日常』なんかもこちら側かなと思う。

注) 映画の『ゆるキャン△』は完全にAに足を踏み入れてしまっているので記事内の『ゆるキャン△』はアニメ版についての言及である。

この対立軸の生み出すもの

この「長期的慢性的な悩み・困難・ストレスの克服の有無」が視聴者に与える影響は何だろうか。
この違いは果たして重要なのだろうか。

ひとつのこたえは「感情移入」にあると思う。

日常系Aでは「感情移入」が容易にできる。登場人物たちの立場に立って困難や悩みに共感して、どうやって乗り越えるのか見届ける。
そしてその成長や結果にじんわりと温かくなる。
日常系Aの特徴はここにある。登場人物と一緒に辛くなり、登場人物と一緒に乗り越え、登場人物と一緒に成長や達成感を感じるのだ。

日常系Bでは共感するタネは少なくなる。
リンちゃんやなでしこに感情移入してるかというと、なんか違う。
逆を言うと、感情があまり動かされないという特徴であるといえるだろう。

日常系には2つの種類があることを知っておく必要性

個人によってどちらを面白いと感じるかは異なる。
『ゆるキャン△』は好きなのに『スローループ』は好きじゃない、逆に『スローループ』は好きだけど『ゆるキャン△』はあんまり・・・
という現象が起きる原因の1つはこの違いにあるのではないかと思う。

AもBもそれぞれ長所短所がある。
感情移入して飽きずに緊張と緩和を繰り返される展開が好きな人はAが好きになりやすくBを退屈と感じやすい。
逆にAは疲れるからちょっと苦手、何も考えずにゆったり見ることができるBが好きという人もいるだろう。

「日常系アニメ」が好きなはずなのになんかこの作品は面白くないな・・・と感じたらぜひこの対立軸がその原因かもしれないと思い出してほしい。

知っておくことで、今から見ようとしているアニメの特徴を自分の好みやそのときの気分と照らし合わせて検討してほしい。

疲れているときにはBが観たいだろうし、温かくなりたい気分のときにはAがいいだろう。この対立軸を知らないでいると、観始めたものの「なんか違う」と切ることになってしまう。

そうではなくて、3話くらい見て「あ、これはAだ。でも今はBが観たいからこの作品は別の機会にとっておこう。」と良作を簡単に切ってしまうことを防ぐ1つの助けになると思う。

まとめ

もちろんこれはアニメを分類する上での1つの考え方でしかない。
単純にジャンル化できるものでもないし、勝手に分類してラベリングするようなものではない。
自分の中でアニメ選びの1つの軸として持っておき、その他のいろんな要素(キャンプや釣りなど扱っている題材の好き嫌いや、キャラの可愛さなど)を総合的に見た方がいいだろう。

余談になるが日常系Bの作り手は多くの工夫が必要だな、と思う。
視聴者を引き付ける何かを工夫して作り出す必要がある。

例えば『日常』はギャグセンスが光って面白い。
では『ゆるキャン△』はなにが視聴者を引き付けるのだろうか?
音楽?景色?

自分は「ストレスの無さそのもの」が好きだ。
詳しくは過去のnoteで書いたので、興味のある方はぜひ。


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