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好きなものをたくさん描けば描くほどパワーになっていく──。大人気イラストレーター・LAMを大解剖!!【大阪個展開催記念インタビュー】

新年のおめでたいこの時期に、大阪で開かれる素晴らしいイベント……。
イラストレーター・LAMによる大型個展 [千客万雷] が、1月10日からギャラリー「Space Gratus」にて開催いたします!

昨年11月に行われた東京会場での個展は大盛況に終え、1ヶ月のインターバルを挟み大阪での巡回展が始まります。

そんなLAM個展 大阪会場での開催を記念し、イラストレーター・LAM初の商業画集『LAM画集 いかづち』を通して、LAMさんを大解剖する特別インタビューを大公開!!

画集に込めた思いはもちろん、普段のお仕事からLAMさんの性癖(!?)まで、赤裸々に語っていただきました。

*LAM(らむ)
イラストレーター。クールでキャッチーな作風が人気を集め、キャラクターデザインやビジュアルワーク、書籍イラストなどを幅広く手がける。代表作に『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』キャラクターデザイン『初音ミク マジカルミライ 2023』メインビジュアルなど。『ZONe ENERGY』オフィシャルアンバサダー。
X : https://x.com/ramdayo1122
Instagram : instagram.com/ramdayo1122

──あらためて、画集の発売、そして個展の開催おめでとうございます!早速ですが、このタイミングで商業初画集の出版を決めた理由を教えてください。

個展をやるというタイミング、個展が盛り上がると良いなという中で、PIEさんという素晴らしい出版社さんから、「良ければうちでどうですか」と仰っていただけたので、これもご縁だなと思いました。せっかく個展をやるなら画集もそのタイミングでやれたら良いなと。
デビュー5年目の節目というのもあり、色々なことが重なって今回出版に踏み切りました。


──弊社(パイ インターナショナル 以下:PIE)での出版の決め手はあったのでしょうか?

もともとPIEさんの本は好きで読んでいたのですが、やはり一番は米山さんの『EYE YONEYAMA MAI 米山舞 作品集』。

(EYEの編集をされた)大場さんとお話をする機会があったときに、本を作るというのを「作品を作る」という捉え方をしてくださっていて。ただ絵を掲載した本を作るのではなくて、「これはどういうコンセプトの作品なのか」というところを、一緒に同じ目線で考えてくださるという安心感・信頼感を感じたので、ぜひ一緒に何かを作ってみたいと思いました。


──画集の表紙、個展のメインビジュアルにいるキャラクターについてお聞きします。名前は決まっていますか?

「いかづちちゃん」です。東京会場のトークショーの時に命名しました。


──いつ頃出来上がったキャラクターなのでしょうか?

個展のコンセプトを考えていく中で、キービジュアルをどうしようというところで最初に決まった子です。

個展は当初から遊園地、テーマパーク、お祭りみたいな空間にしたいと考えていました。そうなったときに、看板娘になる女の子、水先案内人みたいな子がいると良いんじゃないかと。
そこでキャラクターデザインに取り掛かり、不思議の国のアリスのチェシャ猫のような、怪しい空間に誘ってくれる変な存在みたいなヤツがいると良いなと思い、猫娘にしました。和風のチェシャ猫のような感じで、今回は招き猫の子を作りました。


──キャラクターデザインの細部でこだわった点はありますか?

僕自身が好きな要素を入れた点です。
僕、おかっぱやぱっつんが好きなんですよ。黒髪がすごい好きで、ぱっつんもすごい好きなので、黒髪ぱっつんの、僕が良いと思う子にしようと。
怪しげな、耽美な、怪しい空間に誘ってくれそうな存在というのをイメージして描きました。

LAM個展[千客万雷] メインビジュアル

──普段からキャラクターデザインでこだわられている部分はありますか?

