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ヴェルモットの歴史と購入ポイント 石川遼平

~ヴェルモットの歴史~
フレーバードワインを代表するヴェルモットは元来、滋養強壮や医療に軸を置いた薬酒でした。ヴェルモットの語源は1500年代ドイツにあり、白ワインにニガヨモギ(wormwood)の花を浸漬して砂糖を加えたWormutというものに由来します。

当時は、薬局で調薬草師が造るものでした。いわば民間療法のように出回っていたこのヨーロッパの薬酒は、15世紀の大航海時代に保存性の高さから、長い遠方の暑い国への搬送に適していると舟に積まれることもあったのだそうです。材料のひとつであったキニーネ(キナノキの樹皮に含まれる成分)はマラリアの予防効果が知られ、植民地先の国でも重宝されました。

時は流れ、1700年代後期。イギリスで産業革命が起き、ヴェルモットの世界が大きく変化します。富の拡大、交通網の整備、嗜好品の増加、現代医学の確立。今までの民間療法の薬酒は嗜好品の一部となっていきました。

特にイタリアとフランスでは、食前酒としての需要が増えていきます。1786年イタリアのカパルノ社が「スウィートヴェルモット」、1813年フランスのジョセフ・ノイリー氏がフレンチヴェルモットの元祖である「ドライヴェルモット」を生み出しました。余談ですが、その後、1800年以降にサングリアや個人会社オリジナルのフレーバードワイン(リレやデュボネなど)なども生まれたのです。

現在でも養命酒や滋養強壮の薬を飲む方はたくさんいらっしゃると思いますが、フレーバードワイン(特にヴェルモット)の出発点はそこにあり、時代と共に美味しさを求めて生まれたものです。

~ヴェルモットの購入ポイント~
食前であれば、良く冷えたドライヴェルモット。寒い冬はホットワインに混ぜても美味しいです。爽やかなスパイスやハーブの香りは、食欲のスイッチを入れてくれます。

食中でしたら、ソーダ割りや簡単なカクテルの材料にもなりますし、食後にはデザート代わりや養命酒がわり。記念日ディナーの締めくくりは、熟成ヴェルモットの出番です。

家でバーのようなカクテルを作ろうという方は少ないかもしれませんが、カクテルにもひとつひとつ作者の意図と歴史があり、ヴェルモットを使ったカクテルで検索するとたくさん出てくるので面白いかもしれません。

そしてもうひとつは、アルコールが高く、甘味があるものが多いため長期熟成に向くので、記念年やお子様の誕生祝いのプレゼントにも使えるというポイントがあります。高級なバーなどに行くと時々40年物、60年物のヴェルモットなどが置かれています。それは魅惑的な味わいで、ものすごいお酒に変身しています。

数年後、数十年後に購入した時の思い出を語りながら飲むことができるのも、プレゼントヴェルモットの素晴らしさです。

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