自転車でカナダ~アラスカを旅した話 #9モーテル
2018/6/2
天気が崩れるかもしれないという予報だったので迷ったけど、今日ウィスラーを出発することにした。
11時頃までだらだらと荷物をまとめたりしていたけど、結局最後はルークに会えなかった。メールアドレスを聞いていたからお礼のメールを送ったけど、メールは返ってこないままだ。
神戸でバーをやっているというような話だったから、いつか手土産を持ってお礼に行きたいと思っていた。でも連絡がつかないのに、一体どうやって彼のいる場所を探し出せばいいのだろう?
昼頃ホステルを出発。
街中で必要な食料や酒、備品を探してうろうろする。
コンビニが見当たらず探していると、日本食を扱っている店を発見。
店員さんが日本人で日本語が話せたから煙草を買える店を聞いたりする。
もうこの時点で禁煙を諦めた。
天気は晴れ、しばらく絶景の中を北上。
この辺りは下り基調で自転車専用レーンもあって快適だ。
一時間も走るとペムバートンの街に入る。
今日はこの街のキャンプ場に泊まろうと思っていたのだけど、、、
キャンプ場の看板にはFullという文字が、、、
しょぼくれているとおっちゃんが話しかけてきた。話していて気付いたのだけど、今日は土曜だった。どうやら週末はキャンプ場も込み合うらしい。
街を抜けて北上を続ける。
それにしてもなんて美しい風景なんだろう。
うっとりしていたら午後六時。この先にキャンプ場がないことは知っていたので、やむを得ずモーテルなるところにチェックインすることにした。
モーテルというのは噂には聞いていたけど車がすっと入れる小さなホテルの総称で、MotorとHotelを掛け合わせたような具合なのだろう。よくアメリカ人やカナダ人はロードトリップといってバイクや車で旅行しているけど、その距離感というのが日本の旅行の感覚とは全然違う。数千キロという距離を普通にドライブしてしまうのだ。
そんな人々が主に利用するのがモーテルで、じゃあモーターのついていない自転車では泊まれないのかというと全然そんなことはない。ただ薄汚くて自然志向の強いチャリダー達は大体道端とか、良くてもキャンプ場とかに泊まるのが常らしい。
自分はというと先日の熊さん襲来によってビビりまくっていて、野宿などというものは絶対にしたくない心境だった。しかも明日からまた天気が崩れるという。
で、やってきたのがこちらのモーテル。
親切な韓国人のオーナーが営んでいて、値段はキャンプ場やホステルに比べて割高だけど、他に選択肢のない自分はしれっとチェックインした。
しかもキャビンに、、、
というのも週末で部屋が全て埋まっていたのだった。
もうこうなったら贅沢いてこましたろう。
うむ、なかなかよろしい。
それでは食事にしようではないか。
何故か家の中でキャンプ道具フル活用していたわけだけど、これはこれからやむを得ず始まるであろうキャンプ生活の練習である。
この先いつまでも泊まるところがある場所を走ってはいられないだろう。
それにしても、この旅始まって最も美味い晩飯だった。
結局夜十時を過ぎるまでウイスキーをちびちびやっていた。
明日は天気が悪いらしいけど、もう一泊するなら安くしてくれるとオーナーが言っていた。この先の坂を登っていったところに湖があって景色が良いから見に行ってみたらどうだ、とも言っていた。
酔っ払って気分が良くなってしまっていた自分は、もう一泊する気満々になっていた。
「この先の坂」とオーナー言っていた坂こそが、この旅最大の峠だったということを、この時の僕はまだ知らなかったのである。