色数や記号の数ですね。

魅力的なキャラクターはこの世にたくさんいると思うのですが、キャラクターを覚えてもらうのはすごく大変なこと、難しいことだと思っています。
例えばXで、「お、このキャラクターかわいい」と思うことってたくさんあると思います。ただ次の日その子の似顔絵を描けるかと言われたら、なかなか難しいじゃないですか。「えーどんなんだったかな、金髪のツインテールで、赤いリボン付けてて……」ぐらいしか覚えられないと思うのですが、逆にいうとそれぐらいは覚えているじゃないですか。
だから僕は、基本的に2,3個だけ覚えてもらえれば成立するキャラクターデザインというのをとても心がけています。

猫娘だったら、黒髪おかっぱの猫耳。強いていうなら、鈴がついていたかな、くらいでオッケー。色も、赤と黒、あと金くらいで成立する。
要は、パッと見たときに覚えてもらえる最小公約数という部分を意識してデザインしています。


──本づくりは絵を描くとはまた違ったクリエイティブな作業だったかと思います。本だからこそ込めたこだわりなどはございますか?

本だからこそ、というと書店に並ぶというのが大きかったですね。

本屋さんに自分の本が並んだときとか、いろいろな方に手に取ってもらって本棚に置かれることをすごい想像しました。そうなったときに存在感があったり、オーラがあったりパワーがあったりする表紙や本づくりをしたいというところがありました。

あとは、実際に手に取って読むものなので、紙質やサイズ感もプロダクトならではというか。僕自身同人誌を作るのがもともと好きで、同人誌の装丁や仕様を昔からこだわってきたので、画集を作るならそこにとことんこだわれるようにしたい、と思いました。

色校たち

──こだわりの画集の、特にここを見てほしい!という部分があれば教えてください。

表紙ですね!

イラストレーターになりたいと思ったことがある人は、きっと自分の画集の表紙を妄想したことがあるんじゃないかな。僕もいつか自分の画集が出たらどんな表紙だろうな、とずっと思っていました。ただ、いざ自分が表紙を描くとなったら難しいもので、なかなか思いつかない。

とても悩んだのですが、猫娘という僕が好きな要素で固めたキャラクターのファンアートを描くように描こう、と思いました。要は自分の分身みたいな子が一番魅力的に見えるように自分で妄想しながら描いた絵は、自分を表す良い絵になるのではと思い、描いた絵がこの表紙でした。

迫力の画集表紙(『LAM画集 いかづち』/PIE International)

──画集の表紙を妄想するというお話もありましたが、画集を出版するというのは、イラストレーターさんにとって、LAMさんにとってどのような意味を持つのでしょうか?

小さい頃から画集を読んで育ってきたので、自分の作品がアニメ化するとか、自分の画集が出るというのは、小さい頃からの夢ですよね。憧れというか。本当の意味での、小さい頃に思い描いたイラストレーターさん、漫画家さんとかの仲間入りをするような気分です。


──昔から読まれていたという画集の中で、マイベストな画集があれば教えてください。

めちゃくちゃ読んだ画集は、『アリス マッドネス リターンズ』というゲームの画集『アートオブ アリスマッドネス』(一迅社)で、穴が開くほど読みました。あれはすごいかぶれましたね。
あともう一個が、『ペルソナ4 公式設定画集』(KADOKAWA)ですね。表紙が、全員の横顔が一覧で並んでいる画集。

生まれて初めて買った画集は今でも覚えています。お正月に親戚一同の子供たちをおじいちゃんが本屋さんへ連れて行ってくれて、一人一冊まで何でも買ってあげると言われたんですよ。俺は、「何でも買ってくれるって言ったよな」と思い、画集コーナーに行って『テイルズオブシンフォニア』というゲームの設定資料集 『「テイルズオブシンフォニア イラスト集」 藤島康介のキャラクター仕事』(スタジオDNA)を持っていきました。普通の単行本とかと違って高いじゃないですか(笑) でも一冊って言ったよねおじいちゃん!と言って、それを買ってもらいました。
それが生まれて初めて読んだ本だし、今でも一番大事にしている本です。思い入れがあります。

あと、一番読んだ画集は『アート・オブ・スパイダーマン:スパイダーバース』(スペースシャワーネットワーク)。設定資料集というか、裏側を見られるのが好きですね。


──ちなみにPIEの画集ですと……

『EYE YONEYAMA MAI 米山舞 作品集』です。
あと『Gadgetry -ガジェットリー- 三輪士郎デザインアーカイブス』も凄く好きな本です。

『EYE YONEYAMA MAI 米山舞 作品集』
著:米山舞 / PIE International
『Gadgetry -ガジェットリー- 三輪士郎デザインアーカイブス』
著:三輪士郎 / PIE International

──イラストの制作についてお聞きします。いつごろから絵を描き始めたのでしょうか?

