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引退して10年

ねこまどが会社設立10周年を迎えたそうです。

ということは私もフリーになって10周年ということです。ちょうどねこまどが出来るちょっと前に引退を決めた気がします。いつ発表したのか調べてみたら2月のFCイベントのようですね。現役時代は散々な成績でしたが、引退を決めた途端、2月のペア将棋選手権で初めての優勝、3月の現役最後となった1dayトーナメントで準優勝したのでした。プレッシャーから解放されたからでしょうか。残り少なくなってから、対局が「怖いもの」から「貴重な大切なもの」に変化して、澄んだ心で臨めたのだと思います。つくづくプロには向いてませんでした笑。

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(2010年4月引退後初のイベント、どうぶつしょうぎcafeにて。2人とも細い!)

改めて調べたらやっと思い出したぐらいで、自分が女流棋士であったことはもう誰も思い出せないくらい薄い記憶になっています。引退後はiPhoneアプリを作りたい!とか言ってましたが思ってたほどクリエイティブなことに挑戦できませんでした。その代わりに商業作品には恵まれて、仕事としてデザイン作業に追われる日々でした。沢山の書籍や商品に参加させてもらえました。本当にありがたいことです。

想像してなかったのは教える活動が増えたことでした。自分には人と対面することは向いてないと思ってたのですが、どうぶつしょうぎを通して多くの活動をさせてもらえました。将棋を教えることも地元を中心に始めました。収入的には普及の仕事は持ち出し、またはトントンがやっとです。それでも時間的にかなり割いてたのは使命感と、やはり人と関わることが魅力的だったからでしょう。

教える仕事、デザイン、文筆の三本が柱となり、現役時代より収入は増しました。どうぶつしょうぎの印税を含まなくても、です。引退してからの裏テーマに、女流棋士としてセカンドキャリアを充実させるというのがありました。女流棋士が女性が憧れる魅力的な職業になって欲しかったのです。自分は棋力で憧れさせることは出来ませんでしたが、幸福になること、将棋に関わる仕事で自立することでそのお手伝いをしたかった。特に若くて美しい女流棋士は仕事に恵まれることが多く、では年老いてからはどうなるのか?というのは長年気になることでした。年老いたりあるいは私のような美しくない者でも仕事を充実させることができるというのは後進にとって大事なことだと思いました。なので常に一つの指標として収入は意識していて、この10年一定の成果は挙げられたと思います。

10年前と比べて将棋界の状況は変わりました。女流棋士も様々な活動に恵まれ、私が将棋に関して果たせる役割は終わりました。後輩たちがいれば大丈夫だと思います。私も裏テーマから自分を解放して、1人の人間として次のステップにいきたいと思います。

当初掲げていた夢に、囲碁将棋オセロなどのボードゲーム合同イベントをやり、横の繋がりを持つ、というものがありました。それも力不足でかなってませんが、代わりにボードゲームカフェを開くことができました。店では将棋よりも別の活動が増えているほどです。

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(2010年2月カンヌゲーム祭にて。この時の幸福な記憶が沢山の仕事に影響しています)

引退後は疎遠になってしまった方もいましたが、代わりに多くの人との出会いがありました。いっぷくも、殆どの常連さんが開店後に知り合った方々です。常に新しい出会いに恵まれたことは一番の幸せなことでした。

10年後に再び盤の前に座ってると知ったら、当時の私は驚くでしょう。連珠のことは名前すら知りませんでした。自分は勝負に向いてないと、ダメな子だと心底思っていました。

連珠を真剣に出来る環境は私に多くのことを与えてくれました。趣味で将棋に関わる人達はこんなにも幸せだったのかと、初めてわかりました。将棋界独特の考え方に影響を受けてた私が、別の視点で物事を見ることができるようになりました。何より昔は一生懸命、真正面から向き合えなかった盤に、恥ずかしがらずに向き合えていることが今幸福です。

連珠は収入にならないのにエネルギーをかなり注いでいて将来の不安はやまないのですが、この出会いの幸福をもう少し追求したく、暫くは突き動かされている感情を信じて没頭しようと思います。次の10年後はどうなってるでしょう。やはり全く違う毎日を送っているかもしれません。変わることをを恐れず、いつも何にも捉われずに心の赴くまま生きていきたいと思います。

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(2010年春、飯島邸での息子。この頃から百折不撓の掛け軸はありました。10年後にタイトルを取ってると予想できますか?未来のことは、誰にもわからないのです)

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(引退してすぐに深川いっぷくに出会い、どうぶつしょうぎのイベントをした5月。オーナーになるなんて夢にも思ってませんでした)



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