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米国向けプロダクトの開発体制構築 Part 2 - 採用・ビザの話

前記事では、米国向けプロダクトの開発拠点を日米のどちらにすべきかや、米国拠点の設立場所をどこにすべきかなどについて整理しました。本記事ではその続きとして、実際に体制を構築する際に遭遇するチャレンジである英語が話せるエンジニアを日本で採用する方法と、コアメンバーを米国現地に送るために就労ビザを取得する方法についてまとめようと思います。

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英語が話せるエンジニアを日本で採用する

米国向けプロダクトを日本で開発する場合、または日米のハイブリッドで開発する場合、日本で英語が話せるエンジニアを採用する必要がありますが、日本では英語話者のパイは小さく、採用のハードルは非常に高いです。さらに他の条件(日本語も話せてほしい、特定の技術スキルがほしいなど)が組み合わさると、パイはどんどん小さくなっていきます。

自分は初期の開発体制構築の際にこのハードルに直面し、試行錯誤しながら半年かけてようやく2名のエンジニアを採用することができました。ここでは、その際に利用して効果的だと感じた採用チャネルを3つ紹介します。

LinkedIn

1番効果的だと感じたのはLinkedInです。実際に上記の2名のエンジニアはLinkedInを通して採用しました。日本ではそこまで普及していませんが、日本にいながらもグローバルな環境で働いている人の多くは利用しています。

自分はRecruiter Liteプランを用いてエンジニアにアプローチしました。本プランでは利用言語でフィルターすることができず、メッセージを送る前に各エンジニアのプロフィールを一人ずつ確認し、その方が本当に英語話者であり、かつグローバルな環境での経験があるかどうかを確認する必要がありました。手間はかかりますが、月額わずか$170(2024年10月時点)であり、スタートアップにとっては手頃な価格です。

Japan Dev

Japan Devは、主に日本在住の外国人エンジニア向けの採用プラットフォームです。優秀なエンジニアが集まっており、日本で英語話者を探している多くの企業が利用しています。ただし、日本語と英語の両方が話せるエンジニアはそれほど多くなく、バイリンガルの方を探している場合は最適な選択肢ではないかもしれません。

ビズリーチ

BizReachは、ハイクラスの人材を対象とした採用プラットフォームです。英語が話せるエンジニアはその希少性から日本ではハイクラスとみなされ、彼らの多くがビズリーチに登録しています。LinkedInやJapan Devと比べると英語話者の数は劣りますが、メルカリや楽天といった日本企業であるもののグローバルな環境で働いているエンジニアが一定数存在します。

コアメンバーを米国に送るためにビザを取得する

米国に開発拠点をもつ場合、コアメンバーを日本から何人か送る(または自ら行く)ことになる場合が多いですが、その際に必要となるのが就労ビザの取得です。米国の就労ビザ取得は年々難易度が高まっており、かつ準備に時間もかかるので、早い段階で移民弁護士に相談することをおすすめします。

以下では、主要な選択肢である E-2ビザL-1ビザO-1ビザ の3つについて書いています。ディスクレイマーとして、ビザを取り巻く状況は日々変わるため、詳細は移民弁護士などに確認するようにしてください。

E-2ビザ

いわゆる投資家ビザと呼ばれるビザで、多くのスタートアップにとって第一の選択肢となります。一定の条件下で、米国でのビジネス開始・遂行のために日本国籍者が現地に行くことができます。Eビザは米国の移民局への申請がなく、日本の大使館・領事館のみで審査が完了するため、比較的スピーディにビザを取得できます。また、承認率も他のビザと比べると高いです。

ただし、条件として投資要件(米国に一定の投資をおこなっている)や現地採用要件(米国市民や永住権保持者を採用している)があり、それらの難易度は年々高まっているので注意が必要です。米国でビジネスを開始するために申請しているのに、そのためにはすでに一定の投資や現地採用がされている必要があるという、ニワトリタマゴの状態に陥りがちです。

L-1ビザ

Eビザの取得が難しい場合、第二の選択肢としてLビザがあります。Lビザは大企業の駐在や社内転籍で使われることが多いですが、スタートアップでも申請することができます。Lビザはまず移民局の承認を得る必要があるため、審査がEビザよりも長くなりがちで、かつ(特にスタートアップの場合は)Eビザよりも審査は厳しいです。また、申請するメンバーは少なくとも1年はその日本企業で働いている必要があります。

O-1ビザ

O-1ビザは卓越能力者ビザと呼ばれ、ある分野において優れた能力や実績を持つ人に発行されるビザです。出版物などの実績やメディアへの出演、著名な人からの推薦状などの要件をもとに審査されます。過去に何か大きな実績をあげたことのある人は取れる可能性があり、選択肢のひとつとなります。

その他の選択肢

今回の文脈だとあまり現実的な選択肢ではないですが、可能性としては以下のようなものもあるので紹介だけしておきます。

ひとつはH-1Bです。毎年3月に抽選があり、当選して申請が承認されると10月から就労することができます。ただしH1-Bは年々倍率が高まっており運の要素が大きいのと、抽選から就労開始まで半年程待つ必要があるため、スタートアップが現地にメンバーを送るにはあまり現実的ではありません。他のビザ申請のバックアップとして抽選に応募するのはありだと思います。

もうひとつはグリーンカードの抽選(Diversity Visa Program)です。米国の多様性を担保する目的として、移民が少ない国籍の人が抽選でグリーンカードを取得することができるプログラムです。日本人も対象であり、毎年1回抽選があります。当選率は1%前後と低いですが、応募は簡単なのでとりあえず応募だけしておくとよいでしょう。ちなみにメルカリの山田進太郎さんは一発で当選したようです。

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ぴかし
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