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連珠命名120周年記念大会

私は育児日記を書かなかった。余裕が無かったのが理由の一つ、もう一つに「本当に思っていること」を記すのが苦手だった。文章を書く行為は俯瞰の自分によるもので、どこかカッコつけている。育児は俯瞰できなかった。あまりにもリアルな、自分の中の「本当のこと」だった。息子と、自分のことはカッコつけたくなかった。

なので毎日寝てくれ寝てくれとしか思ってなかったこととか、一日中乳をあげていたのでほぼ半裸で宅配便をうっかり受け取ったこととか、対局したら乳が岩のように硬くなって歩くのも苦労したこととか、困ったことは覚えているけど、息子がその時々でどんな風に可愛かったのか、可愛さが常に更新されていくせいで漠然としか覚えていない。

私は連珠を始めて2年ちょっとである。まだ乳幼児の可愛さと不安定さ真っ盛りな時期だ。でも既にして、新生児の頃に何を思っていたかを忘れつつある。

後から見たら取るに足らない悩み、あるいは些細な喜びかもしれない。でも今感じることは将来味わえないかもしれない。なので大した内容ではなくてもなるべく対局の振り返りを残しておこうと思う。

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今年は連珠命名120年ということで、中村茂永世名人就位式の行われる日に記念大会が開催された。ルールは級位者大会と同じ、珠型交替自由打ち。連珠では三手目まで26通りの珠型があり、片方がそのどれかを選んで打った後、もう片方が黒を取るか白を取るか選ぶ方式だ。つまり黒白どちらかに形勢が偏っているとその色を取られてしまうので、互角珠型が提示されやすくなる。

ルールは級位者も入りやすい大会にも関わらず、参加は高段者が多かった。1局目は石谷九段。待ち時間は12分切れ負けで、採譜義務なし。中村名人が何故か厚意で記録係をしてくださった。

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24と攻勢を見せた手に対し、感覚で25が浮かんだ。

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この手は四の連続で詰ませられる「フクミ手」になっていて、白から19の下にトビ四などで攻められた時に逆先を取ることができる、一種の牽制ぽい手。

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以下先手を取り返して追い詰め模様となった。本局は着地を失敗したのだが、以前は24のような手に対し受けることしか考えなかったのが、先手を取る候補手が浮かんだのは変化を感じた。

これは日頃練習してくれている牧野五段(将棋の)お陰で、牧野さんは緩い手をするとすかさず先手を取って咎めてくる。私はかなり牧野さんから速度感覚を教わっていて、手番に敏感になった。世界選手権が終わって少し気の抜けた日々を送っているが、牧野さんのお陰で少しは成長できているようだ。

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これは宮本五段戦。14と白が二つ連を作ってきたところで、ここも以前の私なら(大変!受けなくちゃ)と考えていたと思う。

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ここから17,19とフクミ手があるのを発見して受け無しに追い込めた。四の方が三より早いから、フクミ手の連続で迫れば攻め合い勝ちできる。

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岡部九段とも当たった。図の流星は黒で構想を描くのがとても難しい珠型だ。11とされて、なるほど、自分には浮かばなかったなと思った。経験は無かったけど、12が一番その後の発展を防げそうで、打ちたくて打った。後から中山八段に聞いたらこの手はおかしくないということだった。初見で考えた手が方向違いでは無かったのは嬉しかった。

この日はコンディションが悪く、座っていても貧血気味で目眩がしてなかなか集中できなく、リアルの対局で初めて四を見逃して五連を作られたりもした。岡部戦はそんな中でもよく集中できて、残り13秒と9秒になったところで満局となった。とても嬉しかった。

この大会に向けては珠型を流星と疎星に絞って五目クエストで早打ちの練習をしてきた。充分とは言えないけど、盤を前にした時に落ち着いて臨むことが出来たし、勉強の成果は一応は出たと思う。

珠型交替打ちは新鮮で楽しく、普段いかにソーソロフ8のプレッシャーに悩まされているかを思い知った。26珠型に対して白4と黒5(最大8通り)を準備していくのはかなり大変だ。何が大変って、練習場所がないのである。私は五目クエストで黒番の時は、ソーソロフ8の練習のために最も互角に近い弱い黒5をわざと打って均衡を取っている。しかし殆どの人は黒を持つと最も強い5を打ってくる。白番で互角形の練習ができなく、どうしても練習が偏ってしまう。

互角珠型なら、練習段階でもおおよそ対策したい珠型が絞られているのもいい。高段者との対局は自由打ちでも大局観が勉強になり、たまにはこういうのもいいなと思った。例えば新春大会(三上杯)など、いっそクラスの区分つけずにオール珠型交替打ちでやったらどうか。こう思うのも、総人口の少ない連珠ではどうしても同じカードになりがちで、もっと色んな組み合わせで刺激があった方がいいと思うからだ。岡部さんとまたやりたいし笑。


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中村永世名人や河村元名人が棋譜を取ってくれる神大会、楽しかった。

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