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短文| バイバイ 大切だった君

「どこで間違ったのかな」
不自然に落ちてきた葉っぱを
右足で隠すように踏んだ

昨日はどうだった?
その前は?

このところあわただしく過ぎていくから
君のことなんか、とうの昔に
もうどうでもいい存在になってしまっている

どうでもいい、って
『キライ』よりも酷い言葉だな、と
ちょっと可笑しくなって、誰も居ない公園で声を出して笑った

風がふいて 
軽くなった髪が笑った顔を隠していく
こうして大人になったら
なんでも隠すようになって。
だから君もあの時 嘘をついたのかなって。

缶コーヒーから出る湯気に、少しだけ温かみを感じる
ほのかに湿った肌を、
また 風が撫でるようにふいた

こんなふうに空いた時間に 
君のことを思い出してみる
前はさ、
「会いたいなぁ」
「しゃべりたいなぁ」
とかって 思った時もあったけど

時間の流れって残酷?
それとも君が変わったの?
いつまでも変わらなかった僕がダメだったかな

環境に惑わされて社交辞令が行き交うど真ん中で
君の見ていた景色って何だったんだろう
グレーな言葉に浮かれたり落ち込んだりして
僕なら、本音で話せたのにな。
・・・・僕なら。

さぞかし、その世界は楽しくて
さぞかし、毎日眠れないほど楽しんでるんだろうな

そこには友達なんかいないよ
君の求める『トモダチ』は居るのかもしれないけれど。

一口、缶コーヒーを飲む。
はぁ、と吐きだした息は空に交じって溶けた
僕しかいない公園は、ただただ静寂に包まれていて。

「どこで間違ったんだろうな」
終わりはどこだったかな
もう思い出せないほど 君はどうでもいい存在になってしまっていて。

カラになったコーヒーが
どんどんと体温を奪っていく
冷たくなっていく手をこすりあわせた
それは冷めていく思い出のようで
ひらめいた馬鹿みたいな例えに、また声を出して笑った

ふと 革靴に雫が落ちてくるのが見えた
雨かと思ったけど雪だった
今は外回り中のちょっとした休憩で、
そんなちょっとした時間に 
ふと思い出していた 君のこと。

どうしたらよかったかな
どうしたら今でも
『大事な存在だ』って言えたかな

ふと 考えてみたけど
もう どうでもよくなってしまっていたから
「終わったなぁ」
と思った

そうだ、どうでもいい存在から繰り上がることはないんだ
それは、もう『終わり』ってこと。

どこで間違ったかなんてもうどうだっていいこと

ゴミ箱に缶コーヒーを投げ入れて
まるで君を捨てるようだなと思った瞬間に、また声を出して笑った

冷たさを伴う風が悲壮な光景にさせるから
こんなくだらない言葉が思いつくんだな
と ひとしきり笑ったあと
不自然に落ちてきた葉っぱを左手で握りつぶすように包んだ

来た時と変わらず ここは静寂に包まれていて
風がふいて 座っていたベンチに何枚も葉っぱが落ちていく

それを見ながら 小さく手を振った

バイバイ
ともだち

バイバイ
ともだちだった君

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