【感情紀行記】闊歩
週に一回、とある都心部にある、綺麗である程度高層な建物にスーツを着て向かう。周りには目が眩むほどの煌びやかな経歴と、身なりを整えた人が忙しなくすれ違っている。日本の中心である。
溢れんばかりの警備員や守衛の人々に警備を固められたその中で、自分も業務を開始する。時々通路を歩いていると、お偉いさんに間違われ敬礼をされたりする。格好も、険しい顔も間違われる要因なのかもしれない。しかし、そんな中で、胸を張ってコツコツと廊下の石に革靴があたる音を響かせながら闊歩していると、不思議な気持ちに見舞われる。さっきまで建物の外にいた自分は、社会の一端にいる一人の国民だったはずだ。しかし、受付を通り、その庇護の下に入った途端、自分は何も変わっていないはずなのに、何か偉くなった気分に襲われる。周りの人に支えられて動いているこのシステムが、何か自分を中心に回っているかのように思えてくる。自分は週に一回だけだが、毎日ここにいたらおかしくなるだろう。きっと傲慢になり、周りの話なんて入ってこない。
こうやって権力を持った社会悪的嫌な人は製造されていくのだろうとさえ思う。しかし、この週一回の業務は自分の自己肯定感をかなり支えているのは間違いない。普通の人にはできない偉い気分を味わえるのだ。胸を張って道の真ん中を歩き、周りのものを見るのだ。忘れてはいけない初心と、覚えておきたいこの感覚。