自転車でカナダ~アラスカを旅した話 #7 ウィスラー
引っ越しとか仕事とか遊びが忙しくて更新が遅くなってしまった。
決して熊に襲われて完結したわけではないのであしからず、、、
2018/5/31
昨夜はひどい目に遭ったけど、太陽が出れば世界はどうやら通常運転しているようだった。
ほとんど眠れなかったので腹が減った。でも食材は全部食べられてしまったので、とりあえず熊さんが唯一食べられなかったものを朝食としよう。
カレーのルーのみ。
はちみつ等も入っているバーモントカレーだったけど、どうやら刺激の強いものは苦手のようだ。
ひもじい思いをしながらカレーのルーを啜っていると、どこからともなくお客さんがやってきた。
アカリス。
ちょこまかちょこまか動き回って何をしているのだろう?と思って見ていると、どうやら熊さんの食べこぼしたマルちゃん正麺の欠片を食べているのだった。
掃除を手伝ってくれてありがとう。
眺めていたら昨夜のことで張りつめていた気持ちが癒されてきた。まあこの頃はまだアカリスのウザさというものを知らなかったんだけど。
それにしてもいろんな連中がやってくる。
荷物を片付けて出発の準備をしていると、炊事場で体の大きなおじさんに声を掛けられた。昨日カヤックに乗っていた人だ。
「自転車でキャンプしているのは君かい?」
すごくいい人だった。いろいろ聞かれて旅の予定をざっくり伝えると、それはワンダフルだと言って喜んでくれた。
ついでに熊さんが怖いということを伝えたらこんな言葉が返ってきた。
「まあこの辺の熊はブラックベアで、彼らはフレンドリーだから大丈夫だ。でもユーコン準州に入ったらグリズリーがいるから気をつけろ。They kills you」
安心したような不安になったような、よくわからない気持ちになった。
結局おじさんには昨夜の出来事を話さなかった。実際に僕は数時間前まで、あなたの言う「フレンドリーなやつ」に怯えまくっていたのだ。
最後におじさんと握手を交わして出発。
おじさんの手は大きくてごつごつしていて、まるで熊のようだった。
ウィスラーまで登り基調で、アップダウンもなかなかある。
でもそれが気にならないくらいの壮大な景色だった。
スコーミッシュの街に入って、セブンイレブンでマフィンを買った。
それからアウトドアショップへ行ってベアスプレーとロープ、カラビナを購入。
ベアスプレーというのは熊除けのスプレーなのだけど、中身はほとんどカプサイシンである。バーモントカレーも食えない熊には絶大な効果があると思われる。
ロープは食料を木に吊るす為のもの。これも今朝みたいにひもじい思いをしない為の方法で、今後匂いの出そうなものは全て木に吊るすことにする。
そこからどれほど登ったか。
途中ロードバイクの兄さんに追い抜かれたのだけど、追い抜きざまに声を掛けられた。
「ヘイ、どこまで行くんだい?」
「北!」
「HAHAHA!クレイジーだな!」
実際どこまで行くのか決めていなかった。
僕はとりあえず北を目指していた。
ウィスラーの街に入ったのは午後四時頃。
ベアスプレーもロープも買ったけど、今夜はキャンプなんてしたくなかった。バンクーバーで会員登録したホステルの系列店がここにもあるらしかったので、迷わずそこへチェックイン。
四人相部屋のドミトリーだろうが、とにかく壁があって屋根があるということに安堵した。
窓からの景色もいい感じだ。
ホステルの中はこんな感じ。
外に出ると夜の7時でこの明るさだ。
今日は寝不足と移動で疲れたから、もう買い出しにも出たくなかった。
洗濯とシャワーを済ませて、ラウンジで酒飲みながら日記書いて寝ようと思った。
が、カナダという国は僕を寝かせてはくれないらしい。
日記を書いていると、ラウンジで飲んでいたグループのひとりがカタコトの日本語で話し掛けてきたのだった。
「どこから来たんだ?俺は日本で働いてるんだ。良かったらこれから一緒にビアガーデンに行かないか?」
気付いた時にはトラックの荷台に乗せられて、完全な飲酒運転でビアガーデンへ向かっていた。
意味が分からないけど、まあいいか。
最初に声を掛けてくれたカナダ人のルークと、あとはフランス人、ブラジル人、オーストラリア人、イギリス人の連中としこたま飲んだ。
ビールはいろんな種類を飲み比べることができて、どれもとにかく美味かった。
再び荷台に乗ってホステルに戻り、ここで解散かと思ったら持ち帰ったビールで飲み直すという。
どんだけ飲むのかこの人たちは、、、
と思いながらも付き合った。最終的にはフランス人のフィリップが一服しようと言い出して、みんなでベランダに出て煙を吹かす。
実はこのグループ(といってもホステルでばったり会っただけの連中だが)の最年長だったルークはマウンテンバイク大好きのキチガイで、しばらくここに滞在しながらダウンヒルを楽しんでいるという。
僕にとってこれは願ってもないチャンスだった。先にも書いたようにウィスラーマウンテンバイクパークは世界的に有名なダウンヒルのメッカで、下ってみたいとは思っていたけど右も左もわからない自分は半ば諦めかけていたのだった。
「もし本当にやりたいんだったら明日の朝11時にロビーに来な。連れてってやるよ」
本当に毎日がトップスピードで駆け抜けていく。
そのスリルは正にダウンヒルそのものだった。
解散する間際、ルークは何やら怪しいカプセルをくれた。
「厳しい旅になると思うから持っとけよ。いいか、本当に体がしんどくて動けなくなったらこれを飲め。大丈夫、合法だ」