小学生の頃から、所謂絵を描くことが好きな男の子、という感じでした。絵が凄く上手い友人がいて、放課後や休日は一緒に絵を描いていましたね。ジャンプの作品とかを、原稿用紙を買ってきて模写したりとか。今はその子は漫画家に、僕はイラストレーターになりました。二人でいつも模写していたんですけど、友人ははめちゃくちゃ上手かったので僕はアシスタントみたいにずっとトーンを貼っていました(笑)

生まれて初めてペンタブレットを買いに行った日は今でも覚えています。高校生の頃、『FAVOコミックパック』という小さいペンタブレットを、すごく緊張しながら電気屋さんに買いに行きました。初めてちゃんとデジタルイラストを描いたのがその頃ですね。


──描いていて好きなパーツはありますか?

目はもちろんですが、描いていて特に好きなのは口ですね。口はもう、好きすぎる。隙あらば、男性女性問わず唇、リップとか、歯茎、口蓋とかを描くくらい好きですね。


──画集の1ページ目から舌を出している女の子がいますよね。

学生時代に描いた絵と全く同じ構図でびっくりしました。
昔から趣味が変わってないんだなと思いました(笑)


──そういうものを好きになったきっかけはあるんですか?

好きになったきっかけは、漫画作品の影響が強いかもしれません。『ショムニ』(安田弘之 / 講談社)の安田先生が描いていた『紺野さんと遊ぼう』(安田弘之 / 太田出版)というちょっとエッチでフェティッシュな漫画や、山本直樹さんの短編集とか。そういうのばっかり読んでたら……(笑)

つり目が好きなのも、吸血鬼が好きなのも、『魔法先生ネギま!』(赤松健 / 講談社)のエヴァンジェリンというキャラの影響です。人形が好きなのも、『からくりサーカス』(藤田 和日郎 / 小学館)と『ローゼンメイデン』(PEACH-PIT / 集英社)。和風なものが好きなのも、『BLEACH』(久保帯人 / 集英社)とか『地獄少女』(漫画版 永遠幸 / 講談社)とか。漫画やアニメの影響で今があります。


──ちなみに描く際に苦手だなと思うものはあるのでしょうか。またどのように克服されてきましたか?


描けるものの方が少なかったので、基本的に苦手なものしかなかったです。


会社員時代の恩師に、僕の描く筋肉質なキャラクターのデザイン画が全然良くないと言われまして。その時に「LAMちゃんは、女の子描くときは自分の好みとか性癖を入れるでしょ?けど、筋肉質なキャラを描いている時や老人を描いている時は、全然そういう性癖を感じない」と言われました。
その時に、フェチをどこに見出すか、込めることが重要か、ということに気付かされました。

そこからは、どんなものにもかっこいい瞬間があるなと気づいたんですよね。街に落ちているビニール袋とか、軍手だってかっこいい角度とかかっこいいシルエットがある。ということに気付けるようになってから、めっちゃ絵がうまくなったなと思います。

そういうことに気付きづらかったり、自分が苦手なものだったりするとまだまだ苦手意識があるんでしょうけど、だいぶ色々なものが好きなので今はそんなに苦手意識があるものはないです。


──LAMさんの作品はかなり目を引くタイプの絵だと感じますが、視線誘導や、見た人がこう感じると良いなというところまで計算されているのでしょうか?

そうですね。

絵としてのインパクトがあるか、魅力があるかというところをすごく重要視しています。まずどこを見て欲しいか、Xやネットでパッとスクロールしたときに、目に留まるか。違和感を感じてもらえるか、というところは、オートで考えているところかなと思います。


──そうした能力、視線誘導などの技術はどういったところで勉強されていますか?


アトラス※のUI
です!

