唯の"観るギャ"だったのに…〜3年ぶりのバックギャモンフェスティバル参戦記〜
大崎の会場に着いた時懐かしさで泣きそうになった。そしてギャモフェスが実に3年ぶりだとその後で知った。信じられない長さである。中学高校丸々の期間、あの楽しいフェスが無かったなんて、なんということだろう。
渋谷シダックス時代に子どもとルールを教わりにふらっと行った時からギャモフェスは大好きだった。まず無料でふらっと立ち寄れるのがいい。物販、体験コーナー、対局者を眺めてるだけでも楽しめる。敷居の低さと、世界トップレベルの対局が同時に行われていてホンモノにも触れることができる。両面が共存してるのが私にとって神ポイントだった。
初級戦で気楽に楽しんでた私に転機が訪れたのが2017年秋の王位戦(フェスみたいなもの)。この時に中級戦で棋譜用にカメラで撮影しながら戦う人たちを見てすごくカッコよくて、憧れた。別世界の人たち、だと思った。いつかここを目指そうと思った。そして決勝の大盤解説が劇的で楽しすぎて、ギャモン観戦をするようになった。
2020年からのコロナ禍では益々配信中継が盛んになり、生ギャモンができない間のモチベーション維持としても助けられた。わたしたちのような初級者にとって、フェスが無くなると楽しめる場がぐっと減ってしまうのだ。その代わりの役割を観戦で補っていた。
中級戦を目指すようになったのはギャモンの師匠であるTさんが獲ったことが大きい。Tさんはダブリングキューブ嫌いだった私にポイントマッチ面白いですよ、と楽しさを教えてくれた。いっぷくで講座もしてくれたし、前述の王位戦や代官山例会でポーカーフェイスで淡々とプレイする姿がカッコよく、これは単なる運ゲーではなく、深みのある競技だなと開眼させてくれた恩人なのだ。
いつしかポイントマッチの楽しさにハマった私は結局のところいっぷくで一番多く遊んだゲームがバックギャモンとなった。ただ競技としての興味というよりは、一緒に遊ぶ人に恵まれた、という側面が大きい。ギャモン仲間はみんな楽しい人たちばかりだった。軽口をいいながらプレイする時間が好きだった。
家ではbackgammon galaxyでひたすら5ポイントマッチをやっていた。どんなゲームも必ず最後は5ポイントに収束するから基本なのかなと思って勉強していた。ただ、そんなに真面目にはやってない。むしろ、連珠の勉強ができないくらい疲れている時、鬱で体力低下してた時、鬱の発作でじっとしてるのが苦しくて何か動いて気を紛らわせたい時などにプレイボタンを押していた。私にとっては、脳死で暇な時間にやる落ちゲーみたいな感覚で取り組むのがギャモンだった。
ただただ好きだから、身体が欲しているから、まるで毎日飲むコーヒーのように、嗜好品のように側にいたのがバックギャモン。勉強したりはめんどくさい!けど私なりに好き。そんな不真面目な唯の観るギャだった私が、あれよあれよという間に勝ち進んで決勝まで来てしまった。1ゲームでも長くプレイするにはどうしたらいいか必死で考えてたら寿命が伸びた、そんな感じだった。
決勝も1-6から2-8まで追い込まれて、寿命をどうしたら延ばせるか、判断を迫られ続きだった。ここまで来られただけでも実力以上の奇跡なので、負けたらどうしよう、という恐怖や、勝ちたいと思う心に左右されることはなかったのは良かった。私は精神的に弱く、ギャモンをやる一番の理由は揺れ動く局面に動揺しないで淡々とプレイできるようになるため、つまり連珠のために精神力を鍛える為にやっている。"勝ちたいという欲を感じずに、勝つ為の最善を探す"、という行為はプレイしてて(なんて楽なんだ)と正直思った。思えば、連珠ではA級棋士なのだから簡単に負けちゃいけない、など余計なプレッシャーを抱えてて、それが悪影響してることが多々ある。また将棋をやっていた頃は何が一番の障壁だったかといえばプロであったことだ。負けたら恥ずかしい、という心から脱せられずそのまま沈んでた。
だからこんなにのびのびとプレイできるのは本当に幸せだった。そしてキューブを打って勝負どころに賭けるとき、勝敗が揺れ動く瞬間に身を置くとき、痺れるくらい楽しいなぁと感じていた。これは業のようなものだと思った。辛いこともあるけれど、この瞬間が好きでやってるんだろうなぁと。
無我夢中でやってたら何故か優勝してしまった。あんなに勝ちたい連珠ではなかなか勝てないのに、全く無欲で臨んだ試合で勝てるとは、不思議な感覚だった。こんなこともあるんだなぁ。間違いなくこれまでで最弱の中級覇者だと思う。私の次の課題は、このタイトルに潰されないこと。私は連珠のA級や、将棋のプロなど、実力以上の世界にたまに潜り込んでしまう傾向がある。中級獲ったのにこのプレイでは恥ずかしい、勝たないと、なとどと思ってギャモンを楽しめなくなったら本末転倒だ。本職は観るギャだ、文句あるか、ぐらいの勢いでギャモンを楽しみ続けたい。そしてあのヒリヒリした勝負をもう一度味わうために、連珠のためにもいい勝負術を持ち帰るために、自分なりに向き合い続けること。それを課したい。
会場でさまざまなギャモン仲間に会えたり、観戦してもらえたのが本当に嬉しく(なにより、あの師匠のTさんが自ら棋譜入力しに駆けつけてくれた幸せ!)、そのような仲間を増やし続けることも課していきたい。これまで教えてくれた皆さん、ありがとうございました。これからもよろしくです!
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