ペルソナチームの大先輩が本当に天才的で、とてもかっこいいデザインを作られるんですが、それと同時に使いづらいものが大嫌いな方でした。「これ、かっこいいけど使いづらいからナシ!」と、平気でかっこいいデザインを捨てる方で、僕はそれが結構衝撃でした。

カッコよさと見やすさと使いやすさを両立させるために視線誘導がとても重要で、人間の目は動いているものに行くんだなとか、ネガ反転のものに目が行くんだなとか、画面の端っこにあるものには最初は目がいかないんだな、という優先順位のノウハウは、そこで吸収できました。それがイラストに生きている感じです。

僕自身、画力が達者で成り上がってきた作家だとは決して思っていません。どちらかというと目を引くことだったり、違和感だったり、グッとくる、オッとなる、そういうフックになるような絵作りをできてきたのは、UIデザインの時や、グラフィックデザインという文脈があったからだと思います。


※株式会社アトラス。真・女神転生やペルソナシリーズなどを手掛けるゲーム会社。LAMさんもUIデザイナーとして在籍していた。


──LAMさんにとってルーツとなるような、憧れ・尊敬されている方はいらっしゃいますか?

たくさんいます!

ルーツになったのは、藤田和日郎先生、久保帯人先生、ヤスダスズヒト先生、竹先生、アトラスの副島成記さん……。
漫画の模写をずっとやっていたので、漫画家さんに影響を受けることが多かったです。
何で漫画描いてないんでしょうね(笑)


──ちなみに一番好きな漫画は……

らんま1/2(高橋留美子 / 小学館)です!
高橋留美子先生が好きで、だからペンネーム『LAM』なんですよ。

僕は北九州出身で、上京したての大学時代に「~っちゃ」という方言で話していたんです。厳密にはラムちゃんは北九州弁ではないのですが、ラムちゃんみたいだねと言われて、あだ名が「ラム」になったんですよ。それがそのままペンネームに。もともと「うる星やつら」のラムちゃんが大好きだったので、自分のあだ名になったときは複雑でしたね(笑)


──目元にお化粧のレイヤーを入れられているのも高橋留美子先生の影響だとか。

あれは女らんまの影響ですね。
男から女に変身するとアイラインが急に入るじゃないですか。あれが僕にとってfemaleの象徴というか、体型の変化以上に目元のお化粧にドキッとしたんです。シャンプーとかラムちゃんの目元からも凄く影響を受けてます。

目元にマークや文字のようなお化粧を入れるきっかけになったのは学生時代に出会ったMITSUME(@3ryrs_takahashi)さんの作品の影響も大きいです。


──最後に、イラストレーターを目指す方へ一言お願いいたします。

今はイラストレーターになるためのノウハウやハウツーがネット上に色々あるし、タダで発表する場もたくさんあるじゃないですか。Xやブログ、YouTubeなどいろいろなところで自分の作品を発表できて、気軽に発信できる方が増えた分、母数もとても増えて競争率も高まっていると思います。

でもやはり自分の好きなものをたくさん描けば描くほどパワーになっていくし、楽しいと思うので、ぜひ自分の好きを見つけて、とことん好きなものを好きなように描いていくことが、結果的に自分の個性に繋がるのではないかと思います。

僕自身お仕事をしていて大変な瞬間も多いですが、やはり好きなものを描いているからこそ楽しくて元気になれるので、「絵を描くのって面白い!」という気持ちを大事にしながら活動しています。

どうやってその個性を獲得しましたか、とよく聞かれるのですが、自分の好き、つまり僕はとにかく釣り目が好きで、アイラインが好きで、細身の女の子が好きで、ドールが好きで、ネイルが好きで……というのを入れまくっていたらこうなっていたので、やはり好きなものをたくさん描くのに尽きると思いますね。

自分の好きなものをたくさん描いてみてください!


個展や画集をさらに味わえる、貴重なお話をありがとうございました!
インタビューを通して、”好き”を貫くことがどれだけ大事なのかが身に沁みました……。ファンの方はもちろん、クリエイターを目指す方も大変興味深い内容だったかと思います。

大阪個展ではLAMさんの絵のこだわりを間近で見るチャンス!画集は個展ではもちろん、全国書店、ネット書店で購入できます◎

▼こだわりが詰まった初画集『LAM画集 いかづち』

▼個展情報
LAM個展「千客万雷」
特設サイト:https://lam-ex.com/
公式X:https://x.com/LAM_2024EX

【大阪個展】
■会場:Space Gratus
〒556-0005 大阪府大阪市浪速区日本橋4-15-17 アニメイト大阪日本橋別館3F
URL:https://www.animate.co.jp/shop/space-gratus/
■会期:2025年1月10日(金)〜2月3日(月)
営業時間:月~金11:00~20:00 土・日・祝10:00~20:00
 ※詳細については特設サイトをご覧ください。


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